2012年6月22日金曜日

【リオ+20】 REcognize, REaffirm, REcall → REsolve


Yasu@Rio+20です。さて、Rio+20の成果文書として合意された"The Future We Want"ですが、こちらリオ+20会場のリオセントロでも様々な反響を巻き起こしています。「世界のリーダーによる巨大な失敗 (WWF)」、「壮大な失敗 (Greenpeace)」など、我らの同業者たちは、かなり厳しい評価ですし、UNEP(国連環境計画UNFCCC(気候変動枠組条約事務局のトップも厳しい言葉を並べています。日本のメディアによる「グリーン経済提唱も具体策なし」という評価も的外れでなく、CIとしても、もっと踏み込んだ具体策が盛り込まれてしかるべきだったというのが、第一印象です。

しかし、政府代表団に入っているスタッフを含めたCIのポリシーチームでの文書の読み込みと分析を進めるうちに、また違った視野が広がってきたのも事実です。全49ページ、283パラグラフからなり、"UNese(「国連語」)"で書かれているので、意味を読み取るのは一苦労ですが。 :-)
 
以下が、文書発表1日経った時点での私の個人的な評価です・・・

まず、目に付くのは、この記事のタイトルにしたとおり、recognize(認識する), reaffirm(再び強調する)、recall(想い起す、想い返すという単語から始まるパラグラフの多いこと多いこと!これは、国連文書の様式であって、過去の経緯特に正式な国際合意をしっかり「認識」した上で、次のステップへ進みますという国連外交用語で、それ自体は驚かないのですが、今回の成果文書では、ほとんどのパラグラフがこれらの単語で始まるような印象さえあります。英語学的にいえば多分reから始まるこれらの単語は、正に過去の事象を参照する言葉であって、何か新しいことを言うものではありません。多くのNGOやメディアが、「新しい内容が無い!」と憤っているのも納得です。

ただ、文書全体をながめ、その歴史的な経緯や世界の大きな流れ(MDGs目標まであと3年、新興経済国の台頭と先進国の相対的な国際政治力の低下、人口増加などの中のコンテキスト文脈と訳されることが多いけど、大きな枠組みとでもいうのがニュアンスとしては近いでしょうかの中で考えると、ひょっとしたら後世から見た際に「あれが人類史の転換点になった」といわれるかもしれないポテンシャルをみてとることもできます。

なぜか。
まず、recognize, recallなどの単語で参照している内容は、それこそ国連憲章や国連人権宣言、民主主義の原則などから、自由貿易の原則、女性や若者の参加、雇用・失業問題、水やエネルギー、衛生・健康、人口問題まで、多岐に渡っています。それこそ、人間開発、社会開発、そして経済開発のすべての分野を含んでいます。ここで、注目したいのは、それらが開発の視点から書かれていることです。

20
年前の地球サミットでは、気候変動、生物多様性、砂漠化防止の3つの「地球環境問題」に対処する条約が合意されました。また、リオ宣言やアジェンダ21などは、環境の視点から書かれた文章でした。元祖リオ会議は、それこそ環境の会議だったのです。

今回の文書のように、ここまで「開発」の視点から環境が書かれた国連文書、少なくともこれだけ広範囲な分野をカバーしつつというのは、初めてかそれに近いのではないかと思います。書かれていることの多くが、既に気候変動枠組条約や生物多様性条約、あるいは過去の国連総会などで議論されているのは事実なのですが、この文書の本当の意義は、それらが一つの文書の下、開発の視点から、ひとつの文書に統合されて書かれていることにあるのではないかと思い始めています。
つまり20年前は、環境はコンセプトとしてまだ開発の外にあったのが、20年かかって開発に「完全に内部化」されたのだと理解しています。20年はかかり過ぎ特に地球環境の状況を考えればなのは間違いないですが、環境がコンセプトとして開発に主流化されたのだと見方ができるのではないかと思います。
焦点がなく、新味もなく、具体性もないことは、まさに「コンセプト」の主流下の作業が完了したことを示しており、その意味で画期的な文書といっても過言ではないと思い始めています。その証拠に、昨日から始まったハイレベル会合でも各国代表はみなこの文書を評価しているようですもちろん、議長国ブラジルが、対立点をことごとく削除したので、そこに書かれた内容について反対するのは、論理的に難しいという側面があるのも事実ですが。

CI
が強力にプッシュしてきたグリーン経済については、Green Economy in the Context of Sustainable Development and Poverty Reduction (持続可能な開発と貧困削減の文脈からのグリーンエコノミーという章の下、19パラグラフに渡って書かれているものの、多くの内容が、各国の事情に合わせるべき、自由貿易の原則に則るべき、ODAの条件としないなど、グリーン経済が何であって、どうあるべきか、とよりも、様々な条件をはめているように読めます。

じゃあ、各国はグリーン経済に反対かといえば、やはり各国代表のスピーチ、あるいは何千と開催されているサイドイベントなどでは、特に途上国を中心に、自然資源の持続的な管理グリーン会計自発的なCO2の排出削減など、実に多くのグリーン経済への先進的取り組みが紹介されるか、決意が語られています。CIがボツワナ政府と協力して先月開催したアフリカサステナビリティ会議から出された「ハボロネ宣言」は、ボツワナのほか、ガボン、リベリア、ルワンダなど、サハラ以南の国々10ヶ国が率先してグリーン経済を推進することを宣言した画期的な宣言ですが、そこから派生した、グリーン会計の重要性を認識し、制度、手法の早期確立とパイロットの推進するという「自然資本会計声明 (Communique on Natural Capital Accounting)」を核とした世界銀行のグリーン会計に関する50/50キャンペーンは、50以上の国々、80以上の企業が賛同するに至っています(日本企業は賛同してるのかな?)

そして、グリーン会計については、成果文書の中でも、「GDPを補完する、政策決定のためのより幅広い[経済開発の]進捗度の[評価]指標の必要性」として明記されているほか、グリーン会計声明のテキストや考え方の多くが、盛り込まれました。

また、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約COP10で合意された戦略計画である「愛知ターゲット」が、しっかり位置付けられたのも、ある意味画期的です。なぜなら、愛知ターゲットは、いわばグリーン経済の処方箋だからです。なので、ある意味、新たに具体策はいらなかったともいえるわけです(ちょっと言い過ぎかな)
地球の将来は私たちの手の中に!?
会場に登場した地球形の
巨大ビーチボールを掲げる参加者たち

最後に米国やベネズエラが強硬に反対したといわれた海洋に関しても、「各国の主権の外の海洋[つまり公海]の生物多様性について、第69次国連総会[2年後]において、その保全と持続的な利用についての決議を得る」など、具体的かつ画期的な内容となっています。

確かに、多くのNGOがこき下ろしたように、具体的な目標や施策が著しく欠けるのは事実なのですが、僕個人としては、今後の経済のあり方についての広範な内容をまとめている以上、曖昧で、確固たるものとなっていなくて、むしろ当然なのではないかと思えているところです。

むしろ、具体的な取り組みは、各国政府、民間企業、NGO、市民それぞれに委ねられたということかと思います。これが、いいか悪いかは別にして、明日から国際社会が、政府が、企業が、市民社会がやらなければいけないことは、何も変わらないと思います。

ちなみに、もうひとつreから始まる単語で時々登場するのがResolveです。これは決心するというような意味になるかと思いますが、成果文書の前文の中では以下のように書かれています:

「私たちは、持続可能な開発を達成するために、危急に行動することを決心します」と。