”ブルーカーボン”とはなんだろう?



CIジャパンインターンの東海林です。今回は「ブルーカーボン」についてのブログ記事を選んでみました!正直、このブログを翻訳するまでブルーカーボンについてほとんど知りませんでした。名前は聞いたことある、程度の認識でした。マングローブだけでなく海草などの生態系も炭素を固定していることには驚きました!そして、ブルーカーボンについて知ったことにより、マングローブなどの存在の大切さに改めて気付くことが出来ました。また、世界各地で水害なども多く起きている今日にはブルーカーボンの生態系について知ることはもっと必要なのではないでしょうか?皆さんも是非ブルーカーボンの現状について覗いていって下さい。

※本ブログ記事は2016111日に投稿されたCI本部のブログ記事”What's on Earth is Blue Carbon"を和訳したものです。



編集者メモ:「気候適応」から「生態系サービス」など、こうした環境用語は、今やどこでも見られます。CIブログは、そうした”業界用語”についてわかりやすく説明する記事を“What on Earth?”のシリーズで解説しています。今回は、「ブルーカーボン」についてです。CIの海洋戦略ディレクター、エミリー・ピジョン博士に聞きました。そもそも、この用語を聞いたことがない人も多いでしょう。しかし、気候変動を抑制するために非常に大切な存在です。

Q.まず、「ブルーカーボン」とは何でしょうか?

「ブルーカーボン」とは、自然の力で海や沿岸の生態系に固定される炭素という意味からきた呼び方です。マングローブ、海草、潮汐湿地、これら3つの沿岸の生態系サービスが、炭素を海底に留め、固定させています。海の中には、”全”炭素の約半分が“青い”炭素として、固定されているのです。

Q.ブルーカーボンが大事なのはなぜですか?

大気中に放出される炭素は、気候変動の主な原因です。海の生態系は、大量の炭素を固定できます。同じ面積がマングローブ林だった場合と比べて、通常の陸の森林の10倍までの炭素を固定することができるのです。

Q.そんなにたくさん固定できるのですね。なぜそんなに固定できるのですか?

地上の生態系と違い、海や沿岸の土壌は炭素を長い間閉じ込めて、存続することができます。このような酸素が低い状態の土壌の水は、何千年から何世紀の間も炭素を閉じ込める事が出来るのです。

Q・それはつまり、マングローブ林を切ることは、気候問題にとって良くないということですね?

はい、全くその通りです。マングローブのような種の木々は、大気や伸びた根、土壌すべてから炭素を吸収することにとても優れています。これらの木々を枯らしたり、土壌中で邪魔をしてしまうと、彼らが固定している炭素はゆっくりと大気に戻っていってしまいます。ほとんどの場合、沿岸に住む人々がこれらの影響を一番受ける事になるでしょう。

Q.なぜ沿岸の人々が一番の影響を受けると言えるのですか?

気候変動によって、海面上昇や嵐が増加してしまうからです。マングローブや他の沿岸の生態系は、波や高潮、洪水の影響を低く抑えるという、自然の緩衝剤の役目があります。もし、海面が上昇し続けたら、高潮はさらに高くなり、そしてもし沿岸の村がマングローブ林を切ってしまったら、海に対してほとんど無防備であることと変わりなくなります。発展途上国における嵐に関する研究では、マングローブは沿岸エリアの高潮による被害を最大50%減らすことができると算定されました。

Q.興味深いですね。他にも沿岸の生態系のもつ特別な理由はありますか?

CIの気候適応科学者ピジョン博士によると、沿岸の生態系はただ、炭素と沿岸エリアの守備だけではないようです。「生物多様性のことを忘れてはいけません。ブルーカーボンの生態系は、海の生物にとって重要なすみかです。そしてその海の生物は私たちの食糧や、収入を支え、世界中の沿岸の国々の水質を改良し保持しているのです。」と言います。


Q.これまでにどのくらいのブルーカーボン生態系を失ってしまったのでしょうか?

たくさんです。大きすぎていい数字とは言えません。1940年代以降、世界中で約半分のマングローブが失われ、1880年代以降では、世界で四分の一の潮汐湿地が失われました。そして、1990年以降、世界はそれまでの半分の海草を失ってしまいました。

Q.それはひどすぎますね。なぜ失われ続けているのでしょうか?

