アフリカの農家に、ビッグデータへのアクセスを。


タンザニアで作物を収穫する女性。Vital Signsが開発計画のために生態系や社会経済的データを収集しているひとつの国(© Benjamin Drummond)

アフリカではモバイルテクノロジー利用の急増に伴って、人々のコミュニケーションが変化しているだけでなく、食糧生産方法までも変化しています。

FOREIGN AFFAIRS誌の特別版に、CIのチーフサイエンティスト、サンディー・アンデルマンと創設者のピーター・セリグマンは、生態系データへのアクセスを向上させることは、農家が気候変動に適応するのを助けると書きました。ビックデータの収集を核とするCIの「Vital Signs」というプログラムは、すでにアフリカで国家レベルの開発政策に協力しています。しかし、農家の一人ひとりにまでその情報が行き渡るのは、かなり困難な挑戦です。

CIのエディトリアルチームは、アフリカの農家の生活に革命を起こすための努力について、サンディー・アンデルマンにインタビューしました。

Q:Vital Signsがデータを収集するプロセスについて教えてください。離れた地で収集されたデータはどのように解釈され、使えるものになるのですか?

A:私たちが現在活動を行っている各国には研究者のチームが配置されています。タンザニア、ガーナ、ケニア、ルワンダ、そしてウガンダです。そして、農家の人々に栄養、水や薪の入手方法から農法に至るまであらゆることに関して、体系化された質問を用意し、各家庭の調査を行っています。

ガーナで料理をする女性。データ収集活動の一環として、Vital Signsの研究者たちはどのような生活過程で自然資源が使われているのか明らかにするために家庭調査を行っている (© Benjamin Drummond)

ガーナのヴォルタ川の土手で洗濯をする女性。アフリカのほとんどの場所では、日常生活のに必要な真水に得るために、女性や少女はかなりの距離を歩かなければならない( (© Benjamin Drummond)

その他、土地自体の測量を行います。土壌のサンプルは、組成の分析や有機炭素含有量を測定するために、ナイロビの国際アグロフォレストリー研究センターへ送られます。また、その土地が保有する地上の炭素含有量算出のために、樹木の直径や高さ、林冠を測定します。さらには、森林から農場などへの土地利用の変化を記録するために、人工衛星からの画像を用いた計測も行います。

私たち研究者は、タブレットを用いることで、これらの情報をクラウド化した管理・分析システムにアップロードします。このような生の情報は、決定権を持つ人々、つまり、多くの場合は政府ですが、市民組織や農業協同組合などのためにも、進捗状況を追跡できるように、グラフや地図といった分かりやすい情報に変換されます。

Vital Signの研究者がタンザニアで土壌サンプルを量る(© Benjamin Drummond)

Q:政策担当者らに情報を分かりやすく伝えるために、どのような工夫をしていますか?

A:私たちは、求められている情報やその提示方法をよく理解するために、様々な国でステークホルダーと近い距離で活動しています。

初期の頃は、すべてのデータを含んだダッシュボードを作ろうとしていましたが、そのようなものは誰も求めていないということが分かりました。というのは、1か所に集まる情報が多すぎるのです。政府の大臣やビジネスのリーダーの多くは生のデータへの関心があまりありません。彼らは、科学的信頼性は求めていますが、何が起こっているか全体的な把握ができれば良いのです。

また、私たちが活動を行っているアフリカの国々のほとんどでは、携帯電話が主な、もしくは、唯一のインターネットへのアクセス方法となります。私が現在活動しているマダガスカルの首都アンタナナリボでは、皆が携帯電話を持っています。また、携帯電話によるデータアクセスは市内ならどこにいてもかなり良いということも分かりました。インターネットのアクセスは早いと言えます。したがって、携帯電話が情報収集のために信頼できるツールであることは明らかです。そうなると、その小さいスクリーンでダッシュボード全体を見ようとすると分かりにくくなってしまいます。


植生のある土地で樹木の直径を計測するウガンダのVital Signs研究者(© Benjamin Drummond)

政策担当者から注目を浴びているひとつの視覚的なアプローチは、地図をベースにした新しいツールである「Resilience Atlas」です。そこでは、ユーザー自身が興味のある情報を、その種類の範囲内のデータで調べることができます。たとえば、郊外での生活や生産システム、生態系などです。そうすることで、そこで起きていることを調査し、とられるべき対策を見つけ出すことができるのです。

もちろん、実際の生態系の計測データからトップレベルの分析過程に至るまで、すべてのデータにアクセスしたい科学者たちもいます。そのため、インターネットへのアクセスが可能な人は誰でも自由に、一連の情報を見ることができるようにしました。ただし、もちろん個人的な情報は載せていません。

ガーナ、サワンのマーケット。アフリカの農家の暮らしは、土地の生産性を保つために、周囲の健全な生態系に依存している(© Benjamin Drummond)

Q:アフリカでの農業とテクノロジーに焦点を当てたFOREIGN AFFAIRS誌の特別版において、アフリカの農家たちが携帯電話を用いて、生態系に関する重要なデータにアクセスすることを可能にするシステム構築の重要性について話されていました。しかしまだその段階に至っていません。これをどのように実現していこうと考えていますか?

