イベントレポート:「五感で感じよう:100年先へ想いを伝えるエシカル展」に参加して

 



”エシカル”と聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか。エシカルはethicalと書き、日本語にすると”倫理的な”などと訳される英語です。この資本主義社会において、世界の経済は私達の消費行動に支配されています。需要あるものを生産し、それに利益を上乗せして販売し、その利益で生活してまた生産を繰り返す、それが資本主義社会なのです。それゆえに、「大量生産・大量消費」型の経済システムが浸透し、それによる弊害も数多く出てきました。それに対して出された消費行動の形が「エシカル消費」でしょう。エシカル消費とは、「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」とされ、2015年9月に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールのうち、特にゴール12に関連する取組であるとされています(消費者庁,n.d.)。「フェアトレード商品を購入する」というのもエシカル消費の代表例の1つでしょう。これに伴い近年は「消費者教育」というのも盛んになっているように感じられます。現に私も大学在学時に消費者教育の科目を履修したことを覚えています。

今回私は、202299日にTRUNK (HOTEL) 渋谷で開催されたfreewill社主催の「五感で感じよう:100年先へ想いを伝えるエシカル展」に参加しました。イベントは大きくトークセッション、物販、ワークショップの3本柱で構成されていました。物販ブースには日本中から集まったエシカルな商品が並んでいました。これらの物販ブースには私が見る限り全て、作り手がその場におり、来場者は作り手と話しながら商品を吟味している姿が印象的でした。


15
15からは、我らがCIジャパンの代表理事である日比が「地球環境×生物多様性 部門」にパネリストとして登壇するため、私はこれを聴講しました。セッションには日比の他に一般社団法人more trees事務局長の水谷伸吉氏、放送作家の谷崎テトラ氏、環境活動家の谷口たかひさ氏がパネリストとして登壇し、トークセッションの会場は多くの聴衆でにぎわっていました。トークセッションでは登壇者それぞれの自己紹介から始まり、各分野から地球環境の現状やそれに向けた社会の動きについて紹介があり、終始白熱した議論が展開されていました。


このトークセッションで私が最も印象に残ったことは「気候変動は安全保障上の問題になりつつある」という話です。谷口氏によると、実際パキスタンが豪雨で1/3沈んだが、人類の2/3は沿岸部に住んでおり、今後気候変動による海面上昇が進行すると、人々の生活の安全が脅かされるといいます。また、日比も今年初めて防衛白書に気候変動のことが掲載されたことに触れ、気候変動が単なる環境問題ではなくなっていることを述べていました。 彼らのディスカッションから感じたこととしては、やはり私達が獲得する資源というものは自然から与えられるものにかなり依存しているということです。そしてそれは有限であり、またそれは遠く離れた場所とも繋がっていて、それは不平等なものでもあるという点です。自然は水や食料は当然のことながら、人が安住できる大地やきれいな空気、快適な気温までも提供しています。大気や水は地球全体を循環するため、あるところの事象が他のところにも時間の差はあれ影響し、時には大きな不平等をもたらします。特にインフラが完全に整備されていなかったりなどして生態系サービスへの依存度が比較的高い途上国の人々にとっては、それらが急激に変動することは生命の維持にも関わります。そうなると、争いの根源となる不平等が発生し、戦争が起こるわけです。途上国の小国が争いごとを行うことは一見小さなことにも見えないこともないですが、それは大国間との関係もあるため決してローカルな話題で終始しないことは、昨今のウクライナ情勢を見れば自明でしょう。平和のために環境を守るというのは、言われてみれば確かにそうなのかもしれませんが、その言葉を聞くまであまり意識をしていなかったので、私は心底感心しました。 しかし、「世界の平和のために気候変動への具体的な対策をとろう」と呼びかけたところでこれまた簡単には進まないのではないでしょうか。「平和あってこその自然保護」、「余裕あってこその自然保護」でもあると思うからです。「鶏が先か、卵が先か」というような問題のような気がするということです。今日明日の自身の生活がギリギリの人々が、遠い将来や地球の裏側の見知らぬ人と自然に対する搾取に思いをはせ、それを基にした行動は現実的に期待できないと思います。谷口氏も述べていましたが、今日明日の生活に必死な人々にとって環境保全などは二の次三の次なのです。谷口氏は日本で気候変動への対策をはじめとした環境問題対策が選挙などでの目玉の争点にならない理由としてそれを挙げていました。 では、どうすればいいのでしょうか。しかし、注目すべきは、このイベントには驚くべきことに多くの人々が来場している点です。やはり、そのような倫理的な事柄に配慮した行動に関心のある人達もいるのです。彼ら・彼女らがなぜこのイベントに来場しているのかは私の知るところではないですが、彼ら・彼女らはそのエシカルな消費の形や今後の地球の将来になんらかの関心を持ち、希望をもち、魅力を感じていることはほぼ間違いないでしょう。そのような人々の需要に決定的にマッチするようなものをつくり、売り込んでいくことが解決の小さな糸口の1つなのだろうと、イベントに参加して少し感じました。 少し話はそれますが、私が大学(学部)生だったときに和歌山県にあるとある果物農家を訪れた際、そこの主人が述べていた言葉を思い出しました。主人曰く、「都市に住んでいるお金持ちの人達は本当においしい果物を食べたいと思っている。そういう人達を満足させられるような最高級のものを作り、それ相応のお金を払ってもらい、都市にあるお金を地方に流す。それが本当の地域活性化・地域再生というものではないでしょうか。」と。人間の欲望は無限です。日本の上位数パーセントからいかにお金を引き出せるものを創り出せるか、今後の生産のあり方と消費趣向の創出でまだまだ可能性は広がるでしょう。

最後に1つ、私が注目したのは、セッションで最後の一言を求められた日比がジェンダー平等の重要性に言及した点です。筆者はCIジャパンでインターンを始めてから、過去に日比がジェンダーと気候変動に関する関係性について言及していた記事(Urata, 2020)を読み、それ以来このことについては関心をもっていました。日比曰く、世界の人口のほぼ半数が男性で残りのほぼ半数が女性であるにもかかわらず、物事の決定の場にいるのはほとんどが男性である状況を変えていかなければならないと語っていました。ジェンダー平等後進大国日本において、まずはその点も最優先に解決しなければならないのではないでしょうか。来年以降はジェンダーの話もトークセッションの1テーマになることを期待します。


<参考文献> 

消費者庁(n.d.)「エシカル消費とは」最終閲覧日2022914https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awareness/ethical/about/ 

Urata Yoko (2020)各界のエキスパートにASK! SDGs達成のシナリオ、どう考える?」最終閲覧日2022922https://www.elle.com/jp/culture/music-art-book/g34792783/ask-sdgs/?slide=4

  

ライター:西川聖哲CIジャパンインターン)

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