投稿

スポーツと気候変動

イメージ
  By 小宮 陽菜(CIジャパンインターン) 先日、世界各国の科学者でつくる国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」は、気候変動に関する報告書を8年ぶりに公表し、気候変動が人間に起因すると断言する内容が発表されました。 日本でも各地で続く猛暑や、急な豪雨など、異常気象ともいうべき天候が増えていることを感じている方は多いのではないでしょうか。 スポーツも気候変動とは無縁ではありません。当然のことながら、屋外競技において選手や会場のコンディションは天候や気温に大きく左右されるからです。 気候と切っても切れない関係のスポーツ。今回は、そんなとスポーツと気候変動の関係性と、スポーツ界の気候変動への取り組みについてまとめました。 【スポーツと 気候変動 の関係性】 気候変動により、将来気温上昇とともに、猛暑日(最高気温が35℃以上の日)の日数が増加するとされています。 国土交通白書2020 によると、2076年~2095年の猛暑日は、20世紀末と比べて沖縄・奄美で54日増加するなど、猛暑日や真夏日(最高気温が30℃以上の日)、熱帯夜(ここでは最低気温が25℃以上の日を便宜的に熱帯夜と定義している)の年間日数は、全国的に増加すると予測されています。 当然、暑さは選手のパフォーマンスに大きく影響します。 先日閉幕した東京2020オリンピックでは、 暑さへの懸念の声が多く上がったため、時間変更を余儀なくされる競技が相次ぎました 。また、 男子マラソンでは東京から札幌に開催地が変更されたにもかかわらず、30人が棄権をする という事態に陥りました。今後も夏の暑さはひどくなるとされており、 日本経済新聞の分析 によると、2050年に世界の大都市の6割超で屋外競技の熱中症リスクが高まることから、夏季五輪の開催が困難になるという結果を示しています。 夏の競技のみならず、ウィンタースポーツも多大な影響を受けています。 現在、日本に限らず世界中で雪不足状態が慢性化したスキー場が増えています。アルプスは特に、地球温暖化の壊滅的な影響にさらされており、NGO「アルプス保全委員会(CIPRA)」によると、 アルプスの山岳地帯の気温は過去120年間で2度近く上昇しており、雪があまり降らないことに加え、気温が高すぎるために人工降雪機も使えないという状況に陥っている とのこと。今後、各地のスキー場

研究報告:マグロ・カツオの個体群の移動が引き起こす「気候正義問題」

イメージ
太平洋諸島の国と地域は、陸地面積は小さいながらも、 世界のマグロ・カツオ(以下マグロで統一)漁獲量の3分の1以上を占める 漁業のキープレイヤーです。 しかし、これらの島々の状況には変化が起こっています。悪い方向へと・・・ 温室効果ガスの排出によって上昇している海水温は、マグロの生息域に変化をもたらし、多くの太平洋諸島の管轄外である排他的経済水域(EEZs)外へとマグロを移動させることにつながっています。コンサベーション・インターナショナルのヨハン・ベル率いる専門家チームは、マグロの個体群が2050年までにどのように移動するのかをシュミレーションし、西はパラオから東はキリバスまで、10の太平洋島嶼国と地域では、マグロの大移動によって平均漁獲量がなんと平均20%減少してしまうと予測しました。 ネイチャーサステナビリティ誌に掲載された 研究 によると、大規模な漁獲量の減少は2050年までに、毎年1億4000万ドルの損失を招き、島嶼国と地域の歳入の17%が失われてしまうことになると報告しています。 「現在カツオ、キハダ、メバチマグロが好む温かい水温の熱帯地域の多くは、太平洋島嶼国と地域のEEZs内です。」「けれども、このまま海水温が上昇し続けると、マグロが好む海域が国の管轄ではない、公海を含む東方へと移動してしまいます。」とコンサベーション・インターナショナルのマグロ漁業プログラムを主導するベルは話します。 「これは気候正義の問題です。」 世界的な温室効果ガス排出量における太平洋島嶼地域の割合は微々たるものですが、この地域の人びとは気候危機の最も過酷な影響をすでに受けています。 「これは気候正義の問題です。」とベルは語ります。「太平洋島嶼国と地域は、他国が自国の管轄地域でマグロを漁獲する際、入漁料を課しています。ただ、マグロが公海へとますます移動するにつれ、自国の領海で行われる漁業が減り、歳入が減ることで、マグロ漁に頼った経済が疲弊してしまうのです。」一方で、海水温の上昇を引き起こす温室効果ガスの大半を排出してきた大国は、マグロ・カツオの移動の便益を受けることになるとベルは言います。 「公海でマグロを獲られるようになれば、公海では入漁料を支払う必要がないため、裕福な国の漁船がより利益を受けられることになります。」 西太平洋、中央太平洋、東太平洋の公海でのマグロ漁は、2つの漁

