2013年1月25日金曜日

【CIインターンレポート】生物多様性オフセットとは?シンポジウムに参加して。その1

インターンの藤田です。



先日参加させていただいた「東北大学COE環境機関コンソーシアム 生物多様性オフセット国際シンポジウム 開発と生物多様性保全の在り方を考える~生物多様性オフセット導入の改題~」をレポートしたいと思います。

*書いてみたらきっとうんざりするぐらい字だらけになってしまいましたが、よろしければお付き合いください!


★生物多様性オフセットとは何か

まず、その1ではシンポジウムのレポートに入る前に「生物多様性オフセット」とは何か、シンポジウムの内容を踏まえてレポートしたいと思います。
その2ではシンポジウムをレポートしたいと思います。

生物多様性オフセットはまだ日本では馴染みのない言葉かと思いますが(私もCIでインターンをさせていただいてはじめて知りました)、内容はまったく似ていませんが、似たような考え方に「カーボン・オフセット」というものがあります。
こちらの言葉のほうが馴染み深いのではないでしょうか?
カーボン・オフセットでは、「日常の排出削減努力をしても、でてしまうGHG(greenhouse gas)排出を他のところでその排出に当てはまる分の活動をして補おう」というものです。大変わかり易い仕組みです。

一方で、生物多様性オフセットとは何でしょうか?

カーボン・オフセットを紹介しておきながら申し訳ありませんが、これと混同しやすいので注意が必要です。

生物多様性オフセットとは、ある事業の開始において、どれだけ回避しても尚も残る生物多様性(つまり動植物の生息地、種の構成、構造、機能などです)への影響、またその地域における人間活動への影響を他の場所で補うことによってオフセットし、ノーネットロスの状態にし、出来ればネットゲイン(純利益)を得ようとするものです。

基本的にはオフセット(代償)するというところはまったく同じなのですが、カーボン・オフセットと違って、生物多様性というのはすべてが単一のものではありません。これをオフセットしなければならないのです。つまり、生物多様性とは画一的なものではなく二酸化炭素のようにミティゲーション(代償)できるものではありません。

文面で説明すると大変ややこしくなってしまいましたので、絵を使ってお届けしたいと思います。


まず、生物多様性オフセットの仕組みとして、ある開発予定地で、環境アセスメント(開発を開始する前に、その開発によって環境にどのような影響を与え、評価を行う)を行なっても、回避しきれない、もしくは環境アセスメントでは問題にならなくても、漏れとして存在する負の影響を指標化し、生物多様性オフセットとして代償(ミティゲーション)実施します。


諸条件をクリアし、オフセットすることで生まれたネットゲイン(開発予定地での負の影響とオフセット地でのプラスの影響を併せてプラスにした分)をミティゲーションバンキングなどを通して債権にする(=お金にする)ことができます。

すごく簡単にはこのような仕組みのことを生物多様性オフセットとなりますが、生態系マネージャーN氏によると以下のような3つの問題が挙げられるそうです。


その1:ベースラインをどのように定めるか。


REDD+の考え方ととても似ていますが(ほぼ同じ?)、まず測定の基準を作らねばなりません。

 つまり、右図のように開発予定地Aにおいてもオフセット地Aにおいても開発したときに何も保全活動をしない場合どのように変化していくのかといった基準値です。
開発予定地では開発開始後一気にその生物多様性の価値がさがります。

 一方でオフセット地の基準を算出した結果、例えばその場所が劣化や減少しつつある土地であった場合、保全をすることでその土地の質を保ちます。すると、ベースライン、つまり何も保全しなかった場合よりプラスの価値がでていることがわかります。 このプラスの価値、つまりオフセット地で得た保全による利益と、開発開始後に一気に下がった開発予定地のマイナス分を足した時にプラスで利益(純利益があること)、これがネットゲインです。

つまり、生物多様性の指標化がまず大前提なのです。

ですが、このベースラインを定めるときに生物多様性というとても複雑なものを一体どのようにして指標化するのか。そしてそもそも生物多様性というそれぞれの地に特徴付けられているものを指標化し、それを比べるというのはナンセンスではないのか。
指標化の技術的な方法論の他にもこのような根本的なところでも議論はあるようでうす。


その2 ミティゲーションバンキングの制度について。

ミティゲーションバンキングとは上記のような図で表されるバンクのことです。
上記で既に書いた通り、また、左図を参照していただいた通りのバンキングのことです。
私は個人的にはこの制度、とても面白くて良い感じの制度ではないかと思いますが、N氏によれば一つ問題点があるそうです。
それは、そもそも開発が起こらないととバンクが大きくならない。そして活発になればなるほど開発が・・・ということです。
しかし、こういったバンキングの制度がないほうが問題であるとも言えます。なぜなら、だれも生物多様性オフセットを行うインセンティブは愚か、財源がないからです。後に記載しますが、生物多様性オフセットが行われるためにはその業界内のすべての企業がこういった制度に乗り出す必要があるとN氏は語ります。

ついでなので、もう一つのバンキング制度をご紹介します。



コンサベーション・バンキングです。
コンサベーションバンキングの仕組みは、まず、希少生物等の生息地の保全など、最初に保全活動を行います。これが認定された後、債権(クレジット)が発行されます。

このクレジットを用いて開発を行うといった、ミティゲーションバンキングとは逆の道筋をたどります。これがコンサベーション・バンキングです。

その名の通り「保全」バンキングなわけです。

いよいよ確信に迫ってきましたが、N氏が繰り返し強調されていたポイントがあります。

それは…

その3 生物多様性オフセットは開発のための免罪符ではない!

 生物多様性オフセットをすれば開発してもよい。つまり開発のための生物多様性オフセットであると、そういうものではないということです。
そもそも生物多様性オフセットを行おうが行なわまいが、開発をすることができるのです。開発主体は、環境影響評価も、行った後合法的に開発しているわけですから、別段法的にはなんの問題もないのです。(違法業者を除く)

では、開発によってその土地の多様性が失われたままでよいのかという問題があります。
そのための生物多様性オフセットなのです。

さらにWCC(IUCN世界自然保全総会)に参加されていたN氏曰く、生物多様性オフセットに熱心であり、会社の戦略にもこれを含んでいる鉱山開発会社であるRio Tinto社は「業界全体が取り組むことによってリスクではなくなる。一社だけが取り組んでいるのであればそれによってリスクであるが」ということだそうです。
リーケージ等を考える上でもやはり鉱山開発業界だけではなく多様な業界で生物多様性の保全にとりくむ必要があるということです。


生物多様性オフセットのルールの紹介等はつぎのその2で書きたいと思います。
その1は概要ですのでご留意ください。

ありがとうございました。


その1おわり。