【気候変動:COP21特集ブログシリーズ(5)】
パリ協定の勝者は「森林」!

新年あけましておめでとうございます。昨年は「持続可能な開発目標(SDGs)」や「パリ協定」の採択など、世界のすべての国々が一丸となって地球環境を守っていくための枠組みができた、歴史的な1年でした。今年はそれらを実施に移す大事な年になります。CIジャパンでは、自然の恵みを将来の世代につなぐために、これからも持続可能な社会の実現を目指して取り組んでまいります。今年も多くの皆様といろいろな機会にご一緒できることを楽しみにしております。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年第1回目のブログでは、昨年から継続してお伝えしてきた【気候変動:COP21特集ブログシリーズ】の第5弾(最終回)として、CIの目から見たCOP21の成果をお伝えします。日本ではあまり報道されていませんが、自然を活用した緩和策の一つである「森林の減少と劣化に由来する排出の削減(REDD+)」は、パリ協定に独立した条文(第5条)として含まれました。これは、途上国にはREDD+の実施を通して、先進国にはその支援を通して、森林保全を通した気候変動対策の強化を求める、国際社会からの強いメッセージになっています。今回のブログでは、CIのREDD+専門家であるスティーブン・パンフィルによるパリ協定への評価と、今回のCOP決定を受けてREDD+のスケールアップのために何を行うべきかをお伝えします。

※以下のブログ記事は、CI本部の記事「A big winner in the Paris Agreement: Forests」を抄訳したものです。文:CASSANDRA KANE

パプアニューギニアの熱帯雨林。熱帯林は世界中の炭素の4分の1を貯留しています。
そのため、熱帯林の保全は、気候変動対策にとってとても重要なのです。(© Trond Larsen)

森林は、パリ協定で大きな勝利をおさめました。

パリ協定の前身である京都議定書では、森林減少を抑えることに対してインセンティブを付与する仕組みを作ることができませんでした。しかし、新しい合意には、REDD+と呼ばれる「自然を活用した気候変動対策」が明確に含まれています。

「森林の減少と劣化に由来する排出の削減」の短縮形と、森林の保全と持続可能な管理という追加的な特徴を表す「+」を合わせた「REDD+」は、コミュニティや地域、国が手付かずの森を守り、森林減少による炭素の排出を防ぐ資金的なインセンティブを提供します。熱帯林には、世界の炭素の4分の1が蓄えられています。そのため、熱帯林を切らずにおくことは世界の気温上昇を2度未満に抑えるために重要です。
COP前に、CIのREDD+に関する技術アドバイザーであるスティーブン・パンフィルは、合意文書にREDD+が明記されることは必須ではないと話していました。今回のCOP後のインタビューでは、彼は、最終合意にREDD+が含まれたことで、森林減少を止めるために必要な具体策を取ろうとしている国々に対して強いシグナルを送ることができると話しています。

質問:パリ協定におけるREDD+の位置づけはどのようなものでしょうか。

回答:私たちが期待していた以上に強いものです。なぜなら、最終合意の中にREDD+が明確に言及されたからです。REDD+は、単独の条文(第5条)として含まれています。CIはCOPが始まる時点では、新たな合意にREDD+や森林の役割が言及されれば素晴らしいが、そのこと自体が重要ではないと言っていました。なぜなら、REDD+に関する主要な決定はすでになされていたからです。

最終的には、明確に、気候変動の緩和における森林と生態系の役割が書き込まれました。パリで多くの交渉官が、森林を守り回復することが自国の排出削減努力において重要だという、自国の政策決定者に対する政治的なシグナルを求めたことは、とても印象的でした。
でも、協定に入るのはかなり難しいと思われました。なぜなら、いくつかの国がパリ協定でREDD+の新たな公式なメカニズムを規定するよう強く求めたからです。しかし、そのような提案は、多くの国に対して、新たな交渉、新たな官僚機構、そして合意済みの過去の決定のいくつかが振り出しに戻ること、そしてそのために、森林減少を抑え排出を減らす現場での対策が遅れることへの恐れを生み出しました。
最終的には、新たな公式なメカニズムを構築しようとの主張は取り下げられ、森林からの排出削減の重要さを再度言及する文言が残りました。このような経緯で、REDD+が強く言及されることになったのです。

