森から大都市へ 川がつなぐ物語
インドネシアの首都ジャカルタから車で2時間。渋滞とスモッグはどこへやら。ここグヌングデ・パングランゴ国立公園は、ジャカルタとはまるで別世界です。 しかしこの国立公園の森は、都市と切っても切り離せない関係にあります。なぜならジャワ島最大級の水源地であり、ここから流れ出る60以上の川が、ジャカ ルタをはじめとした地域に水を届けているからです。
国立公園の周りに住む人にとって、国立公園の森からの流れ出る川は、毎日の生活の一部です。飲み水を始めとして、体を清めるため、釣りをするため、そして緑輝く水田のためにこれらの川の水は欠かせません。
© Jessica Scranton |
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先日、CIから写真の依頼を受けた私は、ジャワ島へ飛び、川の上流に位置するグヌングデ・パングランゴ国立公園のコミュニティーと水との密接で複雑な関係、そして下流への旅を記録してきました。
全ての始まりは森
CIはグヌングデ・パングランゴ国立公園で1998年から取り組みを行っています。まず取り組んだのは、ボドゴール自然保護教育センターでの環境保 全教育でした。当時、国立公園とその緩衝地帯において、地元の人や企業に対する使用を規制する法律はほとんどありませんでした。また、辛うじて存在していた法律も、1998年の経済危機の余波を受け、しばしば破られていました。
違法な農地開拓と木材伐採による森林の消失は、土壌流出、地滑り、そして地下水面の低下を引き起こしました。国立公園の周辺に、森林再生を必要とする荒廃 地が1万ヘクタールにも拡がり、水へのアクセスがますます難しくなり、そしてジャワ島が誇る深い熱帯雨林と美しい野生動物が失われていきました。そしてつ いに2003年、州の林業省がグヌングデ・パングランゴ国立公園のエリアを拡大することを決めました。
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2008年、CIは、地元の団体や国立公園局と協力し、「グリーンウォールプロジェクト」を開始しました。この森林再生プロジェクトの目標は水源地の水 を守りつつ、国立公園の周りの破壊された森林を再生することです。プロジェクトは、土壌の流出を防ぎ、二酸化炭素吸収を通じて気候変動を緩和し、そして地 元コミュニティに便益を届けるため、120,000以上の自生種の木の苗を植えてきました。
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少しづつ、森はよみがえり、新しい木の命は地下水面の安定に貢献しています。地元の人が水源地の清潔な水に直接アクセスできるよう、パイプを設置するという取り組みも始っています。
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パイプが設置される前、地元の人々は、清潔な水を得るため、急な谷を下り、川で水を汲み、そして重い水を運びながら谷を上がっていかなくてはなりませんでした。谷の上部に暮らす人々にとっては、毎日5~6時間の重労働でした。今は、細くて白いパイプが水を何キロも離れた水源地から村の給水所にある集水タンクまで運んでくれます。その水でお米を炊いたり、野菜を洗ったり、シャワーを浴びたり、お祈りのためのお清めに使用したり、そして水田を満たすためにも使われています。パイプのおかげで地元の人は健康状態が良くなり、水を汲みに行く代わりに新しいビジネスを始める時間と自由を得ました。
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下流での物語
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国立公園から出て、わずか2キロ弱。上流ではきれいだった川が、私の目の前で変わっていきました。ゴミ収集が整っていないことや使い捨てのプラスチックの使用が増えたことにより、ゴミは、ただ川に直接に捨てられています。
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幸いなことにインドネシアでは環境問題に対する意識が高まってきています。これまでに、プラスチック使用量削減、ゴミ処理改善、水源地管理改善、上流域のコミュニティの支援などの活動がはじまっています。また、CIは、下流に流れていく水が汚染されない農業手法の推進のため、上流域のコミュニティーと地元農業機関を結びつけることもしています。
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インドネシアの都市住民にとって、ボトル詰めの飲料水は、生活に必須です。インドネシア政府の許可を受け、国立公園の水源で取水し、ジャカルタ、ボゴール、スカブミといった都市に販売している企業が複数社あります。これらの企業は、ビジネスを成り立たせている森の保全に貢献しなければなりません。
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CIは、水を使い続けるためには、森林の再生と残された森の保全が重要であることを、地元のリーダーから子供たちまで、全ての人に伝える取り組みに力を入れています。車に環境教育の道具を積んで学校を訪問する「移動式教育ユニット」で、これまでに、3州に住む50,000人以上の生徒に環境教育を実施しました。
直面する問題は大きく、簡単に解決できるものではありません。しかし、安心して水を使い続けるには森林を守ることが必須であるということに対して、人々は、少しずつ気付き始めています。
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グヌングデ・パングランゴ国立公園近くで撮影中のジェシカ・スクラントン |
by ジェシカ スクラントン(フリーランス写真家)
翻訳協力:東史華
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