【気候変動:COP21特集ブログシリーズ(1)】
気候変動交渉について知っておくべきこと:CI気候政策担当ディレクター、シャイラ・ラグハへの3つの質問

11月30日から12月11日にかけてフランス・パリで開催される気候変動交渉COP21に向けて、CIの気候変動に関わる業務やメッセージを、【気候変動:COP21特集ブログシリーズ】として、連続してお伝えします。第1回目となる今回は、CIで気候政策担当ディレクターを務めるシャイラ・ラグハ(Shyla Raghav)への、気候変動交渉についての3つの質問とその回答です。来週にせまるCOP21開催を前に、今回の交渉のポイントや予想される結果について説明しています。

※本ブログ記事は、CI本部の記事「What you need to know about the Paris climate talks:3 questions for Shyla Raghav」を日本語にしたものです

文:MOLLY BERGEN



11月30日~12月11日、パリで気候変動交渉が開催されます。気候変動に立ち向かい、適応するため、今回の会議では世界的な行動計画への合意が期待されています。(© Damien Roué/Flickr Creative Commons)

編集メモ:11月13日にパリ市内でテロ事件が発生しましたが、国連は気候変動交渉会議の開催を約束しています。フランス首相、マニュエル・バルスの言葉を借りれば、“会議は開催されます。なぜならそれは人類にとって不可欠だからです。”

2009年にコペンハーゲンで行われた気候変動枠組条約締約国会議では、期待されていた世界共通の気候変動合意を生みだすことができなかったため、参加者たちは新しい期限を2015年に設定しました。このため、パリで開催される第21回締約国会議(COP21)には、実際的な行動計画への合意に高い期待が寄せられています。CIの気候政策担当ディレクターのシャイラ・ラグハが、気候変動交渉では何がポイントでどんな結果が予想されるか、説明します。


質問: この会議が「第2のコペンハーゲン」とならないための課題は何でしょうか?
回答: この会議がそうなってしまうことはありうると思いますが、可能性は低いと思います。世界の状況が6年前と変わっているからです。気候変動に対する意識と懸念は6年前よりも高いレベルで政府にも民間にも共有されており、生命を脅かすほど深刻な脅威であることを私たち皆が理解しています。長引く干ばつ大規模な嵐海面の上昇など、気候変動による問題が次々と発生していくなかで、この問題が決して将来のものではないと考える国や地域、企業が増えています。気候変動はまさに今現在起きている問題であり、早急な解決策が求められているのです。また人々は、気候変動との戦いとは単なる緩和策や排出量の削減ではないということを認識しつつあります。人々が変化する環境に適応し、悪影響を最小限に抑えるためには、気候変動への対策を経済開発政策に統合する必要があるのです。
もちろん、途上国と先進国間の信頼関係は未だ十分ではなく、途上国に求められる責任や貢献の度合いについて意見が一致しないという状況もまだ続いています。途上国の中には、先進国による強力な経済支援やリーダーシップが具体化しなければ合意しないと考える国もあります。一方で、アメリカと中国アメリカとブラジルドイツとインドなど国家間の協力は、このように影響力のある国々が気候変動に対応しようという政治的な機運が高まっていることを実証しており、今後、他国も追随する可能性が高いです。


質問:各国はパリで開かれるCOP21に対してどのような準備を進めているのでしょうか?


回答:COPに参加する国々は、国別約束草案 (INDC)と呼ばれる、気候変動に対する国としての目標を提出しています。目標値のパラメータは国ごとに異なります。例えば、アメリカは経済全体での目標を定め、2025年までに経済全体の排出量を2005年比で26~28%削減するとしています。また、インドは排出削減量を絶対量で設定せずにGDP当たりの計算としており、2030年までに2005年比で33~35%削減することを目指しています。一方、中国はピークアウトの目標を設定し、2030年まで排出量の増加を止めることを誓約しています。
国ごとに目標値を設定するメリットは、それぞれの国で可能な形の貢献となるため、より包括的な合意を可能になることです。一方、デメリットは、各国が最善を尽くそうとするインセンティブが働きにくいこと、また、各国がそれぞれ異なるベンチマークや算出ルールを採用しているため、国ごとの比較が難しいという課題もあります。
現時点で、会議に参加するすべての先進国と、発展途上国のうち4分の3の国々がすでにINDCを提出していますが、その詳細さは国ごとに異なります。なお、気候変動枠組条約(UNFCCC)によるINDC分析では、全てのINDCが実行された場合の全体としての影響度合いを示しています。その中では、気温上昇は2.7度になるとしていますが、科学界からは破滅的な温暖化を防ぐためには上昇を1.5~2度の範囲に留める必要があるという声が出ています。
もちろん、INDCだけでは十分ではありません。次の質問では、各国による気候変動対策をいかに補完し、強化していけるかについてお話します。

 マレーシアのパソ森林保護区の上空に降り注ぐスコール。森林やその他の自然生態系を守ることは、人が気候変動の影響を軽減し適応するために不可欠です(© Benjamin Drummond)


質問:パリ会議で最低でもこれだけは実現すべきということを教えてください。

回答:当然、すべての国が納得して受け入れることのできる合意を目指す必要があります。今回の会議において私が考える最低ラインは、INDCを安定させるもの、即ち各国の運用の基準となるようなルールを作成することです。INDCは、国際的な合意なしには実行力を持たず、経年的な比較、測定が不可能なため、意味を成さなくなるのです。

CIは、新たな合意は、世界全体の排出削減および適応策のうち30%は自然の力によって実現可能であることを認識しようと提唱しています。パリにおける今回の合意は恐らく合計で20ページほどの非常に短いものとなるでしょう。そのため具体的な内容を含めることは難しいと思いますが、少なくとも土地利用の分野において、自然を活用した気候変動対策を実行することが可能な状況を生み出す必要があります。

そして当然ですが、このような活動には資金が必要です。気候変動に対する活動において、過去十年以上この点がネックとなってきました。解決方法もアイディアもありながら、経済的なリソースを欠いていたのです。国や民間組織からの経済的な支援はもちろんのこと、マーケットやツールの創出による安定的な資金の確保が必要です。例えばREDD+のような仕組みが効力を発揮するには、国際的な炭素市場の存在が不可欠です。そして、どのようなシステムが構築されても、そこでの国際的な排出権取引を活発化させてほしいと思います。

今回の合意は単なるスタート地点にすぎません。政府目標の補完を目的とした多様なアクションを調整する場です。気候変動に対する政策策定において最も大きな課題は、合意によって包括的な解決方法がもたらされるだろう、という過剰な期待にあります。気候変動の問題は世界的なものではありますが、その影響は地域に特有の形で現れ、そのため地域ごとの対応が必要となるのです。


気候変動はあまりにも大きな問題なので、政府だけに解決を期待することは不可能です。市民はもちろん、企業の協力も必要です。現在でも民間組織による貢献は多大なものですが、より大きな活動との連携が不十分です。今回の合意を契機として、企業による関与、市や州のような自治体レベルの関与をすべて小さなピースとして、一枚の大きな絵を完成させたいと考えています。

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