GEF-Satoyamaプロジェクト 「マダガスカルおよびインド洋諸島」 訪問記(前半)

科学応用マネージャーの名取洋司です。CIジャパンが2年前より、生物多様性のための国際基金である地球環境ファシリティ(Global Envirounmental Facility:GEF)からの資金を元に主導して進めている、「GEF-Satoyamaプロジェクト」では、世界10か国で、10件のプロジェクトを支援しています。
今回は、10件のうち4件のプロジェクトがある「マダガスカルおよびインド洋諸島」生物多様性ホットスポットを訪問した話しをしようと思います。
CIジャパンのスタッフの出張には、こんなものもあるんですよ。

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今回の出張の目的は、現地から届く四半期報告書にある進捗状況を現地で直接確認すること、そして、報告書に無い課題や成果について把握し、適切な対応について協議することです。今回は、私に加え、プロジェクト・オペレーションズ・マネージャーの小笠原が途中モーリシャスまで同行しました。さらに、GEF資金の「実施機関」として本プロジェクトの円滑な実施を支援しながら、CIジャパンの執行機関としてのパフォーマンスを監督する立場である、CI本部から3名がマダガスカルからセイシェルまで同行しました。

出張のスケジュールは下記の通りです。2週間半で4か国を回りました。支援しているプロジェクトの内容も含めながら、見てきたことや写真を中心にお伝えします。

◇◇◇スケジュール◇◇◇

6月13日 成田発。アブダビ、セイシェル経由でマダガスカルへ
6月14日 11:50 アンタナナリボ着
      16:00 マダガスカル環境省にてGEF Operational Focal Pointと会議
6月15日 7:00 国内線にてMaroantsetraへ移動
       午後 Wildlife Conservation Society (WCS)と会議
6月16日 6:00 フィールド視察
6月17日 午前 WCSにて会議/ユースとの活動を視察
      午後 ノージーマンガべ保護区を視察
6月18日 17:50 国内線にてアンタナナリボへ移動
6月19日 9:00 ホテルにてWCSカントリーディレクターと打ち合わせ
      11:00 JICAマダガスカル事務所にて打ち合わせ
      12:30 CIマダガスカル訪問
      16:50 モーリシャスに移動(19:35モーリシャス着)
6月20日 午前 Environmental Conservation and Protection Organization (EPCO)と会議
      午後 フィールド視察
6月21日 Aigrette島自然保護区視察
      夕刻 ステークホルダーとの会議に参加
6月22日 プロジェクトサイトを海から視察
      16:30 セイシェルに移動(19:05 セイシェル着)
6月23日 9:00 セイシェル環境・気候変動省にて会議
      午後 Green Islands Foundation (GIF)にて会議
6月24日 6:00 市場にて魚のモニタリングを視察
       他の水揚げ場兼市場を視察
      午後 GIFにて会議
6月25日 16:14 ナイロビ経由でコモロ・モロニに移動(23:35モロニ着)
6月26日 11:00 国内線にてアンジョアン島に移動(12:00着)
6月27日 午前 Dahariにて会議
      午後 フィールド視察
6月28日 午前 Dahariにて会議
6月29日 アンジョアン島発、モロニに移動
      コネクション便に間に合わず、予定変更。モロニ泊
6月30日 モロニ発。アディスアベバ、ドバイ経由で帰国(7月1日着)
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◇◇◇マダガスカル◇◇◇

最初はマダガスカル。アフリカ大陸の東にある大きな島で、キツネザル、カメレオン、バオバオの木で有名な国です。日本からは、アブダビとセイシェルで2回乗り継ぎ。ちょうど24時間くらいの旅だったと思います。ここでは、Wildlife Conservation Societyが実施するマキラ自然公園の緩衝地域(バッファーエリア)の持続可能な管理のため、森林の再生や農業生産向上、アグロフォレストリー普及などを、ユースの人材育成と合わせて行うプロジェクトを支援しています。マキラは、キツネザルの生息密度が世界一で、絶滅の危機に瀕する種もたくさん生息しています。

6月14日、首都アンタナナリボに着くと、ホテルで着替えだけした後、CIマダガスカルのスタッフとCI本部の地球環境基金(GEF)実施機関のスタッフ、本プロジェクトの現地パートナーであるWildlife Conservation Society (WCS)のスタッフと合流し、マダガスカル環境省を表敬訪問。プロジェクトの進捗を報告しました。長い6月14日はこれで終わり。

翌日は、早朝の国内線に乗り、マダガスカル北東部にあるマキラ自然公園最寄りのマロアンセトラという街に移動。ここがWCSのプロジェクトの拠点です。 オフィスでプロジェクトの進捗の確認と会計記録の確認をして、この日は終わり。翌日の備えます。

6月16日。朝6時に宿を出て、モーターボートに乗って約3時間。WCSが農業支援やアグロフォレストリー展開を実施しているアンビナテロという村に着きました。そこから徒歩でアンバラマホゴという村に移動しながらプロジェクトの活動を視察します。稲作地帯で、生産向上のための支援をしています。生産向上といっても、機械化を進めたり、農薬や化学肥料を使ったりということではなく、苗の植え方や収穫方法などを改善する指導をするものです。それだけで生産量が倍増するのだとか。農地を拡大させずに収穫量を増やし、増加する人口を支え、将来の生計安定のための投資も可能になります。田園風景は、懐かしい日本の田舎にそっくりです。


