2015年12月20日日曜日

カンボジアの森で採れるもの

カンボジアの真ん中に広がる森に行ってきました。衛星画像で見ると、カンボジアには濃い緑の大きな塊がいくつかあります。その中の一つであり、唯一、低地に残る森です。様々な原因で木が切られ、森が失われる中、私たちは、地元コミュニティ、政府、地元NGOと協力して森を保全する準備を進めています。そのための第一歩は、もちろん、森を知り、そこに暮らす人々を知ることです。

以前、「カンボジアの森で寝る」でも書きましたが、今残っている森というのは、ほぼ確実にへんぴな場所にあります。ホテルから日帰りで見るとなると、どうしても限定的になってしまいます。今回は、森で一泊(いわゆる本格的なキャンプ)、そして地元コミュニティのお家に一泊しました。


バイクで移動しながら森の様子や行き交う人々に触れ、地元コミュニティの人たちとCIカンボジアスタッフの対話に耳を傾け、川で体を清め(シャワーなどないので)、村をのんびり歩いたり、日も明けない3時頃からけたたましく鳴く鶏を食べてしまいたくなったり。五感で森と人々の生活を感じる旅だったのですが、このブログでは、森を歩いたときに地元の人たちが教えてくれた、森で採れるもの(非木材産物、Non Timber Forest Product、業界では、略してNTFPと言います)について書きたいと思います。 

まずは、樹脂。樹脂?と思われるかもしれません。私も思いました。樹脂は、防水剤、シーラント、ペンキ、はたまた香水や薬として、実は、何百年もの間、世界中で使われている非木材産物です。身近な漆(液体)や松ヤニ(固体)も樹脂です。カンボジアでも液体の樹脂と固体の樹脂が採取されていますが、特に重要なのは、液体樹脂で、今回訪れた村をはじめ、この森に暮らす多くの村で主要な現金収入源になっています。家の壁や船の塗装に主に使われ、ベトナムやタイにも輸出されています。また、新興国での建設ラッシュ、世界的な自然志向の高まりにより、自然素材である天然樹脂への需要が高まるとも予想されています。 

この辺りでは、落葉樹林ならDipterocarpus intricatus、常緑樹林ならDipterocarpus alatusから樹脂が採れるのですが、落葉樹林で採れる樹脂の方が透明で、高く売れるそうです。全く根拠はないのですが、この価格の上下関係は、意外でした。カンボジアで二つのタイプの森林に行った方は、常緑樹林の空気の密度の濃さのようなものを感じられたのではないでしょうか。常緑樹林はいわゆるジャングル。一方の落葉樹林は、木も比較的まばら、樹高も低く、一言で言うとしょぼい感じの森です。無意識に、ジャングル的な森が「上」のように感じていた自分を発見し、多様性に上下関係なし、と改めて心に刻みました。
樹脂を汲みとる

村では、家族ごとに樹脂を採集する木を「持って」います。国有地ですので、正しくは所有はしていないのですが、それぞれの家族が数十~数百の木から樹脂を採っていて、他の家族が誰かの木から樹脂を採集することはありません。男性は、毎週4~5日をかけて森に泊まりながら自分の木を回り、幹に開けた数十センチの穴に溜まった樹脂をすくいとり、集めます。その後、穴にごく短時間火をつけ、樹脂の粘度を下げ、樹脂が穴に滴るのを促します。翌週来る頃には、また穴に樹脂が溜まっている、というわけです。 



穴につけた火を湿った葉で消す
雨が入らないように蓋(本当はもっと長く作る必要があるとのこと)

固形樹脂
固形樹脂は、様々な種類の木から採れます。何らかの原因でついた傷部分から染み出てきた樹脂が固まったもので、自然に地面に落ちたいるものを拾います。様々な用途に、時には液体樹脂とブレンドして使われるそうです。 



重要な現金収入源である樹脂のほかにも、地元の人々は、様々な非木材産物を使っています。今回、説明を受けながら森を歩いたわずかな時間の間にたまたま遭遇しただけでも、産後に使う薬(毒性もあり、漁にも使われていたそうです)、精力剤、吐き気・下痢の薬、椅子などの家具を作るのに使うラタン、籠などを作るのに使うラタン、若芽を食べる植物、4月頃に果実をつける植物、種子が良い香りのお茶になる木、ホエジカも好きな果実が生る木、倒木になると美味しいキノコが生える木、屋根葺きに使う葉など、次々と教えてくれました。



産後の薬になる木
野生生物や鶏の餌にもなるシロアリの巣


村で地元の方々とお話すると、「私たちは森に頼って生きています。森がなくなったらどうやって生きていけばよいのでしょう?この子達の将来はどうなるのでしょう?」という不安を頻繁に聞きます。その言葉の重さを改めて感じ、また、彼らが幾世代にもわたって獲得し、伝承してきた知恵の厚みに圧倒された旅でした。


文章・写真:政策・パートナーシップ シニアマネージャー 浦口あや

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