2014年11月28日金曜日

地球規模で生物多様性保全を強力に推進するCEPFパトリシア・ズリタ事務局長来日インタビュー Vol.1


2014年10月、CIも共同出資する生物多様性保全のための国際基金である、「クリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金 (CEPF) 」のパトリシア・ズリタ事務局長が来日しました。
ズリタ局長は20103月にCEPF事務局長に就任して以来、これまで5年近くに渡ってCEPFの運営を率いてきました。本年12月末をもって退任し、 国際環境NGOバードライフ・インターナショナル (本部: 英国ケンブリッジ) CEOに就任することが決定しています。引継業務で慌しい中、1週間ほどの日程で何度目かの日本を訪れました。世界中の会議に飛び回る合間を見つけて、CEPFの今後や日本への思いなどを語ってもらいました。

-まず、簡単にCEPFでのこれまでのことを教えてください。CEPFに来たのはいつですか?
パトリシア:「ほぼ5年ぐらい前ですね。」

CEPFのトップとして5年間、どのようなことを達成してきましたか?

パ:「私が20103月に着任した頃のCEPFは、既に確立されていて、第2フェーズの半ばでした。CEPF2000年に、世界銀行とCI、そして地球環境ファシリティ (GEF) の3組織によって設立されました。設立当初の最重要課題として、市民組織に対する世界銀行やGEFのような大規模なドナー(資金援助機関)のアクセスをいかに確保するか、ということがありました。このような大規模ドナーの資金提供プロセスは、非常にややこしいことが多く、それをどう克服するか、ということです。CEPFは、途上国で活動する現地の市民社会団体などを、これらの大規模ドナーと結びつける、というニーズに答えるために設立されました。CEPFは、資金提供メカニズムとしての機能だけでなく、市民社会団体のキャパシティ構築を実施する機関としての側面も担っています。」


―市民社会団体のキャパシティ構築とは?

パ:「CEPFには2つの大きな柱があります。1つは生物多様性ホットスポット保全のための活動を支援するというもの。地球上で最も重要な生態系システムの保全を推進します。そしてもう1つは、市民社会団体の活動を支援するというもの。途上国に多く存在するホットスポットの傍で生活し、その保全活動に直接的に関与している現地の市民社会団体らとともに活動し、そうした団体の可能性を引き出していくのです。この2つの柱はどちらも重要です。
そして、2001年、日本政府がCEPFの共同運営メンバーに加わりました。このことは、CEPFの成功への原動力になったと言っても過言ではないほど、大きな力になりました。翌2002年にはマッカーサー財団も加わり、その頃にはCEPFの第1フェーズは、それら5つのドナーによるパートナーシップで支えられるようになっていました。

2007年、CEPFは第2フェーズを開始します。私たちはさらにフランス政府開発庁の協力を得ることに成功し、そして2010年に私が事務局長に就任した頃には、日本政府からの追加資金支援の確約をいただき、2012年には欧州委員会も参加するに至りました。

CEPFは現在、まもなく開始する第3フェーズへの移行段階です。これまでの14年間で多くのことを学びましたが、中でも特に重要なのは、市民社会団体とのチャンネルづくりやキャパシティ構築のための資金提供へのニーズはまだまだ高いにもかかわらず、各ホットスポットにおける5ヵ年間の継続支援という既存のシステムでは、真の意味での生物多様性保全や市民社会のキャパシティのレベルアップという課題の解決にならないのでは、ということでした。

そうした観点から、CEPFの第3フェーズは、生物多様性への長期的なコミットメント、および市民社会のキャパシティを確保し、“卒業”を実現するための長期的な投資を強力に推進するものとなっています。CEPFの政策方針の決定を担う各資金援助機関によるドナー協議会は、20141月の会議にてこの方針を承認し、現在準備が進められています。


-第2フェーズを振り返ってどう評価しますか?

