気候変動に関するボン会議 報告会 に参加して

学生インターンの横山です。
CIスタッフブログへの初投稿ということで、若干緊張しております。


簡単に自己紹介を致します。

・趣味は河川敷を歩くことです。
・大学で経済学を勉強しています。
・WEB周りのことに興味があります。


経済学やITというと、一般的には環境問題とは関係なさそうに聞こえますよね。ですが、実は色々と繋がっていることに気づきました。たとえば京都議定書・炭素クレジットやこのスタッフブログはまさに経済学・ITの関連分野です。おそらく今後環境問題に関して、ますます経済学やITの果たす役割は大きくなっていくでしょう。

そこで、学問やスキルでいかに社会問題を解決するか、ということを考えるために「科学的知見」「パートナーシップ」「世界各地での実践」を行動指針とするCIで働いてみたいと思った次第であります。


そしてさっそくですが、先日行なわれたボン会議の報告会に参加してきました。




ボン会議は、今年初の“気候変動に関する国連会議”です。2011年末に「温暖化対策に関する新しい国際的枠組みを2015年までに合意する」ということが決まったので、今回のボン会議にて「これから社会はどういう枠組みで環境問題を解決していくのか」を決めるための交渉がスタートしたことになります。

報告会では、ボン会議に参加したNGOオーガナイザーとして、FoEJapanからは顧問の小野寺ゆうりさん、WWFジャパンからは気候変動・エネルギーグループリーダーの山岸尚之さんからそれぞれ、お話を聞かせていただきました。CIジャパンからは気候変動プログラムディレクターの山下さんが登壇し、REDD+という枠組みの国際交渉についてプレゼンテーションを行ないました。




●そもそもREDD+(レッドプラス)とは??

もともとは

R…Reducing E…Emissions from D…Deforestation, D…forest Degradation

の略でREDD。森林減少と森林劣化を抑制しようという枠組みの名称です。ところが、単なる抑制だけではなく「森林カーボンストックの保護・増進」「持続可能な森林管理」といった点も考慮しよう!という話になり「+(プラス)」を付け足すことになりました。これがREED+です。

REDD+は、気候変動枠組条約締約国会議のCOP11(2005年)でのパプアニューギニアとコスタリカによる提案に始まり、2010年のCOP16にて制度・政策面での議論が本格化、昨年末COP17と今回のボン会議へと至りました。

次に、REDD+でポイントとなる専門用語・概念についての説明が行なわれました。



●ひとつめは“セーフガード”

REDD+実施の際に社会や環境に与えるであろう悪影響を、あらかじめ想定して対処するための予防プログラムをセーフガードと呼んでいます。


例えば、仮にある地域の森林減少を抑えることができたとしても、その分だけ他の地域での温室効果ガス排出量が増えたら何の意味もないですよね。こういった排出移転の問題など、REDD+を考える上で補完しなければならない議論がいくつかあります。実際に枠組みを決めるときに、どうやって「排出移転が生じている/いない」と判断するのでしょうか。

これはセーフガードの情報提供システムに関する話の一例に過ぎません。昨年末のCOP17では、他にも様々なテーマに対して議論が行なわれました。そこでガイダンスは策定されたものの、詳細な内容や報告の頻度、開始時期といった具体的な話はまだ決まっていませんでした。


もうひとつ例を挙げてみましょう。セーフガードで示されたポイントの1つに「先住民族や地域住民等の知識・権利を尊重する」という項目があります。単に森林の面積だけで判断するのではなく、あらゆる利害関係者をフォローしようという提案です。

伝統的な知識というのは、いまだ先進国では普及していない生物資源の活用ヒントが隠されているものです。現地の人が日常的に使っている薬草が、医学の進歩に大きな貢献をもたらすことも十分にありえるのです。文化や風土も含めた広い意味でのエコシステムを守ることは、生物多様性の保全にとっても、人類にとってもプラスの影響を与えます。

ただ、森林保護というときに埋もれがちな論点でもあります。なので国際条約・合意を補うという意味でもセーフガードが果たす役割は大きいのです。



●もうひとつが“リファレンス・レベル”

