現地からのストーリー:伝統を通して自然を守る先住民コミュニティ

 


By. Kiley Price

1.伝統の力でアマゾンを再生するひとびと 

ポルトガル語で「muvuca(ムブカ)」とは、伝統的に大勢の人が一つの場所に集まることを意味しています。アマゾン盆地のコミュニティは、この言葉からインスピレーションを受けて、彼らの暮らしている土地を囲む森林を再生させる新たな方法として、「種子のムブカ」を開発しました。

ブラジル北部のシングー川流域は、アマゾンの熱帯雨林とセラード回廊の乾燥したサバンナに囲まれています。かつては繁栄していたこの地域の大部分は、時間の経過とともに深刻に劣化し、大豆農園に転換され、2019年のアマゾンの大規模火災によって荒廃しました。

森林を再生するために、シングー川流域の人々はムブカ農法を取り入れました。カシューナッツやアサイーなど、この地域に自生する植物の種を大量かつ多様に蒔くのです。
コンサベーション・インターナショナルの資金と科学的技術面での支援のもと、先住民と農家の人々は、ブラジルの自然保護団体である「Socio-Environmental Institute」と10年以上に渡って協力しこの手法を完成させました。伝統的知識を用いて利用して、土壌を回復しながら、その土地に自生している植物を最も多く収穫できるような種子を確保しました。

ムブカの様子
©Conservation International/ photo by Inaê Brandão

地元の農家や先住民、地域コミュニティの人々550人ほどで形成された「シングーシードネットワーク」は、「ムブカ」のために必要な種子を集めました。ムブカは通常90kgほどの種子で構成されており、森林1ヘクタールあたり120の多様な植物を育てることができます。このグループは、取り組みが始まってから既に180万本以上の木を植えるために取り組み、必要な種をまき、水質の改善から農産物の生産向上まで、地域に様々な好影響をもたらしています。この手法はまた、多様性のある原生種で構成された森林を育てることで、気候変動への対策にもなると考えられています。単一種の樹木で構成された森林よりも、はるかに多くの炭素を吸収できることが研究でわかっています。

「ムブカは、生物多様性への好影響以外にも、食料安全保障や生計といった社会的・経済的な課題にも取り組んでいます。」とコンサベーション・インターナショナル・ブラジルのシニア・バイスプレジデントのマウリシオ・ビアンコは説明しています。

「森林再生のプロセスから収入を得て、豆、エンドウ、トウモロコシなどの食用作物の生産量を増やすことができます。」

「森林で暮らす人々は、森を守り、再生することに最も積極的です。そこから何が得られるかをはっきりとわかっているからです。」

ムブカについて詳しくはこちらこちらの動画をご覧ください。(英語字幕)

2. ウミガメの保護区をつくる先住民族のリーダーたち

フィジー・ラウシースケープにて
© Conservation International/photo by Mark Erdmann

フィジーのラウ諸島の海域には、ダフ・リーフの色鮮やかなサンゴ礁と数え切れないほどの魚たちに囲まれた絶滅危惧種のアオウミガメ、タイマイ、アカウミガメの聖地があります。
しかし、このサンゴ礁は、乱獲と気候変動による海水温の上昇のリスクにさらされています。

この海域と、そこに暮らす生物を守るために、フィジーのラウ諸島にあるマバナ村はコンサベーション・インターナショナルと協力して、新たな海洋保護区を設けました。6.2平方kmに渡るこの保護区では、ウミガメの生息地の脅威となる漁業やダイビングなどの活動が禁止されます。新型コロナウイルスの流行に伴う規制が解除された後は、このエリアのウミガメに衛星タグを付けて、彼らの行動をさらに理解し、最も効果的に保護する方法を探る予定です。

この海洋保護区は、ラウ州全体を保護するための12年戦略の一環としてフィジー政府、ラウ州の村長たち、コンサベーション・インターナショナルのパートナーシップによって2019年に開始しました。保護区域はフィジー東部の60の島々からなる335,000平方kmの地域に渡ります。

ラウ州の村長たちの支援を得たこの計画は、漁師と地域コミュニティの食料と仕事を支える海域を違法漁業から守りつつ、島々を囲んでいるサンゴ礁が気候変動から受ける影響に対するレジリエンス力を高めることも目的としています。

この取り組みはマバナ村の元村長、フィジーの元首相の故ライセニア・ガラセ氏の多大な努力によって実現しました。ガラセ氏はダフ・リーフ海洋保護区の創設を支援し、フィジーのラウ諸島全体の保全に貢献しました。

3.太古の木を守って文化を残す

ニューカレドニアの先住民族のカナック族の人々にとって、パニエ山の雲霧林は、新鮮な水、食料、伝統的な薬など、生活に必要なものすべてを提供しています。

この森林はカナックの人々が生きていくために重要な役割を果たしているだけでなく、彼らのアイデンティティの中心でもあります。パニエ山は樹齢千年の巨木、カウリの絶滅危惧種「dayu biik(ダユ・ビーク)」が唯一生息していますが、カナックの人々はこの種が古代の先祖の魂が宿っていると信じています。
エミー賞を受賞した写真家のショーン・ハインリクスのショートフィルムの中で、ギリオ・ファリノは「カウリは地球の中で最も古い植物の一つです。」と語ります。「長老には、スピリチュアル的な側面もあります。カウリは最も古い植物で、すべての自然の源だと私は信じています。 

しかし、これらの森林は、気候変動の影響でより深刻化する干ばつや、ブタやシカなどの外来種による島の土壌侵食の危機に直面しています。

カナックの人々は、彼らが崇敬するこの木を守るために、過去20年間コンサベーション・インターナショナルと協力し、パニエ山の自然保護区5,400ヘクタールを管理するDayu Biik Association(ダユ・ビーク・アソシエーション)を設立しました。

現在カナックの人々は、この保護区を10,000ヘクタールに拡大し、すべてのカウリの木と文化遺産を守るための取り組みを進めています。

カバー写真:ニューカレドニア、パニエ山のカウリの木 (© Shawn Heinrichs)
この記事はコンサベーション・インターナショナル本部ブログ "Notes from the field: Indigenous peoples protecting nature through tradition " を日本向けに和訳・編集したものです。

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