<イベントレポート>シンポジウム「池上彰と考える気候変動と森林保全」に参加して(1)


 インターンの長谷山陽大です。
 1/27(水)、日経BP社主催の「池上彰と考える気候変動と森林保全」のシンポジウムが開催され、参加してきました。2015年12月に開催された、COP21で採択された『パリ協定』を受け、今後の国際社会や日本の取り組みについて、ジャーナリスト池上彰さんをナビゲーターに迎え、各セクターの専門家と共に、第一部「気候変動と日本の今後を考える」、それを受け、第二部「森林保全森林保全について考える」の二部編成のパネルディスカッションが行われました。そして今回、CIジャパン代表理事、日比保史がパネラーとして登壇しました!今回のブログでは、セミナーの様子とそこで感じたことを2回に分けてお伝えします。

 パネルディスカッションの前に、池上氏自身、COP21へ行かれ、続いてブラジルの森林を視察して来た様子について、深刻な違法森林伐採の現場等を、生の写真を用いて紹介し、取り締まりに向けて日本の人工衛星が役立つ可能性などを説明しました。私自身、森林伐採の現場写真は何回も見たことがありますが、一向に違法な森林伐採がなくならないことや、現地の人々の生活、お金目的の違法伐採について現場を見た人の話は信憑性があり、今回のシンポジウムでは再び深く考えさせられました。
 そんな中始まった第一部、「気候変動と日本の今後を考える」では、名古屋大学教授 高村ゆかり氏、JFEスチール・経団連安全環境委員会 手塚 宏之氏、WWFジャパン
山岸尚之氏、日経エコロジー 馬場未希氏、の気候変動問題に最前線で活躍する方々が登壇し、パリ協定についてと今後の日本や国際的な動向についてディスカッションが行われました。
パリ協定については、4氏とも好印象を抱いており、数値目標設定をトップダウン式に行った京都議定書に比べ、今回のパリ協定では、各国が協定に向けて自ら目標を決めるなどボトムアップ式の体制が生まれたなど評価しました。これからの長期目標に向けた入り口が完成したと手塚氏は語りました。
 池上氏はNGOには批判的な立場を期待していたようですが、WWFの山岸氏も今回の協定には好印象を抱いたようであり、パリでオランド大統領が用いた、「気候正義(Climate justice)」のように、パリ協定では、社会的弱者や途上国に配慮した形で、世界が気候変動の問題へと取り組む方向性を決定付けたと語りました。
 これからの日本の動向について、技術革新の重要性を高村氏が解き、それらの面において日本の強みを生かしていくことを手塚氏は強調しました。
 池上氏は、現在の原油安などを受け、せっかく決まったパリ協定の勢いに歯止めがかかってしまうのではないかと懸念しましたが、手塚氏は、現在の原油安もうまく生かした手段も取れるのではないかと発言しました。山岸氏は、石炭火力発電所の増設などを懸念し、カーボンプライシング(炭素価格制度)の有効性などについて触れられましたが、他のパネリストからは、制度の導入に関しては、国際的な動向と、その土地や国の政策に合った制度の両方を考えた政策の必要性などが唱えられました。
 
 今後について、手塚氏は、日本の省エネ技術や取り組みについて、非常に高水準であると評価し、途上国に向けても導入を考えることから、日本としての役割を担えるとしました。反対に、山岸氏は、これから日本が環境先進国としての立場を作るには、現在の低炭素という基準から脱し、脱炭素を目指す努力をしなければならないとし、産業業界とNGOとの若干の意見の相違が見られました。
 私自身、同じNGOの立場から、脱炭素社会を目指すという言葉には大変共感し、現在の日本の水準でも不十分と感じることが多々あります。しかし、実際の産業として、日本の現状を支える立場からの意見は現実性も感じ、難しい問題であると感じました。そのような中、高村氏が取り組みを徐々にでも進めてくように求めました。それを、池上氏が「筋トレ」のようにと表現し、負荷を徐々にでもかけていき、その努力をつなげていくことで、さらに強いものが生まれるのではないかという印象的な言葉がありました。
 劇的な変化は常に求められますが、各セクターでまずやれることを実施していくことから、徐々にビルドアップし、それを加速していくことが必要であり、今回のパリ協定がそのきっかけとなることを私は願います。

コメント

人気の投稿