サーフィンスポットを守るために活動家になったサーファーたち


©Will Henry


人が頻繁に訪れる自然環境では、多くの場合、その景観が損なわれてしまい、ましてやそうした場所が保護されるのは稀なことです。しかし、サーフィン保護区(優れたブレイクポイント-サーフィンしやすい波が多く発生するポイントと重なる重要な沿岸生態系)で起こっていることは、確実な例外と言えます。 

 


ジャーナリストのヴィクトル・R・ロドリゲス氏がハカイ紙に寄稿した記事によると、メキシコのバハ・カリフォルニア半島の太平洋岸にあるアロヨ・サン・ミゲル州立公園は、国際的なサーフィンコミュニティの協力により、67ヘクタール(0.67平方キロメートル)の保護区として法的保護を受けることになりました。 



州立公園に指定される前、サン・ミゲルは違法な埋立や港湾開発計画、砂や岩の採取などさまざまな問題に直面し、サーフスポットとして名高いこの地域の波も損なわれる恐れがありました。 



しかし、非営利団体「ザ・セーブ・ザ・ウェイブス・コアリション( The Save the Waves Coalition)」と、「プロナトゥーラ・ノロエステ(Pronatura Noroeste)」、「バイア・トドス・サントス世界サーフィン保護区( the Bahia Todos Santos World Surfing Reserve)」などのパートナーと数年にわたる働きかけが、この地を保護する価値があることの証明につながりました。


サン・ミゲルは現在、世界サーフィン保護区として、またバハ・カリフォルニア初の州立公園として、採掘活動や都市開発から保護される対象となっています。 


 

「サーフコミュニティの活動は、絶滅危惧種の保護、コミュニティのための緑地整備など、生態系サービスとサーフツーリズムという、保全と経済的利益の双方に焦点を当てました。」と書かれました。 



経済的観点から見て、サーフィン産業は軽視できるようなものではありません。コンサベーション・インターナショナルは、サーフィンが世界中のサーフコミュニティに年間500億ドル(約5兆円)もの利益をもたらすと推定しており、当然ながら、そこには何千もの雇用が創出されていることを意味します。ロドリゲス氏によれば、サン・ミゲルのサーフィン観光は毎年96万9000ドル(約1億2500万円)もの利益を地元へもたらしているそうです。 


 

経済的な便益だけでなく、サーファーが集まる沿岸の生態系は、特にサンゴ礁など、重要かつ脆弱な海洋動植物の生息地でもあります。しかし、乱獲、森林減少、プラスチック汚染、持続不可能な沿岸開発など、これらの場所は、環境と経済の二つの側面で同じ脅威にさらされていることも少なくありません。 



 コンサベーション・インターナショナルとセーブ・ザ・ウェイブス・コアリションが始めた「サーフ・コンサベーション・パートナーシップ」のシニアディレクター、スコット・アキンソンは「世界最高のサーフブレイクの75パーセント以上は、保護が不可欠な地域にあります」と語っています。「そして、世界で3500万人以上いるサーファーは、これらの生態系の最高のサポーターです。」  



「サーフ・コンサベーション・パートナーシップ」は、ワールドクラスの波が発生する場所で、かつ生物多様性の高い海洋・沿岸生態系が存在する地域を保護するため、2019年に設立されました。現在、コスタリカ、インドネシア、ペルー、ブラジルのパートナーと協働を進めており、この後フィジーやその他のサーフィンスポットにも対象を拡大する予定です。 



また、プロのサーフィンリーグを統括する「ワールドサーフリーグ」では、世界中で数百万人のサーファーを動員し、海洋保全の拡大を奨励・支援しています。コンサベーション・インターナショナルとセーブ・ザ・ウェイブスは、同リーグと提携し、海岸の修復、生息地の保護、プラスチックの削減などを通じて海を守る「We Are One Ocean」イニシアティブを展開しています。今年は、インドネシアのグラジャガンベイとコスタリカのプラヤエルモサという有名なサーフブレイクでの保護プロジェクトにも資金援助を行いました。 



 昨年発表されたコンサベーション・インターナショナルの共著論文によると、サーファーにとって良質な波を守ることは、その海面下の脆弱な海洋生物の保護にも役立つことが証明されています。 


「サーフブレイクが重要な生息地や生物多様性の高い地域に近接していることは、サーフィン保護区のネットワークを実現するユニークな機会を生み、さらに沿岸生態系とそれらが育む重要な生物種の生存を支えるでしょう」と、コンサベーション・インターナショナルのブループロダクション・プログラムのバイスプレジデントであり、論文の共同執筆者であるジャック・キッティンジャーは語っています。 


   

「沿岸や海洋の保護に携わる私たちには、実行可能ないくつかの異なる戦略があります。」と、彼はCNNのオピニオン欄に寄稿しています。「最も基本的な二つの戦略は、強力な漁業規制を導入することと、海洋保護区を作ることです。」 



記事の全文はこちらから。 


 


 本記事は、CI本部スタッフブログ「https://www.conservation.org/blog/news-spotlight-athletes-become-activists-to-protect-surf-ecosystems」を日本向けに翻訳・編集したものです。 


投稿:CIメディアリレーションズライター、エマ・カミングス・クルーガー

翻訳協力: 井上 晃利

編集: CIジャパン


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