【気候変動:COP21特集ブログシリーズ(4)】
気候変動対策を進めるためには、「森林減少」というヨーロッパへの目に見えない輸入をとめることが必要です

パリで開かれているCOP21は2週目半ばに入り、閣僚級の交渉が続いています。CIでは、多くの国が自然を活用した気候変動対策(nature-based solutions)の重要性を認めた結果、合意文書案の様々な箇所で、気候変動への緩和及び適応策としての生態系の役割について言及されていることに力づけられています。引き続き、交渉の行方を注意深く見守っていきます。

さて、国単位で行われる国連の気候変動交渉では、それぞれの国が国内で排出する温室効果ガスの量やその削減への取り組みに意識が集中しがちです。そこで、【気候変動:COP21特集ブログシリーズ】の第4弾では、もう少し視野を広げるための材料を提供したいと思います。
私たちは、国内で毎日食べたり使ったりしているものを通して、国境の外の途上国で多くの温室効果ガスを排出していますが、そのことにあまり意識が向いていません。ヨーロッパでは、途上国からヨーロッパの市場に輸入される大豆やパーム油、牛肉などの農産物を生産するために、途上国の森林が切られ、それが気候変動の誘因になっていることを問題視し、「森林減少をともなわない農産物を選択しよう」という機運が生まれています。今回のブログでは、ヨーロッパでの議論の紹介を通して、私たちの日々の生活が途上国の森林減少にどうか関わっているのか、私たちが一人の消費者、市民として、気候変動対策のために何ができるのか、を考えるきっかけになればと思います。


※以下のブログ記事は、9月20日付けのCI本部の記事「Climate action requires halting Europe’s unseen import: deforestation」を抄訳したものです。文:JEAN-PHILIPPE PALASI



インドネシアのグヌング・ゲデ国立公園の森林。より発展した国々における農産物需要が、熱帯の国々の森林減少に拍車をかけています。(© Conservation International/photo by Haroldo Castro)
1990年から2008年の間に、ヨーロッパはポルトガルと同じ広さの森林を伐採しました。なぜヨーロッパの人々はそれに気づかなかったのでしょうか。なぜなら、これらの木々はヨーロッパの中でなくなったわけではないからです。木々は、ヨーロッパ市場に入る農作物を育てるために、遠く離れた熱帯雨林で切られました。

国連環境計画(UNEP)によると、森林減少の80%は農業の拡大が引き起こしています。その多くは、大豆、パーム油、牛肉、コーヒー、ココアなどの製品として森林減少を大量に「輸入」する、主要な経済大国が引き起こしています。これらの製品に対する需要は世界的に急増しており、それが壊滅的な気候変動を防ぐためには欠かせない、森林の存在を脅かしています。

CIは、欧州連合(EU)が森林減少を伴わない農産物を先陣を切って選択するよう働きかけています。本年9月21日、CIヨーロッパは、ブリュッセルにある欧州議会で、12月にパリで開催されるCOP21を前に行動をおこすよう呼びかけるイベントを開催しました。

米国、中国、EU、日本などの経済大国を含む多くの国が、パリでの気候変動合意を促すべく、国としての削減目標を発表しました。しかし、いずれの国の計画でも重要な要素が欠けています。それは、各国が国境の外で引き起こしている排出への対策です。

農地が増えて、木々が減る

科学は、壊滅的な気候変動をさける唯一の方法は、2050年までに温室効果ガスを60%減らすことだといっています。残念ながら、現在各国から提出された削減目標では、そのゴールに到達することはできません。問題の一つとして、先進国が自らの消費パターンをグリーンにすることなく、排出量の多い活動を途上国に移転していることが挙げられます。例えば、1990年から2008年の間に、EUは排出量を公式に19.2%減らしました。しかし、欧州委員会の支援で行われた調査によると、EUは同期間に、世界で最大の森林減少の輸入国になっています。これは世界的な排出量の急増につながりました。なぜなら、農産物への需要が、アマゾンやインドネシア、そして次第にアフリカでも、農地や放牧地に転換するための大規模な熱帯雨林の伐採を引き起こしたからです。
森林を守り、うまく管理していくことで、気候変動問題の30%を解決できます。この事実を軽視することは、誰もが知っているけれど口に出さない重要な問題に気付かないふりをしていることになります。

もしEUが世界的な気候変動対策のリーダーでいたいならば、その域内での排出削減のみに関心を払っていてはいけません。むしろ、その生産によって直接的に気候変動をもたらす商品の大量消費を何とかする必要があります。

農産物への需要が世界的に拡大することがすべて悪いのではありません。供給国では、農業の拡大が雇用を生み出し、人々が貧困から抜け出す手助けになります。しかし、これらの国々の多くの政府が、気候を、そして自らの経済的利益を守るためにも、森林減少を減らす必要があることに気づき始めています。

別の方法を見つけよう

多くの途上国では、比較的少ない費用で、森林減少からの排出を減らすことができます。「気候変動対応型農業」として知られる持続可能な食料生産方法によって、農民は森林減少を減らしつつ、収量を増やすことができます。例えば、ブラジルでは2005年以来、大豆生産のために森林を新規に伐採せず、既に劣化した土地で栽培することを定めた「大豆モラトリアム」などを通して、アマゾンでの森林減少を減らし、ヨーロッパ全域分よりさらに多くの排出量を減らしました。このように、解決策は存在していますが、それを実施に移すには、強い政治的な意志と、適切な計画、ガバナンス、技術への投資が必要です。

各国は気候変動交渉を非難するのをやめ、ともに排出削減に取り組む時です。農業と森林減少について、生産者と消費者がそれぞれの責任に向き合わなくてはなりません。途上国政府はリーダーシップを示す必要がありますが、彼らだけで全ての対策を取ることはできません。もし途上国が持続可能な生産を望むドナー国から適切な政治的、技術的、資金的な支援を受けなければ、途上国内での排出量は多いままとどまるでしょう。

過去数年間に、いくつかの多国籍企業が、森林減少をともなわないサプライチェーンにコミットしています。EUや他の経済大国も、同じ取り組みを進めるべきです。そのためのとても便利な3つのステップを紹介しましょう。
1. 持続可能なサプライチェーンの基準を含む、「森林減少の輸入」をやめるための行動計画を発表することで、明確な政治的なシグナルを送ります。
2. 途上国に新しい農作業方法を提供し、森を伐採せず生産量をあげられるようにします。
3. 残っている森林の持続可能な管理に貢献します。森林を伐採しないことはよいことであり、長く手付かずに残すことはさらによいことです。これは熱帯雨林を維持するために資金を提供する、REDD+のようなメカニズムで達成することができます。

パリ会議に向けて、農産物の世界の主要な輸入国がコミットする必要があります。EUは主導的な役割を担える位置にいます。EUは世界最大の貿易国であり、木材業界でサプライチェーンを改善した経験が、サプライチェーンの管理が可能であることを示しています。
私たちはEUのリーダーが、森林減少の輸入から手を引くという明確なメッセージを持ってパリに集まることを、そしてこの問題がすべての関係国との有益な協力関係の下で解決されることを望みます。そのような取り組みは、私たち誰もが必要としている、パリでの野心的な気候変動合意に至るチャンスを拡大させるからです。

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