「Deforestation」を何と訳すか 【その2】
「Deforestation」を何と訳すか 【その1】から続き
By コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 浦口 あや
タンザニア © Benjamin Drummond |
ぴったりの日本語はなく、意味的に正しい「非森林化」は根付きそうにない状況で私たちができるのは、代替の日本語を注意深く使うことだと思います。
CIジャパンのメンバーにも助けを求め、出てきたのは森林消失、森林減少、森林破壊です。初めにお伝えしておくと、画期的な答えはありません。何はともあれ見ていきましょう。
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森林消失
Forest lossというのはよく使われる言い回しで、森林消失はその直訳になると思います。私の英語力では deforestationとforest lossのニュアンスの違いがはっきりしないのですが、表している現象としては、deforestationが「森林が森林以外の土地被覆タイプになった」というかっちりした
変化であるのに対して、森林消失は「森が消えてなくなってしまった」という若干フワっとしたイメージだと思います。そこはかとなく残念感や喪失感をまとっているかもしれませんが、ニュートラルで、厳密な意味で土地被覆の変化を表現したい場合でない限り、deforestationに一番近い言葉だと思います。
森林減少
REDDに関わっている方は、真っ先にこの単語が思い浮かんだのではないでしょうか? REDDは、Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradationの略語であり、日本語では「森林減少・劣化に由来する排出の抑制」と訳されます。 この和訳は使えそうです。しかし、実は気になる点があります。「森林」が「減少」ですので、文字通りに読むと、「森林というものがあり、その面積が減っている」という意味になります。一方で、deforestationは森林が森林ではなくなる現象ですので、厳密には違うのかもしれません。ただ、ほとんどの場合で、「森林の面積が減る」という意味で理解されても問題はなく、誤解を生む危険性もないので、良いオプションと思います。「森林消失」より市民権を得つつあるかもしれません。
森林破壊
こういう使われ方をされる場合の「破壊」は行為であって、森林破壊の結果がdeforestationなのでは、という気がします。また、「破壊」と言われると、破壊した人々への怒りや、森が破壊されたことの悲しみが溢れてきます。でも、そのdeforestationは、日本に暮らす私たちにとって対岸の出来事なのでしょうか?強いメッセージ性を持つ一方で、冷静な議論や分析の妨げになるので、文脈に沿った意識的な利用が必要な言葉だと思います。
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森林破壊以外の2つの言葉はインパクトに欠け、耳慣れてもいないので、結局使ってもらえないのではないかという懸念もあります。他に良い言葉がありましたら、ぜひ教えてください!
Deforestationは複雑な現象で、その背景は置かれている場所で大きく異なりますが、以下、代表的な原因と対策をご紹介したいと思います。なぜ「森林伐採」はダメなのでしょうか。
■ 農地転換・農地拡大・開墾
Deforestation(森林減少)の最大の原因は農地への転換です。農業をするのに邪魔な木を切ったり燃やしたりして、農地として整備することを表します。売れる木が生えていた場合には切った木を搬出して売る場合もありますが、一番大きな目的は農業です。
【対策】
農地転換が地元農民による自給自足等のための小規模なものである場合、地元農民が農地を現状以上に拡大しないでも済むように、農業生産性を高めると共に、森林と共存できる収入源の創出します。
国際市場で取り引きされるような農産物生産は、それらを買い取る側の責任が大きいです。
◎弊著「6月22日はWorld Rainforest Day!(熱帯雨林の日)」ブログも併せてどうぞ!
■ 土地収奪(land grabbing、land encroachment)
土地の権利や森林に関する法律・制度が理解されていない、意識的に無視されている状況において、土地が本来の所有者や利用者から奪われることです。Deforestationに関連しては、実は公有地の森林が「自分が使っていると示すことができれば、その土地は自分のものになる」という認識のもとに破壊されることは決して珍しくありません。都市部に住む比較的裕福な層が、人を雇って行うことが多いようです。
【対策】
法律・制度を普及すると共に、収奪された土地を本来の所有者である国が取り戻し、さらなる収奪を未然に防ぐ必要があります。政府が非常に重要な役割を担います。
■ 伐採(logging)
木材にするために木を切る行為です。違法な場合には、違法伐採(illegal logging)と呼ばれます。皆伐(clear cut)と択伐(selective logging)があり、皆伐の場合には、そこに生えている木を全て切るため、deforestationです。択伐の場合、伐採された後の森林は、健全度は失われたとしても、森林という状態を保っているため、deforestationではありません。森林劣化(forest degradation)と言われる状況です。
違法伐採の場合、単一種が育てられている植林地ではなく、多種多様な樹種が生える天然林において、逮捕されるリスクを犯しながら伐採するわけですので 、国によりますが、高く売れる樹種が選択的に切られるケースが多いです。
【対策】
輸入する側が違法に伐採された木材を買わない、森林の健全性が保たれるように管理された森からの木材を見極めて購入することが非常に重要です。認証は有効なツールです。現地においても、違法伐採を防ぐための取り組みが必須です。
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