気候変動の専門家が語る、世界各地の適応策とは


スイスアルプスで育ったGiacomo Fedele(ジャコモ・フェデレ)は、木登りや森林探索が好きでした。そんな彼は自然への愛をコンサベーション・インターナショナルの気候変動適応策エキスパートという職業に注ぐことになります。世界を駆け回りながら、地球温暖化の影響を受けている世界中の地域コミュニティの人々と共に働く専門家です。

今回はフェデレから彼の一風変わった科学者への道、マダガスカルからメキシコまでの世界の地域がどう気温上昇に適応しているのか、そして気候変動の行く末は不確かなのに、どうやって楽観的でい続けているのか、話を聞いてみます。


Q:自然について研究する仕事に就くことになったきっかけはなんですか?

A:子どもの時から自然に夢中だった。スイスアルプスで育ったから、大自然の中でハイキングしたり、きのこ狩りをしたり、木に登ったりして過ごすことが多かった。ずっと自然の多様性や、僕の周りの生態系に興味があって、大学では環境学を専攻するようになったんだ。

修士論文では、マダガスカルにある僻地で研究を行った。そこで僕は、自然界の新たな側面を発見するようになったんだ。現地の人たちは、日常的に自然を利用していたんだ。例えば、薬として利用したり、農作物が不作の時は食糧として利用したり、家を建てる材料として利用したり。この人びとの自然への依存が僕の研究の焦点となった。コンサベーション・インターナショナルでは、気候変動の危機において自然がどう人々の力になれるか、方法を考えているんだ。

Q:現在はどのような研究をしているのですか?
A:僕は、自然と気候の交わり、そして人々が気候変動に適応したり、気候変動のダメージを減らすためにどう自然が力になるのかについて研究をしている。
僕にとって、自然を気候変動の解決策の一つとして取り上げることが大事だけど、それは人々が考えるほど明白ではないんだ。

気候変動はよく二酸化炭素排出を抑制することで解決できる問題だと考えられている。例えば、エネルギー分野や、交通輸送分野での二酸化炭素排出を抑えること、そのための技術利用が注目されている。確かに二酸化炭素排出の抑制は解決策の一つだ。

しかし、二酸化炭素を吸収する生態系に注目することも大切だ。特に、多くの人が自然と共生する発展途上国では生態系保全が重要になってくる。すでに自然との関わりが深い地域では、自然を守り、気候変動に対応するための独自の戦略を持っていることが多いんだ。

Q:気候変動に適応するための戦略を持っている地域の例はありますか?
A:僕は今でもメキシコのオアハカにあるコーヒー農家を訪れた時のことを覚えている。気候変動の影響で、その土地は乾燥していて、暑くて、コーヒー栽培には適さなくなってきたから、農家は栽培方法を変えなければいけなかった。

今までのコーヒー豆とは異なる暑さに強い種類のコーヒー豆を栽培したり、他の植物と一緒に栽培をして日陰を作ったり、農園自体を高地に移動させたり、そもそもコーヒー豆以外の作物を栽培するようになったりと。彼らの気候変動への適応能力は並外れた物だった。

農家たちは、政府や支援団体が解決策を提示するのを待つのではなくて、自分たちで何とかしようとしているんだ。オアハカのコーヒー農園での経験は、気候変動に取り組んでいるコミュニティの意見を聞き、彼らをサポートすること、気候変動に取り組むためにできる最善の策の一つだと気づくきっかけになったよ。

Q:気候変動に関する取り組みに携わっていると、心が折れることもあると思います。どうやって楽観的でいるのですか?
A:これは私たち全員が、特に壊滅的な干ばつ、洪水、山火事、そして世界的な新型コロナウイルスパンデミックを経験した後には自分自身に問いかけている質問だ。
僕は、コンサベーション・インターナショナル内外を問わず、同じような情熱を持った人たちと活動することでエネルギーをもらっているよ。

気候危機は、世界に暮らす全ての人に関わる問題だ。どんな僻地で暮らす人々でさえも、気候変動の影響を受けていて、それに適応するように暮らしている。僕はそういうことを知ってモチベーションが高まるんだ。世界中の人が共に取り組んでるんだって感じるからね。

みんなが解決策の一部になるべきだし、その一部になる可能性がある。そして、世界中のコミュニティが一体となって、よりパワフルで包括的な気候変動へのアプローチを取ることができる。こう考えることは、僕に大きなエネルギーを与えるよ。

Q:あなたと同じようなキャリアに進みたい人にアドバイスはありますか?
A:環境科学は幅広い分野のトピックがあるから、自分のニッチを見つけることが本当に大切だ。これは、その人が情熱や探究心を持って、様々な種類の知識を受け入れて、何よりも、新しいことを前向きに学べることを見つけることでもあるんだ。

そして、環境分野では多くの人とネットワークを作ることも大切だ。僕がキャリアを積み始めた頃は、メンターやスーパーバイザーなど、気がつけば同じ志を持った人と繋がっていたんだ。彼らは色々な面で僕を励まし、挑戦させてくれた。博士号の研究を始める頃には、より明確な将来への目標ができた。それは僕が信頼して、尊敬している人たちの意見に基づいていたよ。


ライター:Will McCarry
カバーフォト:©GIACOMO FEDELE

この記事はコンサベーション・インターナショナル本部ブログ“Meet a scientist: To adapt to climate change, this expert looks to nature" を日本向けに和訳・編集したものです。

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