A:Vital Signsは現在、農業協同組合や農業相談員、そして政策立案者など、個々の農家を支援するすべての人々へ情報を提供しています。また、私たちは農家が生産性を高めるために必要な情報を手に入れるための重要なパートナーシップ構築にも努めています。

例えば、アメリカ合衆国農務省は、Vital Signの情報を使って、土壌や気候に関するデータを統合、分析するアプリケーションを開発しています。これによって、農家は携帯電話を使って、小さな土地を最大限生産的に、かつ持続可能に使える5つの方法について情報を得ることができます。このアプリケーションは、何をすればよいのかという指示は出しません。ただ、よりあらゆる情報に基づいた決定を可能にしてくれるのです。

さらに、このアプリケーションは国内やアフリカだけでなく他の場所、例えばアメリカにいる同じような状況で農家を営む者同士を、メッセージやソーシャルメディアを通じてつなげることを可能にします。なので、農家は同じような状況に立ち向かっている他の人々と知識を共有するために、地域のコミュニティを超えたネットワークを拡大することができます。

アメリカ合衆国農務省はこのアプリケーションを開発してはいるものの、いくつかの試験的な地域からのデータしか持っていません。一方、私たちはより広範囲なデータを持っています。そのため、このパートナーシップを通じて、地理的範囲を拡大するとともに、個々の農家とつながることも可能になってくるのです。

ジャガイモ畑で働くウガンダの農家。携帯電話を用いて小規模農家と生態系のデータを共有することによって、Vital Signsは、農家が最も生産性を高く、持続可能に土地利用ができる方法についての情報提供を目指している。(© Benjamin Drummond)

Q:今後数年間で、この活動はどのように発展していくと考えていますか?

A:開発計画のように、背景にある条件などを評価するためにデータを使うことへの関心がうかがえます。つまり、最も効果のある介入策を見定めたり、自然への想定外の影響を最小限にとどめるためにもっとも効率的な地域開発を優先することができたり、それらの進行状況を追跡することができるようなデータの使い方です。

マダガスカルで、私は3日間に及ぶミーティングに参加し、大統領官邸や様々な政府省庁、そして世界銀行や他の支援者に至るまで多くの人々とVital Signsについて話し合いました。マダガスカル政府は良質のデータを必要としています。たとえば、最新の国勢調査が35年~40年前のものになります。これは例えて言うなら、燃料計なしの車を運転するようなものです。なので、皆から「Vital Signsはまさに私たちが必要としているものだ」という反応を得るのです。

タンザニアでの研究者トレーニングセッションの一部で使われたGPS装置。研究者たちはクラウドを活用した管理・分析システムにデータをアップロードする。データは、生の情報が理解しやすいよう、グラフや地図に変換される(© Benjamin Drummond)

もうひとつのわくわくすることは、テクノロジーが急速に変化を遂げているということです。たとえば、ドローンを使えば、バイオマスや地上の炭素貯蓄量の決め手となる植生を測定することができます。3人の技術者が地上で3時間かかって集められる情報量を、ドローンはたったの5分で集めることができます。また、私たちは30㎝四方ほどの細かいエリアでさえも見ることができるような高画質の遠隔情報収集を使い始めています。これらの組み合わせによって、いつの日かVital Signを非常に費用効果が高く、地球全体を監視することができるレベルまで拡大することを夢みています。

私は他の種類のモニタリングへの拡大も検討しています。ここマダガスカルでは、人々はローズウッドの違法栽培を監視する方法を求めています。私たちは、すでに国全体の高画質の人工衛星画像を入手することができます。政府やNGOはこの画像を使うことで、たった少しでさえ木が切り出された場所を特定し、リアルタイムの監視システムを導入するためのドローンを送り込むことができます。その土地で何が起こっているのか知る方法、それがカリフォルニアか、はては地球の裏側のマダガスカルやアマゾンにある農園であろうと、技術革新は毎月のペースで進んでいます。そして、これは大変わくわくするようなことでもあるのです。

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【Vital Signsとは…?】
Vital Signsは、人にも自然にも持続可能な農業を発展させていくために求められている優れたデータの収集、モニタリング、データの分析・提供提供しているプログラムです。特に人口増加に伴って食料生産の増加も予想される中、生態系への影響も大きい農業を持続可能にしていくことは重要です。アフリカで始まったこのプログラムは、地域や国のレベルで科学者や市民社会、政府、そして民間セクターによる環境のモニタリングをできるようにすることを大きなゴールのひとつとしています。


※本ブログ記事は2016年2月16日に投稿されたCI本部のブログ記事を和訳したものです。
"To help African farmers, making big data fit in their pockets" by MOLLY BERGEN


翻訳協力:中島美紗子
編集:CIジャパン

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