パ:「先日発表した2013年の年次報告書からいくつかのデータをご紹介します。CEPF85カ国で23のホットスポット戦略、そして世界中で1,900の市民社会団体に対して資金提供を実施してきました。そして17500USドル (175億円) の助成金を支給し、レバレッジ効果による調達資金は33000万ドル (330億円)にのぼります。これらは世界の生物多様性関連事業への年間ODAのうちの0.5%を占めており、CEPFによる貢献度は、極めて大きなものであることが分かります。
そしてこれらの多大な投資がもたらした生物多様性への影響は、1,200万ヘクタール以上におよぶ新規指定保護地区の創設、3000万ヘクタール以上の土地の管理状況の改善、そして生物多様性保全に配慮した開発のために75の政策や環境保全連携事業グループの設立など、世界中で目覚しい成果を挙げています。CEPFの支援を受けた市民社会団体には、とても小さな小規模組織が多数含まれますが、そのような小さな団体が世界中の至るところで活動し、これだけの成果を挙げているということに、感動せずにはいられません。

それから、先日韓国のピョンチャンで開催された、生物多様性条約第12回締約国会議 (CBD-COP12) で、資金動員に関するレセプションを開催したのですが、その際CEPFの助成金受給団体が世界中でどれだけの成果を挙げ、「愛知目標」の目標達成にどれだけ貢献しているかをまとめたレポートを発表 しました。生物多様性の保全は、地球規模課題です。これらの成果が国や地方政府にとってどのような意味があるのか、国レベルでの国際社会に対するコミットメント、そして地球規模でのアジェンダとしての生物多様性にとっていったいどのような意味があるのか、ということについて、詳しく説明しています。

そして、CEPFが愛知目標の達成にこれだけの大きなインパクトをもたらすに至っているのは、ローカルレベルで地道に活動を続ける現地の市民社会団体の活動ゆえなのです。こうした市民社会団体の地道な努力を、広くお知らせする意義は大きいと思います。私たちの挑戦はまだまだ先が長いですが、しかし、こうした小さな団体の小さな一歩が、世界中で実践されていることで、これほどまでに大きな成果を生み出せるということが、お分かりいただけるのではないかと思っています。」

-第3フェーズでは、さらなる展開が見られるのですね?

パ:「第3フェーズは非常に楽しみです。今後も、CEPFのインパクトをスケールアップし続けていけるようにしたいです。なぜなら、CEPFは地球上で生物多様性と市民社会のために出資する財団として、世界で唯一だからです。国連開発計画 (UNDP) にも類似のものがありますが、生物多様性のみではなく開発分野すべてに対して出資するものです。世界規模で生物多様性保全のために活動する市民社会に手を差し伸べる基金としては、CEPFが唯一の基金です。」



CEPFでは第3フェーズにおいて、コミュニケーションやマーケティング戦略を始めとした、様々な改革を実施しますね?第3フェーズの概要を教えてください。

パ:「1つ目は、各ホットスポットにおける市民社会団体の支援からの’卒業’にどれだけの期間コミットするべきか、という長期的ビジョンの検討と、こうした役割の強化についてです。CEPFが各地域でエコシステム・プロファイルを構築し承認されると、次に現地で実際に活動に当たる市民社会団体の選出に着手します。これらの団体は、CEPFの現地代表のようなものです。CEPFは単にアメリカに本部を置きお金だけを現地へ送り込むのではありません。現地の団体が実際の活動を担い、より現地の事情に通じている団体の手でより適したプロジェクトにすることができます。私はこうした役割の強化を、現地の助成金受給団体の活動キャパシティに留まらず、現地政府やドナー、そして民間セクターとの連携にまで広げていければと考えています。そうすることで、市民社会団体は現地政府や民間セクターの意思決定に重要な影響を及ぼし、社会全体のレベルアップを担うことに繋がります。

