【SDGs未来都市】石川県白山市イベント参加レポート! by日比保史




3月23-24日と、石川県の白山市へ行ってきました。白山市は、昨年、内閣府のSDGs未来都市事業に選定され、僕はご縁あって未来都市選定に合わせて白山市のSDGsアドバイザリーボードのメンバーを務めさせていただいてます。

23日は、白山市SDGs推進デーとして、公開シンポジウムとワークショップが開かれ、パネラーとして登壇させていただきました。パネルディスカッションでは、地元の金沢工業大学の学生さんたちが考えた「白山手取川ジオパークを軸とした未来都市アクションプラン」の発表を受けて、ジオパークの意味合い、SDGsへの貢献、白山市としての今後の課題などを、金沢工大SDGs推進センター長の平本督太郎先生のファシリテーションで、いつもお世話になっているIUCN日本委員会会長の渡邉綱男さんらとともにディスカッションしました。

金沢工大の学生さんたちが考えたアクションプランは、大きく8つのアイディア(ハクサンのハチコのアイディア)からなっていて、自然豊かな山間部での全寮制学校をベースにした若者育成を目指す“ハクサンステイスクール”、白山手取川ジオパークを核としたエコツーリズムである“ジオローカルツーリズム”、そしてジオパーク内のタイムシェアオフィスである“リゾートシェアオフィス”など、なかなか魅力的なアイディアがいっぱいです。(個人的には、リゾートシェアオフィス推しです!)

パネルディスカッションの常で話す時間が限られていたので、話し下手と相まってどこまで思いが伝わったかはわかりませんが、僕からは、持続可能な開発(“将来世代のニーズを損なうことなく、現生世代のニーズを満たすこと(1987年ブルントラント委員会)”)の源流は、1980年にIUCNが発表した世界自然保護戦略における「自然保護(コンサベーション)」の定義、すなわち「『生物圏(自然)が、将来世代によるニーズを満たしつつ、現生世代に最大限の便益をもたらすことが出来るよう、人間による生物圏の利用を適切に管理』すること」にあること、そのことからもSDGsの根幹には自然の保護があること(SDGsウェディングケーキ)、だからこそジオパークを核としたSDGs未来都市戦略は極めて“自然”であること、しかしながら白山市が持つその“自然”を持続的に保全していくための仕組み(特に保全・保護コストの経済への内部化)がアクションプランからは欠けていること、自然の価値の内部化の事例としてコスタリカの「生態系への直接的支払い」があげられることなどを話しました。

パネルの結論としては、アクションプランはやはり「アクション」を起こして初めて意味があることから、具体的にどんどん実現化に向けて積極的なパートナーシップを作り上げながら直ちに取り掛かるべし、というような方向性でディスカッションを終えました。
市庁舎に併設された市民交流センターのホールはほぼ満員で、地元で自然農法の米作りに取り組む農家の方や、エシカルファッションを企画する方、学生さんなどが熱心に聴講されていて、関心の高さを感じました。


SDGsカードゲーム「X(クロス)」

シンポに引き続いて開かれたワークショップでは、やはり金沢工大の学生さんたちが開発したSDGsカードゲーム「X(クロス)」を体験しました。(カードの詳細はこちらをどうぞ)このカードゲームは、地域が持つ様々な強みや資源を表す「リソース」カードと、サステナビリティを追求しようとするがために引き起こる新たな課題を示す「トレードオフ」カードからなり、トレードオフカードで示された課題を、配られたリソースカード3枚にある強みや資源を組み合わせて解決策を考えるというもの。

実際、僕のいたチームでは、「エコツーリズムを推進した結果、観光客の増加によりゴミのポイ捨てが増えた」(実際に、よく起こる問題ですね)に対して、「フリーマーケット」「縁結びの神の白山比咩神社」「飛行機」という、なんとも結びつけるのが難しい3つの資源で、「全日空が開発中の「アバター技術」を駆使して(←飛行機)ポイ捨てを取締りつつ、観光客にはゴミを拾ったら神社に持ってきてもらって、そこで開催されるフリーマーケットでのみ使えるエコポイントを発行しつつ、街コンの場も提供(縁結び!)」というような無理のある解決策を考えたりしました。既存のアイディアや技術、ステークホルダーを組み合わせることで新たな発想からなる解決策を生み出す思考を促すという意味で、なかなか楽しいカードゲームでした。


夜は、平本先生に地元の猟師さんが経営するジビエ料理屋さんへ連れて行っていただき、鹿肉、猪肉、熊肉などをご馳走になりました!どれも工夫されたお料理で(ハム、コロッケ、串焼き、ラグーソースのパスタなど)、何より、新鮮なジビエ肉で臭みもなく、食べやすくとても美味しかったです!





翌日は、白山市主催のSDGsアドバイザリーボードの会議で、市長以下市役所幹部も参加の中、8名(だったかな?)のアドバイザーで、このアクションプランの実現策や課題等について議論しました。ここでは、僕からは、白山市域の84%が森林であること(日本全体では約7割、幸せの国ブータンでも70%台半ばであることを思えば、極めて森林被覆率が高いのが白山市の特徴といえます)を考えれば、森林がCO2を吸収固定するだけでなく、太陽光エネルギーを変換し貯蔵する「装置」でもあることにもっと焦点を当てて、バイオマスを活用したCO2ゼロエミッションエネルギー供給(全市が難しければ、例えば、前述のリゾートシェアオフィスだけでもカーボンニュートラルにするなど)、気候変動への対応(SDG13)にも力を入れるべきと提案させてもらいました。

今後は、アドバイザーとして、アクションプラン、カーボンニュートラルの実現に向けて金沢工大との連携なども視野にしながら関わっていければと思います!

P.S. ジオパークとは、「大地の成り立ちや地質・地形など、地球の活動がよくわかる大地の遺産を見どころとする、自然公園の一種」で、白山では、ユネスコの世界ジオパークへの登録も念頭においています。
因みに白山手取川ジオパークを含む白山国立公園は、地球の生物多様性を保全する上で重要なKBA(重要生物多様性地域)にも選定されていて、ワールドクラスの生物多様性を有する地域でもあります。パネルや会議では、触れる時間がなかったのですが、白山地域は、山岳部だけでなく、日本海、富山湾、さらには南側には太平洋まで注ぐ流域の源流でもあり、山から海まで(Ridge-to-Reef)を体現する地域でもあり、CIの海外での持続可能な地域開発/生物多様性保全の取り組みの経験が活かせる場面もありそうだと思った次第です。

By やすきゅん


コメント

人気の投稿