質問:そのことは、パリ協定全体とのからみでどのような意味を持ちますか。

回答:パリ協定全体が、「各国が自主的に決める貢献(削減)」いう考え方に基づいて組み立てられています。米国などのいくつかの国では、森林やより広い土地利用セクターからの排出は国全体の排出の中で比較的小さな位置づけしか占めません。米国では、排出は圧倒的に化石燃料の燃焼に由来します。他の国々、特に途上国では、排出の多くは森林伐採を含む土地利用に関わる活動からきています。それらの国々が気候変動対策のプレッジを行う際には、当然ながら、森林セクターや他の土地利用に関する対策を考えることになります。土地利用セクターが排出量の多くを占める国々にとっては、REDD+の価値について言及されていることはとても重要なのです。

質問:私たちがCOP21の前に話したときに、「REDD+の方法論と一般的なアプローチが合意された今、先に進めるに当たって重要な課題はどのようにその支払いがなされるかです。」との話がありました。交渉はこの課題に対して答えを出せたのでしょうか。

回答:一部答えることができました。各国に対策を取るのをためらわせている大きな要因の一つに、森林減少を止めるための抜本的な改革にかかる費用への対価が実際に支払われるかへの懸念があります。予測可能で十分な量の資金が後々確保されていることが、途上国にとってきわめて重要なのです。

COPの初日に、ドイツ、ノルウェー、イギリス政府が、パリ合意が発効する2020年までの5年間に、森林減少を減らすことができる国々に対して上限50億ドルの支援を行うとの大きなプレッジを行いました。この3カ国は、2020年以降についてもシグナルを送ることを望み、年間10億ドル以上の規模でREDD+への支援を続ける用意があると発表しました。この発表は、もし途上国が森林減少を減らせば、それに対して実際に資金的な見返りが与えられることを示すためのものでした。
年間10億ドルの長期的な資金はすばらしいです。しかし、森林減少を止めるには十分ではありません。パリ協定の重要な内容の一つに、国々が協力して排出を減らすことができるというものがあります。これは、先進国が途上国で森林減少をおさえる活動を支援することによって、途上国での排出削減量のうちのいくらかを自国の排出削減に使うことができるというものです。このような合意は、現状を大きく超えてREDD+のための資金量をスケールアップするために欠かすことができません。

質問:パリ協定にREDD+が明確に含まれた今、何を今すぐ行うべきでしょうか。

回答:ほとんどの国が今も、森林減少を抑えるとともに、排出削減量を測れるようになるための能力を構築しようとしています。また、REDD+はすべての国で実施されてはじめて、本当に機能するということが広く認識されています。ブラジルのような国で森林減少を止めることによって、これまではあまり森林が減っていなかった隣国のガイアナやスリナムに、森林減少の要因が移行するといった状況を避けなければなりません。もしすべての国が森林減少に取り組む能力を持てば、REDD+は大きな成功を成し遂げることができます。
今すぐ、すべての場所で能力を高めることが必要です。そうすれば、すべての途上国でREDD+を実施でき、先進国は途上国がプレッジされた資金にアクセスするのを手伝うことができます。ドイツ、ノルウェー、イギリスは、途上国が森林減少をとめられた時用のご褒美を提供しますが、途上国が実際にご褒美を得られるようになるためには現場でまだまだ多くの仕事が必要なのです。

質問:CIは途上国をどのように支援していきますか。

回答:私たちは、森林減少を止める能力を構築するために、多くの国の政府と密に協働しています。政府職員へのトレーニングに加えて、REDD+のプロセスに参加できるようにするために、先住民グループを含む、政府の外にいる人々へのトレーニングも行っています。また、私たちは、森林減少からの排出削減量を実際に測ったり、REDD+が社会的・環境的な便益を生み出していることを確保したりするための技術的な作業を支援しています。
COPでは、政府だけが森林減少を止めるのではなく、民間セクターも重要な役割を果たすことについて、明確に認識されていたことは興味深いことでした。CIは、コーヒー、パーム油、その他の商品作物を熱帯地域から調達しているいくつかの大企業と、その調達が持続可能であり、追加的な森林減少をひきおこさない地域からきていることを確保するよう、協働しています。










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