何故先住民族の権利は問題なのか?

※本ブログはCI本部の記事「Why indigenous rights matter?」を和訳したものです。

エディターズノート:気候変動におけるパリ協定のように、グローバルな政策決定での先住民族への関心が高まっている、という事は、先住民族の知恵や権利、そして最も生物多様性の重要な場所を保護していくための彼らのきわめて重大な役割への理解が高まってきている、という事の反映です。


保全団体や開発団体によって考慮される先住民族権利の重要性とは裏腹に、これらの政策決定にかかわるネットラークの外側では、先住民族権利に関しての認識は、遅々として広まっていかない現状があります。 リオやニューヨーク、ブリュッセルなどで、粘り強い交渉の末にひねり出された環境関連の国際政策が、実に およそ3億7千万人にも及ぶ世界中の先住民族はなはだしく有害に働く、という事実について、西洋社会において自然保護にかかわっている多くの人々はとても驚かれるかもしれません。

下記のインタビューにおいてコンサベーション・インターナショナルの先住民族および伝統的民族プログラムのディレクター、ミニー・デガワンは、自然保護に考慮する際、先住民族が直面している課題について、焦点を当てています。
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質問:国境の持つ意味合いが薄れつつあるグローバル世界の中で、なぜ先住民族団体だけが、特別の扱いや認定を受けるに値するのでしょうか?

回答:先住民族自身が特別の権利や扱いを求めている訳ではありません。そのことをはっきりさせましょう。むしろ、彼らは、何世代にもわたって伝統的な領域を持続可能に管理してきた貢献に対する認知、そして、土地の非所有を通した最悪の形での抑圧の対象となり、現在も対象となり続けている事実への認知を求めているのです。さらに、この事実は、気候変動などと関係する可能性のある将来の変化に対応するための知識を含んでいるかもしれず、彼らの知恵の根本を破壊しています。

先住民族は気候変動の被害者で、且つ、環境との何年にもわたる相互作用から発展させてきた知識を持っている、という事なのです。それは人類への利益となるでしょうし、彼らは解決策を探るため他の人々との連携を求めているのです。しかも、それは、連携、パートナーシップでなければなりません。(同化や強制ではなく)

質問:世界の先住民族が直面している問題の中で、おそらく最大と考えられるものは何でしょうか?

回答:先住民族は多くの課題に挑戦しています。わたしが思うに、海面上昇など、自然に由来する先祖の土地の消失、もしくは不法な侵略的開発による土地の消失です。世界的に先住民族は彼らの領土を巡って土地権の尊重と認知を求めています。なぜなら、土地が彼らを定義しているからであり、土地がなければ彼らは先住民族ではなくなります。彼らの知識体系や、文化、統治システムはすべて大地に根ざしています。これが、保護地域を拡大する、という事が問題になる理由なのです。つまり、保護地域の拡大の可能性がある場所とは決まって先住民族の住む土地であり、そこでは土地の非所有化の畏れがあるからです。先住民族が政策決定者や資源にアクセスしたいと言えば、彼らの権利を法的に認めてもらうために適合させなければならなくなります。

気候変動は先住民族にとってもう一つの大きな課題です。実際、彼らの多くは二倍の被害に見舞われている、としばしば感じています。つまり、わずかしか気候変動のための原因に寄与していないにもかかわらず、結果のもたらす衝撃をモロに受けている、と感じるのです。

気候変動を避けるための努力すら、例えば代替エネルギーの資源を巡ってなど、先住民族を被害者にしてしまう場合があります。例えば、同意なしに先住民族の土地にたてられた風力発電施設は、フィリピンのコルディレラ地方で持ち上がった計画のように、彼らにとっては、食料を生産確保するために使用できる土地を奪う、という結果になっており、最終的にコミュニティは計画を拒否しました。もし電力が生産されれば、このような計画は該当コミュニティには利益をもたらさずに、むしろ彼らには特に損害を与えることになってしまうのです。

質問:なぜ森林や大規模な開発されていない地域は先住民族によって管理されるのが良いのでしょうか?

回答:先住民族による主張として、このような地域は彼らの祖先に遡って何世代にもわたって既に管理されてきているため、部外者が行うよりも有利な位置にいます。加えて、先住民族と彼らの大地との関係は深いため、彼らがその権利を保持しているならば、その土地の保護は確実性を増すでしょう。彼らがもし将来にわたっても立ち退かされることはない、と約束されるなら、彼らは子孫のために、より生産性の高い森作りを試みると思います。

そしてわたしたちは、こういったアプローチが、既に効果があるという証拠を持っています。研究結果は保護区よりも、地元民によって管理されている森林の方が伐採や破壊が少ない、という事を証明しています。

質問:パリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)のように、将来、 先住民族に肯定的と思われるグローバルな政策決定過程の影響に関してあなたはどのような希望を持っていますか?

回答:国際条約や協定は、もし先住民族がそれを認識し、その履行に決定権を持つことによってエンパワメントされるのであれば妥当だと言えます。

しばしば、先住民族コミュニティはこれらの協定等に関して全く知識を持っていませんし、また、そのような彼らの現実にそぐわない国際協調の場に参加を望まないコミュニティもあります。多くの場合、先住民族は負の影響を被ってから初めてそのような国際協調のプロセスについて知っていくのです。例えば、保護地域をもっと拡大しようとする時、ほとんどの場合がそこは先住民族の土地であることから影響を受けることになります。それゆえ、このような情報をもっと効果的に拡散させていく方法がないかぎり、先住民族はそこから利益を得ていく事は難しいでしょう。

質問:あなたの組織はどのように先住民族の権利について普及を目指しているのでしょうか?

回答:コンサベーション・インターナショナルは保全分野における先住民族の貢献を認識しており、先住民族コミュニティと共同で働いています。わたしたちは先住民族と共同して政策を発展させてきた最初の組織の一つで、すべての業務における先住民族の権利の尊重を確立してきました。

その一つの方法は、先住民族フェローシップ・プログラムで、それは先住民族のリーダーシップの可能性を強化するプログラムを開始していくようなユニークな機会を提供しています。それは、国際会議などの直接参加を通じて、複雑な国際的な政策作成過程を前進させるための手段を身につけさせる事と同時に、彼らがコミュニティの伝統を尊重するやり方を調べていく事などを可能にしています。

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ミニー・デガワンはコンサベーション・インターナショナルの先住・伝統民族プログラムの責任者で、彼女の先住民族リーダーの保護奨学金は受理されました。より詳しい情報や申請はこちらから。


By ブルーノ・ヴェルデ(CI エディトリアルチーフ)

翻訳協力:中村 歩

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