コロンビア:マングローブを守る新たな方法が根付く

イメージ
熱帯の沿岸地域を囲むマングローブは気候界のスーパースターです。マングローブの密集した絡み合う根には、1平方マイル(2.59 km²)あたり自動車9万台分の排出量に当たる二酸化炭素を貯留することができます。ただ、この「ブルーカーボン」、つまり沿岸の生態系に貯留される炭素は、これまで十分かつ正確には計測されていませんでした。そのため、マングローブは炭素市場への参入が叶わず、マングローブを守るための経済的なインセンティブを得ることができず、沿岸地域のコミュニティから潜在的な収入の機会を奪っていました。 しかし今、何十年にもわたって農業、エビの養殖、都市開発などによって破壊されてきたマングローブ林の存続に大きな影響を与える変化が起きようとしています。 最近開始されたブルーカーボンファイナンスプロジェクトでは、マングローブの木が幹や葉に蓄える炭素だけではなく、 数千年に渡って 土壌に蓄えられる炭素も評価されています。 (©APPLE) コンサベーション・インターナショナルの ブルーカーボンプログラム を率いるジェニファー・ハワードは「ほとんどの陸域の森林では、土壌に含まれる炭素は炭素全体のわずかな割合しか占めていないため、無視されています。」と話します。「一方で、マングローブや沼地などの湿地帯に関しては、土壌が生態系の中でも最も重要で、多くの炭素が蓄えられています。もし土壌を無視するなら、せっかくのチャンスをどぶに捨ててしまうようなものです。」 コンサベーション・インターナショナルは、コロンビアの海洋沿岸研究機関(INVEMAR)や現地環境局などのパートナーとともに、コロンビアのカリブ海沿岸に位置するシスパタの11,000ヘクタールのマングローブを保全・再生するための長期的な資金調達の機会を創出しています。 科学者たちは、シンプルかつ効果的な方法で熱帯の堆積物に蓄積された炭素を測定しました。マングローブ林の中へと入っていき、特殊なパイプを使って地下1メートルから3メートルの深さから土壌を採取し、その土に含まれる炭素を研究室で分析しました。 「私たちが取り出した泥は、100年以上日の目を見ていないものでした。」とハワードは言います。「こんな見た目ですが、このブルーカーボンは、地球の気候変動に対処し、マングローブ林の破壊を止めるためにとても重要です。」 正確な土壌サンプルを得るた

現地からのストーリー:伝統を通して自然を守る先住民コミュニティ

イメージ
  By. Kiley Price 1.伝統の力でアマゾンを再生するひとびと  ポルトガル語で「muvuca(ムブカ)」とは、伝統的に大勢の人が一つの場所に集まることを意味しています。アマゾン盆地のコミュニティは、この言葉からインスピレーションを受けて、彼らの暮らしている土地を囲む森林を再生させる新たな方法として、「種子のムブカ」を開発しました。 ブラジル北部のシングー川流域は、アマゾンの熱帯雨林とセラード回廊の乾燥したサバンナに囲まれています。かつては繁栄していたこの地域の大部分は、時間の経過とともに深刻に劣化し、大豆農園に転換され、 2019年のアマゾンの大規模火災 によって荒廃しました。 森林を再生するために、シングー川流域の人々はムブカ農法を取り入れました。カシューナッツやアサイーなど、この地域に自生する植物の種を大量かつ多様に蒔くのです。 コンサベーション・インターナショナルの資金と科学的技術面での支援のもと、先住民と農家の人々は、ブラジルの自然保護団体である「Socio-Environmental Institute」と10年以上に渡って協力しこの手法を完成させました。伝統的知識を用いて利用して、土壌を回復しながら、その土地に自生している植物を最も多く収穫できるような種子を確保しました。 ムブカの様子 ©Conservation International/ photo by Inaê Brandão 地元の農家や先住民、地域コミュニティの人々550人ほどで形成された「シングーシードネットワーク」は、「ムブカ」のために必要な種子を集めました。ムブカは通常90kgほどの種子で構成されており、森林1ヘクタールあたり120の多様な植物を育てることができます。このグループは、取り組みが始まってから既に180万本以上の木を植えるために取り組み、必要な種をまき、水質の改善から農産物の生産向上まで、地域に様々な好影響をもたらしています。この手法はまた、多様性のある原生種で構成された森林を育てることで、気候変動への対策にもなると考えられています。単一種の樹木で構成された森林よりも、はるかに多くの炭素を吸収できることが 研究 でわかっています。 「ムブカは、生物多様性への好影響以外にも、食料安全保障や生計といった社会的・経済的な課題にも取り組んでいます。」とコンサベーショ