伝統的なコメの収穫方法は、この写真のように、実がなっている稲穂の上を手で摘み取るのだそうで、鎌を使った収穫は進化形とのこと。
 
アグロフォレストリーでは換金作物であるスパイスのクローブの栽培が人気です。バニラの栽培が盛んなところなのですが(日本でもマダガスカルのバニラ入りプリンなどが有名ですね)、収穫の時期がコメの収穫と重なってしまうことと、高価な作物なので泥棒対策が大変なこと、流通に絡む業者もリスキーなところがあるとのことで、最近は、コメの収穫期と重ならず、手間も比較的簡単なクローブが人気なのだとか。WCSのプロジェクトでは、希望する農家に苗木を提供しています。このプロジェクトの他にも取り組みがあり、かなりの面積がクローブ園になっています。
クローブの花芽

坂にある丸っぽい樹形の木はすべてクローブ
水田とクローブが作り出す景観
 
ところでこの地域、今年3月のサイクロンで大きな被害を受けました。これは学校ですが、サイクロンが起こした洪水が2階まで達し、教科書やノートが紙の塊になってしまい、机・椅子がなくなり、教室には砂が堆積していました。学校にこれなくなってしまった子供も多くいるそうです。そのような状況下でも、近くの「商店街」には活気がありましたし、支援を待つのではなく、自ら復興するのだという雰囲気を感じました。一日も早く元通り以上になってほしいです。CIからも5000ドルの寄付をしています。
現在の学校の様子

3月のサイクロンは、1階を完全に水没させました。見えているのは2階(WCS提供)


教科書とノートが紙の山となって教室の片隅に

 
プロジェクトの進捗を確認し、サイクロンの影響を視察した後、ボートでマロアンセトラに戻りました。日没直後に到着。
 
マキラを去る前に、動物たちを紹介しましょう。ノージーマンガベという自然地域があり、ガイドさんの助けを借りながら見つけた生き物です。
逆さまになってカモフラージュしているリーフテールヤモリ
絶滅が危惧されるシロクロエリマキキツネザル

このカエルには毒があると

世界最小のカメレオン
翌日(6/18)、マダガスカル航空でアンタナナリボに戻りました。マダガスカル航空の運行は不安定で有名だったのですが、今回はオンタイムで、ちょっと異常でした!
 
6月19日には、朝一でWCSのカントリーディレクターと打ち合わせをした後、JICAマダガスカル事務所で会議をし、CIマダガスカルにちょっとだけ顔をだしてから、モーリシャスに移動すべく、空港に向かいました。モーリシャスには、夜に到着。
 
 
◇◇◇モーリシャス◇◇◇
 
モーリシャスは、マダガスカルの東にある小さな島国で、マリンリゾートが有名です。ロブスターやタコ漁も盛んで、日本にも輸出しています。ここのプロジェクトは、フランス統治時代に行われていた半自然のバラショアと呼ばれる養殖地(湾を石積の壁で囲うことで幼魚を大きな魚から守りながら大きくする養殖)を再生させて養殖漁業を活性化させた上、環境教育やエコツーリズムにも活かそうというものです。モーリシャスに数十あるバラショアの多くは放置され、ゴミ捨て場になっているところが多く、その再生が課題になっています。このプロジェクト地には、マングローブもあり、マングローブの価値の理解を高め、再生と保全を進めることもプロジェクトの重要な要素になっています。
 
6月20日、Environmental Conservation and Protection Organization (EPCO)のプロジェクトマネージャーの自宅兼オフィスにて会議。プロジェクトの進捗と会計資料の確認をしました。会計報告と領収書を照らし合わせる面倒な作業でした。。。午後からは、現地視察です。オフィスを出るとすぐそこがプロジェクト実施地です。
 

ゴミが片づけられたところに
粗大ごみや建築廃材、コンクリート片などが山のようにあったところ、地元の住民とともに少しづつきれいにしていっています。また、子供が作った「ゴミ捨てないで!」という看板を要所に立てて、注意喚起をしています。支柱には子供たちの手形があります。

ゴミが捨てられそうなところに

モーリシャスの海岸のほとんどは、私有地のリゾートになっていて公共のスペースがほとんどないのだそうです。使われていないところがあると、不法投棄が起きてしまうのでしょう。子供たちが作った看板がこのバラショアの美化に貢献することでしょう。


「バラショア」とは一体なんだ?と皆さん思っているでしょう。入り江の口をこのような石積の壁を塞いだ養殖地です。フランス統治時代に作られた壁ですが、その後メンテされていなかったため、崩れてしまっていましたが、EPCOのプロジェクトにより、大部分が再建されています。海の中に散らばった石を拾い集めて積み上げなおす力仕事です。深いところもあり、満ち潮でも完全に水没しない高さの壁を人力で作るのですから、大変です。

ところでこのプロジェクト地、モーリシャスの旅行ガイドにも記載されている「ライオン山」がよく見えるところです。旧オーナーの住宅をリフォーム(といっても、かなりの大掛かりな作業が必要になると思いますが)してビジターセンターにし、その前の(小さな)ビーチをピクニックサイトにして、地元の人の憩いの場や、エコツーリズムの場として活用する計画があります。また、このプロジェクトでバラショアの再生と活用がうまくいけば、他のバラショアでも同様の取り組みを進めたいとEPCOは考えています。






ライオン山がきれいに見れるところがプロジェクト地


旧オーナーの住宅(廃墟です)。これを将来的にはビジターセンターにリフォームする計画も
ここまで、マダガスカルおよびインド洋諸島4か国を回った出張の前半をお伝えしました。次回は、後半、セイシェルとコモロのお話をお伝えします。

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