投稿

12月, 2016の投稿を表示しています

地球の生命を守る 世界は遅延 ~愛知目標への進捗状況について~

イメージ
2010年、世界中の国が、絶滅危機を回避して地球上の生命の多様性を守る20の野心的な目標(愛知目標)に合意しました。それから6年経った今週、生物多様性条約の会議のため、交渉官がメキシコのカンクンに集まっています。目標の達成にどれだけ近づいたのでしょうか?

愛知目標は、陸域の17%および海域の10%を保護するといった具体的な目標から、生物多様性の価値に対する認識を世界中で高めるといったやや漠然とした目標までありますが、2020年を達成の期限としています。期限までに残された時間は4年。コンサベーション・インターナショナルは、4つの国際的な自然保護団体(バードライフ・インターナショナル、英国王立鳥類保護協会、コンサベーション・インターナショナル、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー、WWF)と共に、各国の計画が目標の達成に十分かどうか、実際の進捗度合いはどうかについて、20の愛知目標それぞれについて評価しました。

結果としては、多くの目標において達成に向けた進捗が見られるが、ほとんどの国で進捗は不十分であり、全体としては芳しくない、といわざるを得ません。生物多様性を守るためのリソースと政策を強化して野心を高めない限り、愛知目標は達成できません。このことは、長期的にみた人類の安定した生活をどんどん脅かしていることを意味しています。

順調な取り組みは?

締約国が条約事務局に提出することが義務付けられている国別報告書から、進捗状況を評価しました。この報告書を提出している国のうち、愛知目標の達成のために順調な進捗を見せているのはわずか5%に留まりました。手続きを進めることで達成できる目標については、多くの国で順調な取り組みが認められます。生物多様性国家戦略を愛知目標に合わせて改訂するという愛知目標17がその例です。

愛知目標11は、保護地域の面積を陸域の17%および海域の10%に拡大することを掲げています。保護地域の拡大は、各国の戦略に長年位置づけられているので、この目標の進捗状況が高めであることは理解できます。データは不十分ですが、国連環境計画(UNEP)によると、2014年現在、陸域の15.4%と海域の3.4%が保護されています。

遅れが見られる取り組みは?

約75%の国で、前進はしてはいますが、このままのペースでは2020年までに目標の達成が期待できません。さらに2…

「自然資本」主義的まちづくり 下川町訪問記③

イメージ
北海道下川町訪問記の第3弾は最終回。前回の続きで、カーボンニュートラルな集落である一の橋バイオビレッジが、エネルギー面で持続可能なだけでなく、「人的資本」への投資にもなっていることを紹介します。また、バイオマスボイラーの燃料である木質チップ工場も紹介し、最後は町長とのダイアログから感じたことを共有したいと思います。


「寒い冬」も自然資本?

第1回で、「寒い冬」が下川町の自然資本アプローチを支えるの重要な条件と書きましたが、日本の総CO2排出量のうち、実は15%は家庭でのエネルギー消費に起因そして、その4分の1が暖房・給湯の熱需要なんです。ということは、この暖房・給湯にかかるエネルギーを再生可能エネルギー(つまりバイオマスボイラーなど!)で供給できれば、家庭からのCO2の排出量をがっつり削減出来るわけです。寒い地域ほど暖房・給湯に必要なエネルギーが多いので、逆にCO2の排出削減ポテンシャルは高いわけです。日本に比べて、ヨーロッパの方が削減ポテンシャルが高い物理的な理由はここら辺にもあります。バイオマスボイラーの導入は、寒い気候と豊かな森林資源という下川町が持つふたつの豊かな自然資本を生かす素晴らしい取り組みなわけです。

バイオビレッジは、散らばっていた集落を集めることで、熱エネルギーの地域供給を実現するだけでなく、コミュニティの再生にも繋げています。バイオビレッジでは、地域おこし隊(地域再生のための人材派遣事業)を導入し、コミュニティ食堂や障害者施設も併設させることで、高齢化、地域再生、ダイバーシティにも貢献しているわけです。また、コミュニティの集いの場、情報交換の場としても機能する郵便局には、各戸から屋根付き渡り廊下でアプローチ出来るようになっていて、豪雪時でもお年寄りでも集い易いように工夫されています!