 主な理由はエビと魚のための養魚池など、沿岸地帯の開発です。採薪や、汚染、ダムの建設も原因の一つです。フィリピンのように、いくつかの場所では、国の半分以上ものマングローブ林がエビの養殖池に変わってしまいました。このような国の沿岸のコミュニティーは、この現状が、毎年台風による多くの被害を自分たちへ与えていることに気付き始めています。

Q.どれくらい大変な状況なのですか? 

2013年に発生した台風第30号(Typhoon Haiyan)のケースを取ってみてみましょう。2013年、台風第30号はフィリピンの中心のビサヤ諸島の大部分を破壊させました。、最大6メートルの波と沿岸エリアでの数メートルに達した洪水によって6300人もの人々が亡くなったのです。さまざまな要因破壊の原因と考えられましたが、特にマングローブ林と沿岸の森林の生態系システムの損失と劣化がこれらの地域を無防備で脆弱な状態にさせ、ここまでの災害を引き起こしたと考えられます。マングローブ林の80%以上が養魚池と海老の養殖池の設置のために、ビサヤ諸島の沿岸に沿って取り除かれていたのです。
 

Q.驚きです。もし人々が単純にマングローブか海草を沿岸沿いに植え直したらどうなるのでしょう?

ええ、既にフィリピンを含む何か所かで試されました。しかし、時をかけて生態系を築きあげる状態を再び作り上げることはとても難しいのです。数本のマングローブを植えるということだけでは、完全に変わってしまった環境で再度マングローブが成長できるとは保証されません。生態系の復活は可能ですが、その復活は正しく復活されるべきであって、もし沿岸が非常に変化していたら、とても高くつくこともあります。いくつかの例を見ても、すみかの復元は一晩でできることではないと分かるでしょう。「例え、マングローブ、湿地、海草が復元された後でも、もし生態系が破壊されていたら、大気中の炭素を生態系に戻すまでには何世紀もかかります。」とピジョンは言います。


科学者がオーストラリア、ボタニ―湾で調査している様子。マングローブ、海草、塩性湿地は大気中の炭素を吸収し、土の中の根に炭素を固定します。(© Conservation International/photo by Sarah Hoyt)

Q.私たちにできることは何でしょうか?

数年にわたるブルーカーボンの研究のおかげで、これらブルーカーボン生態系が生物多様性を維持していく上でも気候を守っていく上でも、非常に重要だという現実に多くの人々が気付き始めました。パリ協定で多くの国が排出削減を約束しているように、ブルーカーボンを排出削減の考慮に入れることはとても大切です。それと同時に、生態系の保全を促し、それらを取り戻すために、多くのブルーカーボン保全のイニシアチブがにここ数年で形になりました。

Q.どのようなイニシアチブですか?

CIを含む研究機関と、政府、地域の人々とのパートナーシップがここ数年で形成されています。マングローブや海草、塩性湿地の保全と再生を科学や政策、沿岸管理を通じて加速させる「ブルーカーボンイニシアチブ」が始まりました。さらに最近では、オーストラリアで、ブルーカーボン生態系を保護し、温室効果ガスを削減するために、インターナショナル・ブルーカーボンパートナーシップが政府によって立ち上げられました。CIはインドネシア、アメリカ、コスタリカ、アラブ首長国連合、フランス、そしてその他の国々や団体が加わる、創立メンバーです。
「過去5年間で、自然保護活動家、科学者、そしてコミュニティーは、ブルーカーボン生態系についてだけでなく、気候変動の影響をもろに受ける沿岸コミュニティの大切さに関する認識を大きく啓発してきました。国とパートナーシップの繋がりに重点を置く「ブルーカーボンパートナーシップ」は、世界的に失ったブルーカーボン生態系の再生の可能性を持っており、気候変動問題への対処に貢献しています。 

Q.事態は進展しているようですね。

良いスタートではありますが、ブルーカーボン生態系に関する最近の記事にあるとおり、これ以上海洋の緑の生態系を失う余裕はわれわれには全くありません


投稿 CIエディトリアル・ディレクター、ブルーノ・ヴァンダ―・ヴェルデ
翻訳協力 東海林優衣







コメント

人気の投稿