"ウナギ記者"こと井田徹治さんの講演「漁業資源学入門~ウナギが教えてくれる食卓の危機~」に行ってきました!
広報担当のKです。今日は最近話題の「ウナギ」について、先日でかけた講演のレポートをお届けします。ちょっと長くなってしまいましたが、どうぞおつきあいください。
ウナギはかつて、日本のハレの日の食べ物でした(よね?)。昨今では、ウナギはいつの間にか「庶民派フード」の仲間入りで、ご近所のスーパーでパック入りの蒲焼がお手頃価格で買えますし、ファストフード店でも手軽に食べられます。どういう経緯でそんなにお安くなったのか、私は深い事情は知らないまま、そんな庶民派の鰻丼をいただいていました。
ウナギはかつて、日本のハレの日の食べ物でした(よね?)。昨今では、ウナギはいつの間にか「庶民派フード」の仲間入りで、ご近所のスーパーでパック入りの蒲焼がお手頃価格で買えますし、ファストフード店でも手軽に食べられます。どういう経緯でそんなにお安くなったのか、私は深い事情は知らないまま、そんな庶民派の鰻丼をいただいていました。
スーパーではこのように・・・。
(© CI/photo by Shiomi Kasahara)
しかしこの20年ほどの間、ウナギの生息数は国内外でどんどん減少しています。今年6月、国際自然保護連合 (IUCN) は世界で絶滅のおそれのある生物種を集めた「2014年版レッドリスト」を発表、とうとうニホンウナギが「絶滅危惧IB類 (EN)」 (3ランクある絶滅危惧種の中で2番目に高い「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種」) に含まれてしまいました。
IUCNレッドリストプレスリリース2014.1 「2014年版IUCNレッドリスト発表 多くの生物に赤信号」 (2014年6月12日)
このIUCNのPRによると、指定された理由には、生息地の減少、水質の悪化、海流の変化、乱獲などが挙げられています。IUCN作業部会のマシュー・ゴロック委員長は「ニホンウナギの状況は大きな懸念だが、様々な情報を集めて評価が行われたこと自体は大きな前進。今後はこの情報を活用して保護へ向けた取組みを進めることが可能になる」などと述べています。
こうした中、7月11日、NACS-J市民カレッジ・ シリーズ6「絶滅危惧種ウナギからのメッセージ」(@三菱商事MC FOREST)第2回、共同通信社編集委員の井田徹治さんによる講演、「漁業資源学入門~ウナギが教えてくれる食卓の危機~」に行ってきました。井田さんは長年、環境や開発問題に関する記事を多数執筆されていますが、"ウナギ記者"としても名高く、シラスウナギの養殖ビジネスの裏側や漁業資源の地球環境への影響に関する著書も多数発表されています。
この講演で、私はこれまで知らなかった(知らなすぎた?)、ウナギについての様々な事実を知ったのでした!例えば、
- 世界のウナギの7割は日本人が消費していること。
- ニホンウナギは日本だけでなく、中国、台湾、韓国などでも獲れること。
- 以前は活きたシラスウナギ(ウナギの稚魚)は台湾から、蒲焼などに加工されたウナギは中国や韓国から輸入されていたが、最近は活きウナギは香港からのものが急増していること(台湾製→香港へ?)。
- ヨーロッパウナギやアメリカウナギは、主に中国で加工され、原産地や種類が分からなくなってから日本で輸入されることが多いので、日本の小売店でも正確な出所を把握していない場合が多いこと。
- ここ10年ほどの間、日本での漁獲量減少に伴い、海外のシラスウナギを大量輸入した結果、供給過多で価格が大暴落。欧米のウナギ資源量は激減し、特に欧州ではウナギの燻製やゼリー寄せ、アヒージョなどの伝統的なウナギ料理が食べられなくなっていること (日本の食文化を守るために、欧州の食文化が犠牲に!)。
- ワシントン条約によるヨーロッパウナギの禁輸措置が続いているのに、なぜか統計上は日本への輸入は継続している不思議 (密輸、養殖・保管用の池や中国経由の加工過程で混ざってしまうなど)。
- 以前にはなかったマダガスカルやチュニジア、モロッコなどのアフリカからや、フィリピン、インドネシアなどの東南アジアから、「異種ウナギ」が輸入されており、混ぜて売るとどの種だか分からないこと。
- 価格暴落で「薄利多売」ビジネスが拡大し、マグロ漁のように大掛かりな漁や取引の要らないウナギビジネスは参入しやすいため、不透明な国際取引や移動が野放しになっていること。
という驚愕の事実が判明したのでした。知らなかった・・・ (そんなに食べたつもりないのに・・・)。
講演中の井田徹治さん (© CI/photo by Shiomi Kasahara) |
ところで、生息数が減少しているのはウナギだけではありませんでした。
サバ、アジ、トラフグ、スケトウダラ、ホッケ、イカナゴ類など、日本近海の漁業資源も減少傾向にあり、さらにクロマグロやミナミマグロ、フカヒレ、メロなど、日本人も大好きな遠洋のお魚たちも、世界の主要漁場でそれぞれ数が減りつつあるそうです。
特に太平洋のクロマグロは、日本人が一番獲って一番食べているお魚ですが、親も稚魚もここ10数年で大幅に減少していることが、データから分かります。90年代からは「蓄養マグロ」といって、他所から巻き網で獲ってきた若い天然マグロを狭い生簀で育てる方法が急増し、手早く油の乗ったマグロが大量生産できるので、重宝がられているそうです。
サバも、特に若い魚の乱獲により、太平洋系群では70年代のピーク時の約7分の1程度、日本海系群も90年代のピーク時の5分の1程度にまで減少し、最近はノルウェー産のタイセイヨウサバが多く出回っているそうです。しかし、こうした代替品が入手できることで、日本近海のサバが減少している現実が見えにくくなってしまい、知らぬ間に海洋資源の枯渇化が進んでしまうとのことでした。
・・・このままでいいの!?世界の海からお魚がごっそりなくなってしまってもいいの!?
