環境保全を成功させるカギは「ジェンダー的視点」を持つこと
フィジー、ソヴィベイスンナダクニ村の近くの小川で魚釣りをする準備をする女性と孫息子
(© CI/photo by Peg Arrington)
エディターズノート:効果的に環境保全を達成するために、とても重要なことがあります。それは、コミュニティの中での男性と女性における自然の使い方の違いを理解することです。例えば、太平洋の島々周辺の沖合いでは、男性が遠い海で漁をする間、女性は浅瀬で貝殻など拾い集めている姿がしばしば見られます。これらは、根本的に異なった水資源の使い方といえます。女性と男性の異なる役割と責任、そして、環境保全がどのように彼らに影響を与えるかという理解は、コミュニティーを支え、取り組みを成功させるためにはとても重要なことなのです。
ジェンダー視点に関する理解を深め、CIのスタッフやパートナーのスキルを強化するために、CIは最近、フィジーとサモア、エクアドルでジェンダーに関するワークショップを行いました。CIでジェンダーに考慮した環境保全のアドバイザーであるケイム・ウェスターマン、そしてアジア太平洋地域のジェンダー活動の中心となっているホィットニー・アンダーソンとともに、ジェンダーと環境保全に関して、これから私たちが学ぶべきことについて考えます。
Q:ジェンダーというのは、どのように環境保全と関係があるのでしょうか?
ケイム・ウェスターマン(KW):まず、ジェンダーという言葉が意味するところを理解することが重要です。私たちは、ジェンダーを「社会が作り上げた女性と男性の特徴(規範や役割など)」であるとしています。文化や時間の経過によって、かなり異なってくるような特徴のことです。これらの違いを認識し、それに対応していくということは、人権を尊重し、効果的な環境保全を推進していくためには欠かせません。
私たちは環境保全を推進する者として、森林を保護し、サンゴ礁を管理し、危機に瀕している種を守るために、コミュニティーとともに働いています。プロジェクトのゴールを達成し、次世代に続いていくような変革を起こしていくために、現地コミュニティーと協働するには、男性・女性・男の子・女の子たちによって構成されているコミュニティー全体とコミュニケーションをとり、教育し、行動を起こすような動機を与えることができなければなりません。だからこそ、彼らがどのようにコミュニケーションをとり、どのように学び、何が動機となり、どのように特徴的な自然に関する知識を持っていて、環境保全の取り組みがいかに彼らへ影響を与えうるのか、といったそれぞれの人々の異なったニーズや見方を理解することは、私たちの取り組みに必要不可欠なのです。
フィジー、ソヴィベイスンナダクニ村の近くの小川で魚をとる女性たち (© Cl/photo by Peg Arrington) |
Q: なぜあなたは、こうしたジェンダーと環境保全について話し合いをするためにフィールドへ赴いたのですか?
ホィットニー・アンダーソン(WA):プロジェクトを軸に活動しているCIの現地スタッフは、保全プログラムの優先事項に関連した、現地のジェンダー的文脈を理解するのに最も適した環境にいます。
訓練し、スキルを持てば、スタッフは「ジェンダー的視点」を養うことが可能なのです。これは、環境保全プロジェクトにおけるさまざまなジェンダー的要素を認識し、対応できるということを意味しています。そしてそれは、コミュニティー全体に関わる環境保全のための取り組みを確実なものにしてくれるのです。
私たちが、フィジー、サモア、エクアドルで行ったワークショップでは、スタッフや現地のパートナーにこういったスキルを身に着けさせ、レベルアップしていくことを目標にしました。環境保全プロジェクトの中に、ジェンダー的視点を適用させるための知識とスキルがつまった、いわば“ツールボックス”のようなものを提供するには、ワークショップという形式が効率的で、費用対効果が高いということが明らかになったのです。
Q:ジェンダーのワークショップではどのようなことが行われているのでしょうか?
WA:CIサモアのプログラムとパートナーで開かれたジェンダーのワークショップは、これまで実施してきた中では、初の試みとなりました。現地のスタッフとともに、ケイムと私は2日間をかけて参加者がジェンダーに関する重要な考え方(ジェンダーの公平・平等、ジェンダー分析、ジェンダー主流化に関する定義など)を学び、慣れることができるように、また、サモアのジェンダー的役割を調査し、どのような役割がどのように男性、女性、そして子供の環境との関わりに影響を与えるのかということを概説し、国内での主要なプロジェクトの成功へ向けた改善のための具体的なとっかかりを見つけることができるように、ワークショップを企画しました。
サモアのワークショップに参加した私たちのパートナーの1人であり、サモア・コンサベーション・ソサイエティーのクリスティーン・トゥイオティ・マリナーはジェンダーのワークショップが彼女の取り組みに、具体的にどのように役立ったのか述べてくれました。
「私はよくコミュニティーと協働していますが、ジェンダー的視点をどう組み込んでいけばよいか知識がなかったので、プロジェクトを計画する際にすべての当事者のことが確実に考慮されていなかったという点を感じました。しかも、もし考慮に差があっても、それがきちんと報告されていないように思いました。今回のワークショップで、プロジェクト開始前から最中にかけて、すべての当事者のことが考慮され、組み込まれていることを確認できる手法を学びました。」
Q:次のステップはなんでしょうか?
KW:実は、私たちはしばしば「ワークショップ症候群」に陥ってしまうことがあります。ワークショップでは素晴らしい話し合いや学び、そしてシェアリングを体験しますが、参加者がそれぞれの持ち場に戻るとすぐに、日々の業務の中に行き詰まってしまうのです。ワークショップを計画するとき、参加者の実際に即した、実践的な次なるステップを見いだせるよう、特別な配慮をしてきました。参加者がその時に取り組んでいる特定のプロジェクトに焦点を当てることには、相当な時間をかけました。ジェンダーの問題に取り組み、そういった機会のために文化的にふさわしく、効果的に資金調達できる方法を編み出し、そして彼らが見つけ出したジェンダー的なバリアに取り組んで行けるよう、導くのです。
私たちは、世界中の他のCIオフィスでもこのようなワークショップを行い、保全プロジェクトへジェンダー的視点を組み込み、より熟練したエキスパートとしての広いネットワークを構築していきたいと考えています。
これまで何人かの参加者はワークショップの中で、「なるほど!」と思う瞬間があったといいます。また、ある人は、ジェンダー的視点が”より養われてきている”とも言っていました。これはプログラムのスタッフが、環境保全のプロジェクトへジェンダー的視点を組み込んでいくにはとても良い環境にいること、そして、究極的には、このようなワークショップがジェンダー的視点を組み込んでいくツールを生み始めることへ繋がっていくのです。
※本ブログ記事は2017年6月20日に投稿されたCI本部のブログ記事を和訳したものです。
”To see conservation success, we need to look through a ‘gender lens’ by SOPHIE BERTAZZO
翻訳協力:中島美紗子
編集:CIジャパン
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