コミュニティ再生、さらにグリーン雇用も創出

さらにさらに、バイオビレッジでは、高齢者だけのコミュニティにならないように、新規雇用を生み出す投資もしていて、その目的で椎茸栽培ハウスが併設されています。ここでは、椎茸を栽培する菌床に原木ではなく、木材の製材屑を使っています。これは、製材屑の有効利用になるだけでなく、より質や生産量を安定的に管理できるそうです。徹底的に「しゃぶり尽くす」精神がここでも発揮されています。


<写真上>椎茸工場の中。おが屑を利用した菌床がずらりと…

「自然資本」主義的まちづくり 下川町訪問記②

イメージ
北海道下川町訪問記の第2弾は、下川町長が「森をしゃぶり尽くす」と表現された、森の恵みを無駄なく徹底的に使い切る、下川町流「カスケード利用」のご紹介です。

<写真上>谷一之下川町長。ツアー参加者をお迎えいただきました。 カスケード利用で無駄なく製材下川町では、林業組合で持続可能な森林経営や木材の加工・管理の仕組みである森林管理協議会(FSC)(注1)緑の認証機構(SGEC)(注2)の第三者認証を取得し、持続可能な森林経営を積極的に進めています。主伐材から間伐材、中小径木まで無駄なく加工・製品化できる体制を民間と連携しつつ確立し、木材資源のカスケード利用を確立しています。
(注1)FSCジャパン公式ホームページはこちら 👉https://jp.fsc.org/jp-jp/4-fsc/4-2-fm/2226920869fm3546935388265193205720171/-07 (注2)SGEC公式ホームページはこちら 👉http://www.sgec-eco.org/index.php?←ちなみに僕はSGECの評議員を務めています
収益力があり民間で担えるところ(集成材加工など)は民間に任せ、行政では林業組合を支援することで中小径木の製品化(丸木材、木炭、土壌改良剤、融雪剤など)を行っています。丸木材は確か建材や建築外構でのニーズ、木炭は効率的に燃焼する良質な木炭としてBBQや業務用に需要があるそうです。土壌改良剤は、化学薬品を使わないオーガニックであり、土壌にもより良い影響をもたらすとか。融雪剤は、雪国特有のニーズですが、散布してもやはりオーガニックなので環境汚染の心配が無いと。ただし、価格面、融雪機能の面(つまりの生態系サービスの適正な貨幣価値化)でまだ改善の余地があるとのことでした。


<写真下>下処理された中小径木の間伐材。民間では収益が上がらないそうです <写真上>間伐材から製材された丸木材。外構(庭)などに使われることが多いそうです <写真下>木炭も作ってます <写真下>土壌改良材は、オーガニック
非木材林産物(NTFP)としてのエッセンシャルオイル 興味深かったのは、組合の加工工場の一画で、間伐材の樹から精油(エッセンシャルオイル)を精製し、アロマオイルやアロマ枕(←Want!)の商品化を行なっていること。ここも補助金を利用しつつ組合が運営していたものを2012年に

「自然資本」主義的まちづくり 下川町訪問記①

イメージ
「環境未来都市『北海道下川町』で持続可能な調達を探るビジネスマッチングツアー」


少し前になってしまいますが、旧知の日経エコロジー生物多様性プロデューサーの藤田香さんにお声掛け頂き、10月3-4日の二日間「環境未来都市『北海道下川町』で持続可能な調達を探るビジネスマッチングツアー」に参加してきました。