私たちが食べているお魚の店頭価格は、必ずしもこうした環境に対するコストや資源管理上のコストを反映していないのが現状です。井田さんは、こうした必要なコストを払っていない商品がのさばっているのが問題だと指摘します。
そして問題解決のための対策として、
世界の海洋資源を守るために、私たちに出来るのは、安いお魚をたくさん食べよう!ではなく、おいしいお魚を食べよう!(稚魚や若いお魚を獲らないこと、将来の世代が食べる分まで食べつくしてしまわないこと、漁業資源の保護や管理に掛かる必要なコストを負担すること、どこからやってきたお魚かを考えること、などなど)を心がけることです。ウナギやクロマグロなどの貴重な海洋資源を絶やさないように、これからのことを考えながら消費していきたいですね。
とはいえ、当面ウナギは我が家の食卓には上らない予定です。本当の「ハレの日のごちそう」として、しばらくさようなら。。。
サバ、アジ、トラフグ、スケトウダラ、ホッケ、イカナゴ類など、日本近海の漁業資源も減少傾向にあり、さらにクロマグロやミナミマグロ、フカヒレ、メロなど、日本人も大好きな遠洋のお魚たちも、世界の主要漁場でそれぞれ数が減りつつあるそうです。
特に太平洋のクロマグロは、日本人が一番獲って一番食べているお魚ですが、親も稚魚もここ10数年で大幅に減少していることが、データから分かります。90年代からは「蓄養マグロ」といって、他所から巻き網で獲ってきた若い天然マグロを狭い生簀で育てる方法が急増し、手早く油の乗ったマグロが大量生産できるので、重宝がられているそうです。
サバも、特に若い魚の乱獲により、太平洋系群では70年代のピーク時の約7分の1程度、日本海系群も90年代のピーク時の5分の1程度にまで減少し、最近はノルウェー産のタイセイヨウサバが多く出回っているそうです。しかし、こうした代替品が入手できることで、日本近海のサバが減少している現実が見えにくくなってしまい、知らぬ間に海洋資源の枯渇化が進んでしまうとのことでした。
・・・このままでいいの!?世界の海からお魚がごっそりなくなってしまってもいいの!?
私たちが食べているお魚の店頭価格は、必ずしもこうした環境に対するコストや資源管理上のコストを反映していないのが現状です。井田さんは、こうした必要なコストを払っていない商品がのさばっているのが問題だと指摘します。
そして問題解決のための対策として、
- ラベリングや認証制度などによる情報公開やトレーサビリティの向上、
- 乱獲をなくすための漁業統制や入札制度、漁獲証明制度や免許制度などの規制強化、ワシントン条約遵守による不適正品の排除、そして
- 私たち消費者の意識改革で「薄利多売」ビジネスモデルからの脱却を図ること
世界の海洋資源を守るために、私たちに出来るのは、安いお魚をたくさん食べよう!ではなく、おいしいお魚を食べよう!(稚魚や若いお魚を獲らないこと、将来の世代が食べる分まで食べつくしてしまわないこと、漁業資源の保護や管理に掛かる必要なコストを負担すること、どこからやってきたお魚かを考えること、などなど)を心がけることです。ウナギやクロマグロなどの貴重な海洋資源を絶やさないように、これからのことを考えながら消費していきたいですね。
とはいえ、当面ウナギは我が家の食卓には上らない予定です。本当の「ハレの日のごちそう」として、しばらくさようなら。。。