温室効果ガス排出量の予測値をリファレンス・レベルと呼びます。過去のデータを分析して、これから森林減少によってどれくらいの量の温室効果ガスが排出されるのかを予測した値です。REDD+の実施によって森林を保護したときに、実際の排出量がこのリファレンス・レベルをどれだけ下回るかによって、排出削減量を確認することができるのです。また、その度合いの大きさに比例して金銭的なインセンティブを与えることになります。



こうした議題についてボンではどのような進展があったか、という話に進みます。

具体的には、第36回SBSTA(科学補助機関会合)と、第15回AWG-LCA(気候変動枠組条約における将来の枠組みを検討する作業部会)というところでREDD+の交渉が行なわれたようです。

SBSTAでは、各国が効果的なセーフガードの情報システムを作成できるよう検討を続けて2013年末には決定することが合意され、リファレンスレベルについてはCOP18とCOP19で進歩状況を報告して決議案についても検討することになったようです。着実に進んでいるとのことでした。また、これまでと違って途上国側が積極的な姿勢を見せているようです。

AWG-LCAでは、REDD+で生じる金銭の支払いについて話し合ったものの決議には至らなかったとのことです。そこで今年度後半にワークショップを開催して議論を深めることに合意したようです。議題としては、公的資金の利用や炭素以外の価値についての検討などを予定しているとの話でした。



●個人的な感想

国際的な舞台でのリアルな話を聞いていて思ったことがあります。それは、大きな枠組みを作るのはとても大変なことだ、ということです。当たり前といえば当たり前のことですよね。各国で立場が違って、気候変動の問題は目に見えにくくて、何かルールを決めようとすればはっきりさせなければいけないことが山ほどあって、考慮すべき問題が次々に出てくるのですから。

社会問題を解決したい。世の中の不条理を打破したい。そう思っているだけでは、現実の社会は変えられないのだと強く感じました。

また、大学の環境経済学の授業でREDD+について講義を受けたことがあります。しかし、実際には現場でどのような進展があるのか、実現のために何が課題なのかといったことは今回初めて知りました。

「なんとなくの問題意識」「テストで聞かれたら解ける知識」とはまったく違う、「社会に働きかけるために必要な何か」を身につけたいと思いました。それが具体的に何を示すのかはまだはっきりしていませんが、CIジャパンでの仕事を通してヒントを見つけられたらと思っています。




*なお、報告会の資料やUstreamについてはWWFジャパンさんのWEBサイトにアップされています。

当日のUstreamチャンネル。イベント概要と資料の個別URLが書いてあります。
http://www.ustream.tv/channel/wwfjapan-climatechange#

アーカイブはこちらになります。
http://www.ustream.tv/recorded/23304296

山下さんの資料はこちらからダウンロードしていただけます。
http://www.wwf.or.jp/activities/upfiles/20120614yamashita.pdf




*ちなみに山下さんは謎の人物Yとして、このスタッフブログにて“UNFCCボン便り”を書いているので、国際会議の現場の雰囲気を知りたい!という方はぜひこちらも読んでください。


2012年5月16日 国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:会合開幕!
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccc.html

2012年5月16日 国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:交渉2日目にて、LCA交渉スタック
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccc2lca.html

2012年5月18日 国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:「森林減少の要因」サイドイベント開催!
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccc_18.html

2012年5月19日 国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:ダーバン作業部会の議長が決まらない
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccc_19.html

2012年5月22日 国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:迷走を続けるダーバン・プラットフォーム
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccc_22.html

2012年5月23日 国連気候変動会議/UNFCCC ボン:サイドイベント②「気候変動の緩和と適応に貢献する農業」
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccc_23.html

2012年5月24日 国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:REDD+/SBSTA決議案
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccc-reddsbsta-y-redd-redd-sbsta-redd.html

2012年5月24日 国連気候変動会議/UNFCCC ボン便り:キーワードは共通だが差異ある責任と衡平性
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccc_24.html

2012年5月29日 気候変動枠組み条約/UNFCCCボン会合:ボン会合総括―COP18 / ドーハに向けて
http://ci-japan.blogspot.jp/2012/05/unfccccop18.html


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