気候変動が海に与える5つの影響

イメージ
By Jessica Pink 地球の70%を覆う生態系であるにもかかわらず、 海は敬意を払われていません 。海は私たちを養い、呼吸に必要な 酸素の大部分 を供給し、私たちを守っています。海がなければ、気候変動によって地球はすでに人が住むことができない状態になっていたでしょう。 でも、どうやって? 2016年の報告によると 、1970年代以降、海は人間の引き起こした温度上昇の90%以上をひたすらに吸収してきたことがわかっています。 その熱が大気中に放出されていたとしたら、世界の平均気温は56℃近くまで上昇していたでしょう。 たしかに海は広大ですが、吸収できる量には限界があるということが明らかになりつつあります。 今日は、気候変動が海洋生物にどのように影響を与えるか、そしてそれが人類にとって何を意味するかを見ていきます。 1. 気温上昇は、魚にも、私たちにも悪影響を与える 継続的に上昇する気温は、海洋生物にさまざまな影響を及ぼしています。 考慮すべきこと: 温暖な海域はサンゴの白化を引き起こし、海の生物多様性のほとんどが存在するとともに、人々に重要な食料源を提供する サンゴ礁の生態系に影響を与える 。 温暖な海域は、給餌と産卵に適した条件を求める海洋生物の大量移動を引き起こす恐れがある。 海水温の変化は、ほとんどの魚や頭足動物(タコやイカなど)の 発育と成長 に直接影響を与える可能性がある。 タンパク質の主な供給源を魚に依存している世界中の30億人の人々にとって、海の魚の数と、魚の大きさがますます小さくなるという見通しは問題です。 2.  極地の氷が溶けている 冬の北極海の海氷は、海水温が上昇するにつれて 沈み続け 、毎年やってくる悲惨な恒例儀式となってしまっています。 一方、南極大陸は、水没した氷が急速に溶けているため、海中から縮小していることが 最近の研究によ りわかっています。ホッキョクグマなどの象徴的な種に対する温暖化の影響は、 文書で十分に裏付けられています 。 しかし、海面下にも、同じくらい緊急性の高い問題があります。 考慮すべきこと:  北極圏の食物網の基盤である藻類の生産は、海氷の存在に頼っている。 海氷が減少すると藻類も減少し、北極のタラからアザラシ、クジラ、クマにいたるまでの種に波及効果がある。 海氷が減少すると、アザラシ、セイウチ、ペンギン、クジ

