伝統的知識なくして、気候の解決策はない
by ヒンドゥー・オウマロウ・イブラヒム
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世界は気候変動の現実に気付き始めています。しかし私や世界の数百万人もの先住民にとっては、気候変動は目新しいものではありません。気候変動は私たちの人生なのです。
山や森に暮らしていたとしても、はたまた砂漠や氷で覆われている場所に暮らしているとしても、すべての先住民にとって、環境は、生活と生計に直接リンクしています。私たちは暮らす場所に生活を依存しているので、気候変動の影響で、私たちの場所と-そして未来もー危機に瀕しています。
先日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した地球温暖化の報告書は、地球の平均気温が1.5度以上上昇してしまったらどんなことが起こるのか、暗くなるような予測を書いていました。
問題なのは、現時点ではパリ協定の締結国は温暖化を2度未満に抑えることに合意していますが、その0.5度の違いが取り返しのつかない状況を産み出してしまう可能性があるということです。
このような未来に直面した今、過去を振り返るべき時だと私は思います。
ヒンドゥー・オウマロウ・イブラヒム (© Conservation International) |
気候科学は、現代的なツールと、精細な予測とモデリングのシステムによって成り立っています。私のコミュニティでは、自然から情報を集め、そのデータを元に意思決定をします。木や、果物や、鳥の移動や、風の方向、星の位置を観察して、天気を予測することで、変化に適応します。また、参加型の3Dモデリングを利用した地図を作って、自然資源をより適切に管理することに役立てています。伝統的知識と科学はこうした形で組み合わさるのです。
コミュニティのリーダーに会う時も、国家首脳に会う時も、私はいつも同じ思いを抱きます。それは、私たちが持つこの伝統的知識が、気候変動や生態系破壊との戦いへ先住民族が貢献できることの価値だと認識しない限り、私たちには希望がない、ということです。
根本的にはこれは正義 -気候正義- の問題です。パネルディスカッションやワーキンググループなどの交渉の場に、先住民の声を伝える人がいるだけでは十分ではありません。私たちは意思決定者になるべきです。
私たちの権利や資源のことは忘れられがちです。
真の気候正義は、資源の保全と、私たちの資源への権利を尊重することのバランスを見つけることが出発点になるべきです。
私の役割は、私のコミュニティの経験と伝統的知識、自然を活用した気候解決策について、国連のような国際的な組織と連携させることです。私には、コミュニティがより強靭性を持ち、未来の世代が民族のアイデンティティと伝統的知識を絶やさないために、世界に私たちの現状を伝え、私のコミュニティに報告する義務があります。私のコンサベーション・インターナショナルでの先住民フェローとしての立場は、私と私のコミュニティ、そしてすべての先住民が、新たなプラットフォームやオーディエンスと繋がり、先住民族たちの経験を共有することで、世界がこうした知識と科学的革新による保全方法の恩恵を受けるための助けとなることです。
私は、生物多様性条約締約国会議や、国連気候変動枠組条約締約国会議を含む多くの国際会議に、先住民コミュニティの代弁者として参加します(編集注釈※2018年)。私は、私たちの生活が気候変動によって日々変わっているということ、先住民コミュニティが意思決定に携わるべきだということを意思決定者たちに強く訴えます。
先住民の伝統的知識と、先住民が意思決定に携わることなしに、気候解決策を実行することを手助けすることはできません。そして、今、地球はあるだけの手助けを必要としているのです。
ヒンドゥー・オウマロウ・イブラヒムは、チャドのボロロの遊牧民コミュニティ出身のコンサベーション・インターナショナルのルイ・ワルトン・シニア先住民フェロー、また、気候変動国際先住民フォーラムの議長です。
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