北海道の下川町は人口3400人、鉄道も高速道路も通らない、一方で町の9割が森林という、一見厳しい条件にある過疎の町のひとつと思いがちな町です。しかし、環境未来都市、バイオマスタウン、環境モデル都市、次世代エネルギーパークなど種々の国の補助金制度を活用しながら、積極的に文字通り「自然資本に立脚した町づくり」を推進し、CIで言う所のデモンストレーション(実証)をし続けている先進自治体です。そんなわけで、前々から一度訪れたいと思ってたのですが、ついに行く機会が得られました。

行った結果は、、、期待以上でした!地域おこしというレベルを遥かに凌駕する、未来の持続可能な日本を地方から支える、まさに先進的な自然資本タウンでした!
<写真上>下川町の中心街。どこかアメリカ西部の開拓者の街のような雰囲気が流れてたのが印象的。
旭川空港からバスで北へ2時間ほど走ると下川町です。東京都23区とほぼ同じ広さがありながら人口は3400人(東京都23区は936万人ほどなので、人口密度はざっくり1/3000!)で、町の約9割が森林という町です。気候は厳しく長い冬が特徴で気温マイナス30度(!)にも達するとのことです。僕たちが訪れた10月頭も、都内はまだまだ暑い日が続いていましたが、下川町は最高気温が10度以下、最低気温は0度前後。風も強く、東京から訪れた者には「真冬並み」の寒さでした。

しかし、この豊かな森林と長く寒い冬が、環境先進都市の可能性を生み出しているのもまた事実です。

下川町の森林
ご存知の通り、日本の森林の多くは、ごく一部の手付かずの原生林を除き、植林された人工林あるいは何らかの形で人の手が入った二次林です。

下川町も、明治時代から林業が栄えたこともあり(と鉱業。最盛期には今の4倍以上の人口規模だったそうです。鉱山の炭坑資材として木材が使われ、林業は発展したそうです)、人工林や二次林が大半を占めています。一方で、森林の8割以上が国有林(全国では30%)なのも特徴ですが、戦後徐々に国からの払い下げを受け…

トークイベント「パヴァン・スクデフ氏と語ろう~自然と調和する世界の作り方~」

イメージ
11月14日に東京大学で行われたトークイベント「パヴァン・スクデフ氏と語ろう~自然と調和する世界の作り方~」をレポートします。
2010年頃から良く聞くようになった「生物多様性」という言葉ですが、最近では、生物多様性を含む、生態系や生態系サービスそのものの経済的な価値を算出し、それらを正しく評価することで、現代社会に生物多様性の価値を主流化させるための「自然資本」という考え方が広まってきています。ビジネスと自然の関係に関する研究者として、第一線で活躍されている、パヴァン・スクデフ氏の来日の機会を利用して、今後の世の中を作っていく、若者、学生と一緒に、持続可能な社会をどのように作って行くことができるか?ともに考える機会を持とうという趣旨で企画されたイベントです。

 パヴァン・スクデフ氏は、生物多様性と経済社会との関係を明らかにするための研究レポート「生態系と生物多様性の経済学:The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB)」の研究リーダーとして世界的プロジェクトを指揮しました。このような、包括的なグリーン経済への移行を促進させることに貢献したことが評価され今年“環境業界のノーベル賞”ともいえる、地球環境国際賞「ブループラネット賞」を受賞し、来日しました。国連環境計画(UNEP)親善大使、GIST(Green Indian States Trust)アドバイザリー創設者・CEOなど、多くの肩書きを持つスクデフ氏ですが、コンサベーション・インターナショナル(CI)の理事でもあります。
今回のイベントでは、パヴァン・スクデフ氏のほか、IUCN-Jの道家哲平氏、メディアの代表としてThink The Earthの上田壮一氏、そして、ビジネスからの視点をお話頂くためにKPMGあずさサステナビリティ株式会社の斉藤和彦氏、学生代表として、TED-UTokyoから奥部諒氏、鬼沢綾氏にご登壇頂きました。
<前半ウォームアップセッション> 1.「生物多様性、自然資本とは何か?」CIジャパン科学応用マネージャー名取洋司