2つ目は、CEPF内部の様々なメカニズムの改善です。CEPFの助成金システムは2007年に構築されましたが、さらなるニーズに見合ったものにするため、今回、私たちはこれをすっかり再構築し、1115日に新システムを導入する予定です(*インタビューは2014年10月末実施)。今後は、CEPFのウェブサイト上でワンステップで申請ができるようになります。オンライン上に申請書類をアップロードしていただくと、CEPFがチェックします。報告書なども同じウェブサイトでアップロードしていただくことで、モニタリングのインパクトや評価数値など、助成金受給団体が実際にどれだけの成果を上げたかや、ファイナンス状況などが分かります。これまで3つの異なるシステムで管理していた必要な情報すべてを、ひとつのシステムに統合し、使いやすくしました。

3つ目が、CEPFのコミュニケーションに関わる課題です。CEPFは本当に素晴らしい仕組みなのですが、一般的にはちょっと分かりにくいのが難点です。私が着任して以来、CEPFの活動報告書やエコシステム・プロファイルの概要、綺麗な写真とともに活動をご紹介する冊子など、人々の目に触れる様々な努力をしてきました。また、ウェブサイトの充実にも力を入れ、日本語でのウェブサイトも開設しました。今回、CEPFはファイナンスのシステムも変更しますので、その仕組みを受給団体やドナー、そして潜在的ドナーの皆さんに分かりやすく伝える必要があります。

4つ目が、今後のドナー拡大に向けたビジネスプランの構築です。先ほどから、市民社会団体の支援からの’卒業’というお話をしていますけれど、それは結局のところ、より多くの資金が必要になってくるということです。具体的には、75000万ドル (750億円) 程度を見込んでおり、現在パートナーである日本とフランスの他、ドイツ、ノルウェー、イギリス、韓国などの国家政府や地域開発銀行などの参画を期待しています。こうした更なる資金動員を実現しない限り、私たちが目指している到達点にはたどり着けないのです。」


-これだけ多くの成果を達成してきたのに、退職されるとのことで、とても残念な気がしますが、これまでのCEPFの結果には満足していますか?

パ:「ええ、大変満足しています。
CEPFは本当に優れたメカニズムですから。大変効率的で、費用対効果も素晴らしく、そしてここがとても重要な点ですが、適した人々 (*現地の市民社会団体
に直接資金を届けることができるのです。本当ならこの段階でCEPFを去る予定ではなかったのですが・・・()

でもバードライフとCEPFは、現地の人々のキャパシティの構築という、同様のミッションを持っているのですよ。決断するにはずいぶん悩みましたが、CEPFのためにだいぶ頑張ってきて、内部システムの改善にも貢献できましたし、すべての段取りは済んでおり、あとはそれをひとまとめにして突き進んでいくだけ、というところまできましたので、後任に託すだけです。

CEPFは本当に多くの素晴らしい成果を挙げてきたと思います。そして私は素晴らしいチームにも恵まれました。ワシントンDCの本部で、私を日々支えてくれている、最高のスタッフたちです。そして素晴らしいドナーにも恵まれました。本当に幸せなことです。ドナー協議会のメンバーやワーキンググループのメンバーの皆さんも大変素晴らしく、皆さん力を合わせて支えてくださいました。

今年の1月に来日した際、日本国政府の関係者に戦略文書をプレゼンテーションしたのですが、そこで私は「もしこの方針が間違っていると思われるのでしたら、今すぐクビにしていただいても結構です。でも、私たちが本当の貢献をしようと思うなら、このやり方しかないと思います」と言いました。すると、会議の出席者の皆さんは「確かに、これは私たちが想定したより多額の費用が掛かるようですし、更なるコミットメントが必要ですね。でも、私たちは腹を決めなくてはなりませんね」とおっしゃって、賛同してくださったのです。その時のことを思い出すと、本当に胸がいっぱいになります。そこまでたどり着くのは大変でしたけれど、多くの方々のご理解をいただくことができて、本当にやりがいがありました。私は本当に幸せです。幸せなまま、次のチャレンジに向かっていくことができます。在任中は本当に素晴らしい経験を沢山積むことができました。」


・・・続きは次号に続きます。


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