REDD+(レッドプラス)とはなんだろう?

本ブログは、CI本部ブログHuman Natureの“What on Earth is ‘REDD+’?”を日本向けに和訳編集したものです。

CI本部ブログHuman Nature”What on Earth”シリーズでは、環境分野に関わる専門用語について説明しています。

今回は“REDD+”について説明します。

Q. ‘REDD+’ってなに?
REDD+(レッドプラス)とは森林を守ることで気候変動を食い止めようという取り組みです。国連気候変動枠組み条約の下で取り決められました。森林破壊と森林劣化による温室効果ガスの排出を削減する、という意味である、“Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation”の頭文字をとったもので、“+”は森林保全などのさらなる活動も含むことをあらわしています。

© Charlie Shoemaker

Q. 森林を守ることは気候にいい影響があるってことだよね?
その通りです。森林は伐採しなければ炭素の排出を防ぐことができます。また、森林を守る取り組みをすると、世界の気温上昇を2度までに抑えるという目標達成のために役立ちます。この目標達成のために100の努力をしなければいけないとすると、そのうちの少なくとも30は森林保全によって達成できると言われているのです。

Q. REDD+は何をするの?
REDD+は①国が森林の大切さを理解することを促し、②経済的なインセンティブをもたらして森林破壊や森林劣化に歯止めをかけ、③持続可能な森林管理を促し、それによって将来世代が社会的・生態的・経済的便益を森林から得られるようにします。

補足:②について。森林破壊・劣化の原因の一つとして、森林の農地転換があります。そこで、農業を営むために森林を伐採してしまうよりも、森林を保護した場合の方が経済的に豊かになる方法を見つけ出すことによって、森林が破壊されるのを防ごうという考え方がREDD+なのです。

© Piotr Naskrecki

簡単に言うと、REDD+は「国や民間機関、多国間金融機関などがお金を出して、森林を切らないようにする」ということをしているのです。直接お金を出すこともあれば、“carbon credits”という制度を使って森林を守ることもあります。森林を守って温室効果ガスの排出を減らした分で、他の場面で、例えば発電所から排出された分の埋め合わせて相殺することができるというものです。

“carbon credits”に関する他投稿はこちら(英文)

Q. パリ協定にはどうやって役立つの?
パリ協定とは2020年から始まる、地球全体で温暖化防止をするための取り組みです。各国は目標(Nationally determined contributions)を定めて、温室効果ガスの排出を抑え、パリ協定の目標に届くように取り組んでいます。

CIの気候政策分野シニアディレクターであるマギー・コムストックさんは、「パリ協定に同意した各国が、目標を達成するためにREDD+を使うことができます。森林を守りながら、温室効果ガスの排出を抑えることもできるのです。」と言っています。また、さらなるルール作りは必要になるけれども、「いくつかの国はその目標の達成のために排出削減量を移転したり輸出入したりすることも考えており、パリ協定はそれを想定している」と説明します。

また、REDD+を利用できるのは国だけではありません。
たとえば、世界中の航空会社もREDD+を使うことができるようになると考えられます。国際航空分野は、パリ協定の温室効果ガスの削減の対象ではありません。一方で温室効果ガスを多く排出する産業であるのも事実です。REDD+は排出する温室効果ガスのオフセットのために使うことができると想定されています。特に国際航空の分野では、国連の専門機関であるICAO(国際民間航空機関)が、温室効果ガスの削減のために働きかけています。

Q. だれがREDD+のためにお金を出すの?
現在のところ、国や多国間金融機関、民間機関がお金を出しています。

Q. 森林がたくさんある国にとってのREDD+の意味は?
多くの国がREDD+の価値を認識するようになってきています。またこれまで取り上げてきたような便益が、国々へのインセンティブとなっています。「REDD+は他の排出削減の方法とは違います。なぜなら、REDD+は社会と自然環境への便益をもたらすことができるのです。」とコムストックさんは言っています。REDD+では、野生生物や生態系の保護だけではなくて、いかにコミュニティをサポートするかが重要です。

Q.REDD+はうまくいっているの?
コムストックさんによると、もっとできることはあるけれど、現状REDD+は機能しているとのこと。「炭素市場での取り引き価格も含む、炭素にかかる世界的な価格が、森林保護を拡大していくためのインセンティブを左右します。」(さらに知りたい方はこちら)「現在は市場がまだ整っていないため投資が活発になりません。それによって市場の発展は抑えられてしまっていますが、この状況は変わりつつあります。」

REDD+に取り組んでいる国は計画を立て、国の森林を監視するシステムを作り、炭素レベルの変化を把握して、変化を記録していかなければなりません。また、REDD+によって、意図しない悪い影響が出ていないかどうか調査し続ける必要があります。これらの作業は計画・実現が難しいことがあるため、お金の支援が重要になります。

© Conservation International/photo by Haroldo Castro

Q. 航空会社はどのようにREDD+を使おうとしているの?
定規を想像してみてください。一番上の値が、私たちの現在の温室効果ガス排出レベルであるとし、一番下の値を私たちが理想とする排出レベルであるとします。この間のスペース全体が、排出量を大幅に削減して気候変動を食い止めるために、私たちが取り組んでいかなければいけない分です。各国が定めたパリ協定の目標は確実に排出レベルを一番下の値に近づけてくれるものではありますが、それでもまだ現実のレベルと目標との間には空白のギャップがあります。

国際航空の分野はこの空白を埋める手伝いができるのです。

航空会社は一丸となって、温室効果ガスの排出量の上限を2020年のレベルに定め、それ以上を排出する場合は、効率を上げたりオペレーションを改善しなければならないということを決定しました。しかしそれらの技術的な改良だけでは、削減目標には届かないと考えられています。そこで、2020年レベルを上回る排出分をオフセットするツールが必要になります。ここで利用されうるのがREDD+なのです。

コムストックさんは、航空分野がREDD+を導入することをより魅力的であるとする要因として、次のことを言っています。「環境保護基金は試算を行い、航空産業だけからでも、オフセットの必要がある二酸化炭素が20年超の間で78億トンに上ると見込まれる」と考えているのです。

これはとても大きな数字ですね。

もしあなたも、森林を守るために参加してみたいと思うなら、ここから始めてみてください。まず、あなたのカーボンフットプリントが何かを見つけ出してみる。その次に、carbon creditを一つ(かそれ以上!)購入して、自分のカーボンフットプリントの分をオフセットしてみる。

© Charlie Shoemaker

オフセットの一つの効果的な案として、ケニアのChyulu Hillsの森林保護では、今後30年に及んで排出されると見込まれる、おおよそ1800万トンの二酸化炭素の排出を防ごうとしています。

この記事は、CIのシニアエディターであるSophie Bertazzoによって執筆されました。

翻訳:齊藤優奈(インターン)

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