海を守るためにあなたができる5つのこと

イメージ
By Edgardo Ochoa エドガルド・オチョアはコンサベーション・インターナショナルの海洋・安全ダイビングオフィサーです。 私はこれまでに5,000回以上ダイビングをして、数え切れないほどの時間を水中で過ごし、訪れた場所の生物多様性の豊かさに驚かされてきました。コスタリカのココス諸島でも、ニューカレドニアのウベア島でも、透き通った海に飛び込んで、色鮮やかなサンゴ礁や砂から顔を出した小さなカニを見つけたり、イタチザメを垣間見たりした時の感動は、私にとってかけがえのない体験です。 残念ながら、どの遠征先でも目にするものがあります。それは、プラスチックです。 最近の研究では、プラスチックが 北極の氷河 から サハラ砂漠の砂 まで、地球上のあらゆる場所に到達しているということがわかっています。ペットボトル、お菓子の包装、廃棄された漁具をはじめ、たくさんのゴミが美しいサンゴ礁や魚の群れと一緒に浮かんでいる光景は、不思議なものではありません。 ただ、海がこれ以上プラスチックで溢れてしまわないようにするために、あなたにもできることがあります。すぐに始めることができる5つのアイデアを紹介しましょう。 1.そもそも買わないこと(でも買ってしまったら再利用すること) これは、海を守りたいと感じている人への一番のアドバイスです。年間約 800万トンのプラスチック が大量の石油やガス由来の汚染物とともに海に流出しています。現時点の傾向からするとプラスチックが 次の20年で 3倍に増え、世界の海岸線1メートルごとに50kgのプラスチックごみが増えることになります。 リサイクルはもちろん重要ですが、新しいプラスチックが海に流出するのを防ぐためにはプラスチックの利用量を減らすことが最も効果的です。食べ物の保存容器、バッグ、マスクなど何回も再利用できるものをできるだけ買ってみてください。 最近の研究 では、パンデミックが始まってから1290億枚のマスクと、650億枚の手袋が毎月使用されていて、この使い捨ての医療廃棄物の大半が海に流出し、食べ物だと勘違いした海鳥やウミガメなどが摂取してしまうことがわかっています。こうした状況を防ぐために、コロナごみは適切に処分して、安全な限り再利用可能なマスクを使い、レストランでテイクアウトを頼む時もプラスチックの容器を省いてもらうように心がけましょう。 2

ゾウが最高な母親である3つの理由

イメージ
母親ゾウは2年近くも赤ちゃんゾウを身ごもります。赤ちゃんゾウが産まれると、赤ちゃんに最適な栄養を含んだ母乳を与えて育て、生きていくために必要なスキル、厳しい状況下で群れを率いる方法を教えます。 ゾウたちは、母親ゾウたちが物事をよくわかっていることを認識しているようです。なぜならゾウの群れは母系社会だからです。最年長のメスゾウは、群れの社会的ネットワークを統率し、一家が生き延びていくために重要な役割を果たしています。 ゾウの群れが、みな幸運に恵まれているわけではありません。母親ゾウが象牙を狙った密猟など人間との対立によって命を落としてしまうと、残された若いゾウは生き延びることが難しくなってしまうのです。コンサベーション・インターナショナルのVR映像 「My Africa」 でも取り上げている、ケニアのレテティ・エレファント・サンクチュアリ-は、アフリカ初のコミュニティ主導型ゾウの孤児院です。孤児となったゾウを野生に帰すまで世話する取り組みは、絶滅危惧種であるゾウたちを守る希望の兆しとなっています。 もちろん、一番良いのは、密猟や争いを止めて、子ゾウが地球で最も忙しい母親ゾウから直接生きる術を教えてもらうことです。 なぜゾウが最高な母親なのか、3つの理由についてご紹介します。 母親ゾウは最高の「食事」を生み出す 赤ちゃんゾウは、生まれてから毎日2ポンド(907グラムほど)成長します。母親ゾウの母乳は離乳期間まで赤ちゃんの成長に合わせ4回も成分が変わります。 ケニヤのレテティ・エレファント・サンクチュアリでは、孤児ゾウたちが必要な栄養をしっかり摂ることができるよう、飼育員がゾウごとに特別なミルクを配合します。飼育員はゾウたちが健康でいられるように一日8回食事を与えています。母親ゾウの母乳の代わりとなるのは人間の赤ちゃんの粉ミルク。タンパク質、脂肪、ビタミンがたっぷり含まれています。 歯が生え始める痛みが強い時期には、赤ちゃんの痛みを和らげるために母親ゾウの母乳も変わります。母親ゾウは、歯が生えてきた赤ちゃんを助けるために抗炎症作用がある植物を食べます。サンクチュアリでは、飼育員が地域の植物に関する知識を生かして母親ゾウが与えるものと同じ種類の栄養分を模倣した自然の薬を赤ちゃんに与えています。 母親ゾウは最高の教師 ゾウたちは食べることのできる植物の選び方、捕食者から身を守