【生物多様性ホットスポット】進化の方舟 マダガスカル

 こんにちは、CIインターン生の小林です。前回のニューカレドニアに引き続き、今回はアフリカ大陸の東側に浮かぶマダガスカルという国を紹介します。2011年にNHKで特集が組まれたり、20128月に映画「マダガスカル3」が公開されたこともあって、国名を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

  さて、まずマダガスカルの基本的な情報から説明します。マダガスカルは、日本の約1.6倍となる約58万平方キロメートルの面積を持ち、グリーンランド、ニューギニア、ボルネオに次いで世界で4番目に大きい島となっています。南北1600kmに国土がわたるため、場所によって植生・気候が大きく異なる国でもあります。島の東部は温暖で、熱帯雨林が広がる地域もありますが、西部は乾燥したサバンナ地帯となっており、車で東から西へ移動していくと、気候・植生の移り変わりに驚かされます。

アフリカ大陸の東側に位置する

 気候だけでなく、生息している生き物も独特です。一口に「アフリカ」とくくられがちなマダガスカルですが、16千万年前にゴンドワナ大陸から分離したため、隣接しているアフリカとは全く異なる形で種の進化を遂げてきました。この国で見られる動物相・植物相のうち、およそ90%が固有種と言われています。小説「星の王子様」に登場するバオバブも、全8種のうち6種がマダガスカル固有種となっています(記事最後に写真あり)。

 また、マダガスカルに生息している多くの動物のうち、特にキツネザルに関しては50種以上を見ることができます。つい先月も、新しく2種類のネズミキツネザルが発見されました。研究が進んでいる霊長類分野において、このような新種が見つかることは非常に珍しいそうです。哺乳類だけでなく鳥類も多く生息しており、過去には同じ国際環境NGOであるWWFBirdlife Internationalと提携して、鳥類を保全する取り組みが行われてきました。

 下の写真は、「インドリ」という世界最大のキツネザルで、マダガスカルにしか生息していない動物です。インドリは1グループあたり830haもの縄張りを必要し、飼育繁殖にも成功していないため、動物園では飼育できないそうです。ペリネ国立公園という場所で見ることができるのですが、インドリの独特な鳴き声が響き渡る中、早朝から森の中を探索するのは非常にエキサイティングな経験でした。

インドリ
 これまで紹介してきたように、非常に豊かな自然を誇るマダガスカルですが、一方で深刻な人道危機に瀕しています。国連推計によると、マダガスカル国民の70%が11ドル以下で生活しているそうです。下の写真は首都近くの様子を撮影したものですが、川のほとりに小屋が並んでいるのが見えます。

 また、2009年には政権を巡ったクーデターも起こっています。自然環境にもこのクーデターの影響は及んでおり、情勢が不安定になった2009年以降、先日のワシントン条約会議において附属書Ⅱに新たに記載されたシタン(Rosewood)の違法伐採や、野生動物の商取引などが急速に増加しています。さらに、今年の2月に襲来したサイクロンによる、洪水やバッタの大量発生によって、マダガスカルの食糧事情はさらに深刻な状況へと陥っています。

首都近くの様子
 クーデターや自然災害など緊迫した面もありますが、農村部は非常に穏やかな空気が流れており、賑やかな都市部とは違った風景が広がっています。 バオバブストリートに訪れる夕陽や、野生のキツネザルとの遭遇など、日本では味わえない光景を目にすることができるので、皆さんも是非、"進化の方舟"マダガスカルを訪れてみてください!

バオバブの下で遊ぶ子ども達

【参考記事】

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