2012年11月15日木曜日

【CIインターンレポート】企業による森林保全社会を通じた地球温暖化セミナー


企業による森林保全社会を通じた地球温暖化セミナー その1

インターンの藤田です。
先日、住友林業様で開催された「企業による森林保全社会を通じた地球温暖化セミナー」に聴講させていただきました。
今回は地球環境戦略研究機関の二宮康司氏,そしてコンサベーション・インターナショナル・ジャパンから山下加夏氏のご講演をレポートしたいと思います。


「地球温暖化対策と市場メカニズム 現状と今後の課題」

 まず、二宮氏のご講演は市場メカニズムがいかに地球温暖化対策に取り入れられており、今後どのように運用されるべきであるか、といった内容でした。
二宮氏によると、まず温室効果ガス(GHG)の排出を削減することが地球温暖化を回避するために必要であるという認識のもとで、排出量削減の国際的なメカニズムが生まれました。排出量取引*です。
 (*ちなみに、「排出量取引」に類似するものとして排出権取引,排出枠取引,排出許可書取引などがありますが、環境省としては「排出量取引」の名称を用いているそうです。 排出権取引は日本の法律に「排出権」なる権利は存在しないからということのようです。)

この排出量取引ですが、二宮氏がご講演で繰り返し強調されたのは 
「排出量取引は,それが実行されるかされないかにかかわらず、大気中に排出されるGHGの排出総量は変わらないが、決められた排出総量まで削減するためのコストを低くし、故に全体でコストを下げることができる」というメリットです。

たしかに、キャップ・アンド・トレードでは排出枠を取引することによって排出枠内で抑えるコストを低くし、さらには途上国で排出量を減少させて、そのキャップを買い取ることは途上国にとっても先進国にとっても大きな利益です。

一方で、デメリットも存在すると二宮氏は語ります。

デメリットとは…
★排出枠の公平な分配が困難であること
★配分の仕方によっては極めて不公平な状況が生じること
GHG排出量の正確かつ公平な測定が容易ではないこと
GHGは可視化することができないので、そのMRV(測定,報告,検証)のための公平なルールの確立,実施体制,監視体制の整備が必要であること
★そのような公平かつ実効性のあるMRVの仕組みを作ることが非常に困難であること

以上の点です。

さらに、もうひとつ重要な課題があります。

それは「排出枠が足りなくなったら?」という問題です。

二宮氏は「他国が排出枠を売却してくれればいいが、どの国もGHG排出量が増加してしまった場合(つまり排出枠,キャップをほとんどの,もしくは全ての国がオーバーした場合)は排出枠の価格が急上昇し、長期的なインセンティブにはなるが、短期的には排出枠購入費用が大きな負担になる」と述べられました。
そのためにはCDM(クリーン開発メカニズム)を外部クレジットとして用いることができますが、しかしここにも排出量取引において問題視されたデメリットと同様の問題が存在するということでした。

しかしながら、このよなデメリットが存在しても、やはり排出削減にむけた取り組みにおいてコストが低く効率的なのは市場メカニズムを活用した排出量取引であると二宮氏は述べられました。

二宮氏の講演をまとめると…

²  GHG削減のためには市場メカニズムが必要である。
²  市場メカニズムの導入と運用のためには国際的枠組みが必要
²  将来的には国際的にも国内的にも市場メカニズムが広く機能するようになるだろう。
²  市場メカニズムに伴うデメリットについて今後も要検討である。


 二宮氏の講演を聴いた感想・・・

 今回の講演では排出量取引における市場メカニズムの役割を詳細かつ簡潔にお話され、メディアなどでは近年忘れ去られているこの制度の重要性について再認識しました。
特に、環境経済学においてもピグー税と並んで市場メカニズムの活用の分野で必ず語られる排出量取引が国際条約の中でどのように改善されていくべきかなど、生きたお話を聞くことができて国際枠組みの重要性が理解できました。
 そして、ご講演時間は約20分でしたが、20分の間に二宮氏が語られた量はおそらく一般の量より3倍ほどあったかと思われます。私もあんなふうにプレゼンできるようになりたいとこっそり思っていました。


企業による森林保全社会を通じた地球温暖化セミナー その2

「森林保全活動と地球温暖化を結ぶ ~現場から企業への期待~」

次にCIジャパンから山下さんがご講演されました。山下さんは気候変動プログラム・ディレクターをされています。

 山下さんは、コンサベーション・インターナショナルと企業のパートナーシップによる保全の実施例をお話され、NGO活動の視点から企業との協働を講演されました。

今回のご講演では、CIの紹介の後、森林保全活に現場で携わるNGO団体からのメッセージをお話されました。メッセージは以下です。

   森林の再生・保全は、気候変動の軽減のみならず、生物多様性保全や地元の人々の生計支援を両立するように計画することが今後必須であること

   「木を何本植えた」などの定量化で評価するよりも地元コミュニティの理解を促進し、協働し「地元の真のパートナー企業」と認められることが評価の対象となるべきである

   森林再生・保全のみの支援には限界がある

   REDD+は森林保全に初めて法的拘束力をもたせたインセンティブを付与しようとする試みである。グローバル社会において、世界規模で地球資源を守り、気候変動を軽減するための最後の砦である。


 以上のことを踏まえて、REDD+における企業とのパートナーシップの事例をお話されました。例えば、REDD+事業において、必ずしもカーボンクレジットのみを目標にしてはならないことや、「保全契約」を展開しながら、森林を守ることの重要性を伝えること、地元のガバナンス強化などの森林保全に取り組むための体制づくりから検討することや地元コミュニティを主体にすることの重要性などです。
 そして、今回の講演ではダイキン工業とCIとの協働における事例を紹介されました。
ダイキン工業ではインドネシアの「現地のコミュニティの生活支援」を第一に考えた包括的な森林再生事業の構築や、日本の消費者にむけての「世界とのつながり」を啓発することでダイキン工業のPRと販促活動を行うというものでした。

ダイキン工業の主なプロジェクトについては、こちらをご覧ください。→http://www.daikinaircon.com/eco/index2.html

ダイキン工業とコンサベーション・インターナショナルは、アグロフォレストリー(植林をしつつその中で農業をするという試み)やREDD+や森林再生の視点のみならず、水源の確保、ピコハイドロ(超小型水力発電)の設置などいかにして地元の生計支援をし、持続的な森林の保全を行うかといった活動を展開しており、住民との認識の共有がされてきたそうです。

他にも、コンサベーション・インターナショナルとスターバックス・コーヒーによる日陰栽培コーヒーの事例、パームオイル生産などの先進事例、そしてCIジャパンの日本における活動をご紹介されました。

山下氏の講演を聴いた感想・・・

 私は現在CIジャパンにインターン研修生としてお世話になっていますが、12月をすぎれば大学院に戻ることになりますが、今回の山下さんのお話は、NGOと企業の協働、とくにダイキン工業との画期的な取り組みやNGO活動における地元との連携の必要性など、環境保全の現実として研究室の机の前ではわからない大変貴重なお話であったと思いました。
 とくに、やはり環境保全というと、山下さんがおっしゃっていた通りどうしても「定量化」されてしまいがちで目先の保全の結果だけが先走っていますが、そこに住む人やなぜ保全が必要になったのかという要因から考え、そしてまず第一に何が必要か、そういった複合的な要素を踏まえて考えなければならないのだと強く感じました。