道路の建設と森林の保護:ボリビアのアマゾンでコミュニティーの力を高める

※本ブログ記事は、CI本部の記事を日本語にしたものです。http://blog.conservation.org/2015/05/building-roads-protecting-forests-community-resilience-in-the-bolivian-amazon/#more-22009





ボリビアのアマゾン川流域の日の出。この地域のマディディ国立公園には、先住民族タカナ族が住んでいます。彼らは生物多様性が豊かな熱帯雨林の恵みに頼って生活しています。(© Jonathan Hood)


アマゾンの熱帯雨林保護の観点でみると、道路建設事業はあまり評判がよくありません。

新たな土地へのアクセスを許可すると、熱帯雨林の生態系に農業や狩猟などの人間活動を誘致することにつながります。これにより、人々や気候に無数の恩恵を与える重要な熱帯雨林の生態系を劣化させる可能性があるからです。

その一方で、道路は地方の暮らしや生活力を高めるために無くてはならないものです。

では、どのようにして熱帯雨林の保護と地方のコミュニティーの快適な暮らしの両立が実現できるでしょうか?

ボリビアのマディディ国立公園は、190万ヘクタールのアマゾンの熱帯雨林を保護しています。公園の東側の境界線沿いの新たな道路建設計画は地元コミュニティーが生産する産品の出荷先である市場へのアクセスを確保する一方で、公園内への人々のアクセスも高めるため、熱帯雨林の減少につながる可能性があります。


マカフア地域のタカナ族のリーダー、Javier Deladilloが、CIスタッフのMargarita Moraに彼らが保護する熱帯雨林の範囲を説明している様子。地元住民が森林を保護することの交換条件として、CIは生活設備やその他の支援を提供し、地域の人々が手工芸品の製作と販売を持続的に出来る環境を整える手助けをしている。(© Conservation International/photo by Andy Wilson)

CIの取締役会メンバーであるJohn de Neufville氏の支援により、CIは先住民族であるタカナ族と協力して、公園の境界線付近の熱帯雨林地帯の保全に努めています。地元住民は保全活動を行う代わりに、CIから専門的な技術、設備、そして電気や、彼らの非木材産品、手工芸品、そしてエコツーリズム事業への発展を支援を受けることができます。このことを「保全契約」と呼んでいます。

これらの保全契約は、熱帯雨林を保護し、道路と公園間の緩衝区域を維持しながら、タカナ族の人々の営みを支えています。現在の契約では20,688ヘクタールを対象にしていますが、プロジェクトはまだまだこれからです。このプロジェクトではさらに気候変動、世界的な市況の変化、無規制な資源採取などを含む外部圧力に負けない強さを備えた地域社会の構築に貢献しています。


これらの保全契約を通じて、CIスタッフは地元コミュニティーの力を高める手助けを行っています。これらはJudith Rodinの新書「The Resilience Dividend: Being Strong in a World Where Things Go Wrong」の中で解説されています。

どのような課題に直面したとしても、適応力を備えたコミュニティーは、負の事態からよりうまく回復し、新しい環境に順応することが可能です。アマゾンの熱帯雨林においては、気候変動、人口増加、道路の建築に伴う森林減少などが障害の例として考えられます。

 

タカナ族の地域でありマディディ国立公園の境界に位置するSanta Rosa de Marvilla在住のHerlan Chuquiがアサイーベリーを採取する様子。専用にデザインされたアイゼンを装着して木に登りアサイーベリーを収穫します。これらのベリーはつぶされ濃縮されたのちに国内のレストランなどへ販売されます。(© Conservation International/photo by Andy Wilson)



スノーボード世界記録保持者でありCIの支援者であるJohn de Neufvilleがタカナ族のOrlando Chuquiとともに持続可能な栽培方法で作られたアサイーベリーを視察しているところ。Orlando Chuquiが属する先住民族であるタカナ族のコミュニティーでは、ボリビアのマディディ国立公園に接する熱帯雨林の保護に努めています。(© Conservation International/photo by Andy Wilson)
 
CIがボリビアで実施している先住民コミュニティー強化プログラムでは、Rodinの新書にも登場を、コミュニティの環境適応力(レリジエンス)を高めるための5つのポイントを実証しています。

1. 意識性:コミュニティーが天然資源の価値を理解すると同時に、それらの人口増加、市場ストレス、そして気候変動などに伴う脆弱性を把握すること。
2. 多様性:野生のアサイーベリーで作ったジュースを販売するなどの経済活動を行い、所得源を多様化することで外的な脅威を緩和すること。
3. 統一性:隣り合うコミュニティーがタカナ族協議会を通してお互い協力すること。
4. 自己制御性:コミュニティーの人々が近隣の熱帯雨林のパトロールを行い、緩衝地帯を維持するにあたっての外的脅威を確認すること。また、保全契約違反者への内部的な制裁、そしてコミュニティ外の人々によるコミュニティの土地での無許可の行動に対して報告並びに告訴すること。
5. 適応性:コミュニティーが変化する環境に合わせてそれぞれの方針を調整すること。例えば、新しい道路による影響を低減するために、特定の保全区域を定め、守ること。






ボリビアの熱帯雨林で採取されたベリーから作られた濃縮アサイージュースをろ過しているところ。CIでは地元コミュニティーに設備と支援を提供し、その代わりにマディディ国立公園に隣接する熱帯雨林地帯を保護する契約を結んでいます。(© Conservation International/photo by Andy Wilson)


新しい道路建設による脅威と機会を理解することで、マディディ国立公園沿いに暮らすコミュニティーの人々はよりたくましく周りの環境に影響されずに生活出来ます。また、変化への耐性もアップすることで、彼らの熱帯雨林保全活動をより効果的に進め、熱帯雨林が提供する恩恵も有効に活用することが出来ます。

アメリカ合衆国国際開発庁とスウェーデン国際開発協力庁共催のGlobal Resilience Partnershipを活用して、ロックフェラー基金はRodin代表のもとで世界中のさまざまな地域でコミュニティの生活力(レリジエンス)を高めるよう努めています。5月5日に開催された年次行事であるニューヨークディナーでは、CIは環境問題に対するJudith Rodinとロックンフェラー基金のリーダーシップを評価して、コンサベーションヒーロー賞を授与しました。


(以下の動画ではRodin氏が脆弱なコミュニティーにとってレリジエンスを高めることの重要性を説明しています。)







人口の増加そして気候変動に伴う圧力が世界中のあらゆる生態系に悪影響を与える中、コミュニティの力を高め、課題に立ち向かう、Rodinとロックフェラー基金の活動のような成功事例に、多くの組織やコミュニティーが追随することを期待しています。


Andy WilsonはCIの開発担当バイス・プレジデントです。



(翻訳協力:CIジャパンインターン 江島真)

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