記録的な森林減少により、アマゾンは永久に姿を消してしまうかもしれない

 



ブラジルの熱帯雨林が深刻な事態に陥っています。新しい衛星データから、2022年前半にニューヨーク市の6倍にあたる面積の森林が減少したことが明らかになったと、ガブリエラ・サ・ペソア(Gabriela Sá Pessoa)とカーシャ・パテル(Kasha Patel)がワシントン・ポスト紙(the Washington Post)で報じています。これは、2016年以降最も高い森林減少率です。

近年、ブラジルでは、政府が環境保護を弱め、環境関係機関の予算を削減したため、違法伐採を防止する機能が働かなくなり、森林減少が急増しています。コンサベーション・インターナショナルの調査によると、ブラジルの保護区の4%が法的に保護レベルを下げられたり、または何らかの形で縮小されていることが判明しました。

ブラジルをはじめとするアマゾンの森林減少は、熱帯林の生態系を破壊し、悪影響を与えています。広大な土地から木が失われることで、森林は保水能力を失い、大気中に水を再循環させることができなくなります。さらに、気候変動による気温の上昇と相まって、干ばつが長期化し、火災が多発するようになりました。

このような破壊のサイクルが毎年続けば、熱帯雨林は生態系の「ティッピング・ポイント(転換点)」に達し、永久に乾燥したサバンナへと姿を変えてしまうかもしれません。現在、アマゾンの約15%がすでに失われており、今後20〜25%の森林が失われてしまったら、この転換点に達するだろうと予測する科学者もいます。

そして、ひとたびこの重大な局面を迎えてしまうと、気候変動の影響は加速する一方です。

コンサベーション・インターナショナルの気候科学者ウィル・ターナー(Will Turner)は、「私たちは、世界中の生態系で転換点に近づいています。」と話します。「例えば、永久凍土や森林被覆の緩やかな喪失が続くと、これらの損失は雪だるま式に大きくなり、最終的には地球を取り返しのつかない変化へと押しやるでしょう。」

「突然、一部のサンゴ礁が死滅するのではなく、地球規模ですべてのサンゴ礁が一度に死滅することになるのです。」とターナーは続けます。「氷が少し溶けるだけでなく、非常に大きなスケールの氷床全体が崩壊するのです。また、アマゾンの熱帯雨林は、ここ数十年、広範囲に渡って森林減少が進んでいますが、気温の上昇と降水量の変化によって、完全に消失する可能性すらあります。」

このシナリオは、地球の気候に深刻な影響を与えるでしょう。コンサベーション・インターナショナルの最近の研究によると、アマゾンの熱帯雨林には、地球上のどの地域よりも回復不可能な炭素(つまり、失われた場合、私たちが生きている間に回復することができない炭素)が多く貯蔵されていることが明らかになりました。

「このような転換点は、自然界のあらゆるものがつながっていることを気づかせてくれます。もちろん、私たちの解決策が複合的な効果をもたらすという利点もあります。森林を保護することは、アマゾンが自らを維持する力を高めると同時に、地球上で最も効果的に炭素を蓄積する自然のエンジンにも力を与えることになるのです。私たちは、この状況を覆す手段を持っています。今こそ、それを使う時なのです。」


カバー写真:ブラジル・パラー州タパジョス森林国立公園 © FLAVIO FORNER
記事翻訳:CIジャパンインターン 西川聖哲
この記事はコンサベーション・インターナショナル本部ブログ “News spotlight: Record deforestation could forever transform the Amazon” を日本向けに和訳・編集したものです。

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