CIジャパンスタッフインタビュー ” 「世界を舞台に働く」とは” 第6回目 ウィリアム・ダンバー
みなさん、こんにちは! CIジャパンの社会人インターン、小宮です。今日は、CIジャパンスタッフインタビュー第6弾として、生物多様性条約の政策提言に関わっている、サステナブルランドスケープ・シースケープ、国際政策プロジェクトマネージャーのウィリアム・ダンバーさんにお話を伺いました。
ウィリアムさんの生い立ちやCIで働くようになるまで、また現在カナダのモントリオールで開催されている、CBD-COP15の論点までお話をいただきました!
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What’s CI?
米国ヴァージニア州に本部を置く国際環境NGO。「自然を守ることは、人間を守ること。」をスローガンに、地球が長い年月をかけて育んできた自然生態系を保全し、人間社会が自然と調和して生きる道を具体的に示すことをミッションとする。世界30カ国以上で約1200名のスタッフが2,000以上のパートナーと共に、持続可能な社会の構築を目指して活動している。
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小宮:ウィリアムさん、本日はよろしくお願いします!まず、ウィリアムさんの生い立ちについて教えてください。
ウィリアム:私はアメリカ、オハイオ州のクリーブランドという場所で生まれ、大学教授の父と母の元で育ちました。家族4人でよくハイキングなどをしていて、アウトドアアクティビティが好きな子供でした。
小宮: 幼少期から日常的に自然と触れ合っていたんですね。親元を離れて、なぜ日本で働くことを選ばれたのでしょうか?
ウィリアム: 最初は、大学の授業で外国語を選択する際に、面白そうだったので日本語を選んだのがきっかけでした。日本に初めて来たのは、大学時代の交換留学の時です。そこで、日本にもっと滞在したいと思い、英語の教師として働き始めました。そして、大学院ではアジア地域研究で日本について研究しました。2004年くらいから落ち着いて日本で暮らしていて、奥さんも日本人です。
小宮: そうだったんですね。環境問題とはどのように関わるようになったんですか?
ウィリアム: 大学では人類学を学んでいましたし、もともと環境領域が専門の分野ではありませんでした。環境領域に関わるようになったのは大学院卒業後に、国連大学で働き始めたことがきっかけです。
卒業直後は編集や翻訳業務など、言語に関わる仕事をしていたのですが、のちにコミュニケーションコーディネーターとして国連大学で仕事を始め、様々な環境プログラムにプロジェクトマネージャーとして参画しました。生物多様性条約の会議やCOPに参加しながら、そこで7年間働きました。
小宮:最初はコミュニケーションコーディネーターとして、参画されたんですね!環境領域とは違う専門だったとは知りませんでした。
ウィリアム: 入口はコミュニケーション担当でした。
コミュニケーションコーディネーターは、SNSや、ウェブサイト、ニュースレターをはじめとする広報などを担当する仕事でしたが、 小さなチームだったので他の業務も担当していました。
当時、2010年に立ち上がったばかりだった「SATOYAMAイニシアティブ」に加わることになり、気づいたら配属数ヶ月で、国連の会議に参加していました。専門領域ではなかったので、右も左もわからず、最初は大変でしたね。
私はSNSでの広報だけでなく、例えばプログラムの設計を手伝ったり、声明文を作って出したりしていました。さらには、パートナーシップに関わる業務にも多く関わっていました。
小宮:かなり幅広く業務に関わっていらしたんですね。そこからなぜCIジャパンに参画することになったんですか?
ウィリアム: 国連大学は、CIジャパンとパートナーシップを組んで、長年SATOYAMAアプローチの一つである、OECMに関するプロジェクトに取り組んできたので、両者がより密接に関わってプロジェクトを進行させていきたいという思いがあってのことでした。そこへ、CIジャパンでちょうどプロジェクトマネージャーのポジションが空いたので、そこへ私が参画することになりました。
小宮:CIジャパンではどのようなお仕事をされていますか?
ウィリアム: 国連大学以外では、例えばアメリカにあるコンサベーション・インターナショナルの国際政策チームや陸域・海域チームと連携を取りながら、生物多様性条約に関する会議に参加したり、政策立案に携わっています。
小宮:ウィリアムさんは、モントリオールで開催されるCOP15に参加されると伺いましたが、現場に行かれるんでしょうか。
ウィリアム: はい。モントリオールまで会議に参加しにいきます。
小宮:私自身、2030年までにに“ネイチャー・ポジティブ”な世界を実現するできるかどうか、今回のCOP15が節目になると思っているのですが、そもそも生態系保全の観点から、日本はどのような立ち位置にあるのでしょうか?
ウィリアム: 個人的な意見ですが、日本は生物多様性条約加盟国の中では、かなり発言力が強い立場にあります。日本は、2010年開催の名古屋COP10の主催国だったので、国連生物多様性の10年のストラテジーや愛知目標の策定を先導してきました。また、日本は多額の資金を投じています。したがって、ここ10年間、日本はかなり存在感がありました。
小宮:今回のCOP15はどんなところが注目されていますか?
ウィリアム: 主題は、ポスト2020生物多様性枠組の策定になります。COP10で策定された生物多様性枠組は2020年で終了しているのですが、COPがパンデミックで延期になったので、現状では、追うべきストラテジーがない状態です。
小宮:愛知目標は2020年に終了したとのことですが、そもそも目標は達成されたのでしょうか?
ウィリアム: 残念ながら、基本的にどの目標も十分には達成されませんでした。
小宮:なぜ愛知目標は達成されなかったのでしょうか?
ウィリアム: 達成されなかった大きな要因は、内容が定量的な目標ではなかったという点と、人々を鼓舞するためにあまりにも野心的で達成し難い目標を設定したことにあります。
しかし、今回の目標は定量的で、達成を測定できる目標の策定に注力すると思います。
小宮:目標策定の中でもどんなところに難しさがありそうですか?
ウィリアム: COP15の大きな争点は、新しい生物多様性枠組の策定になりますが、枠組みの中でどこに重点を置くべきかはそれぞれの国や研究者が各々の立場で主張をするので、どこに重点をおいて策定するかが難しいと感じています。
枠組の中には、海洋の生物多様性や農業、気候変動、ジェンダーなど様々な論点が含まれているので、どのような議論が繰り広げられ、最終的に何が出来上がるかは、皆が注目していると思います。COPにおける生物多様性条約についての決定は、全会一致制なのでどうまとまるか、ぜひ注目してみてください。
小宮:全会一致制とは知りませんでした。ウィリアムさんはどの領域に関わっていらっしゃるのでしょうか?
ウィリアム:COP15では、少なくとも21のターゲットが策定される予定ですが、私が関わっているのはOECMなどに関するものです。以前の愛知目標では、2020年までに陸域の 17% を保護地域等として保全するというものでした。今は、陸域の30%まで数値が引き上げています。
小宮:いわゆる「30 by 30」ですね。
ウィリアム: そうです。以前は、保護区域のみだったのですが、今ではOECMや公園にもその保護の範囲を広げています。その中で大きな問題は、OECMの定義とどう機能させるか、そしてどうやって30%まで持っていくかが軸になります。
小宮:COP15ではCIとして、どのような主張をされるのでしょうか?
ウィリアム: 私たちが重要視すべきと主張している点はいくつかあります。例えば、枠組の中で特に「自然がもたらすもの(NCP: Nature's contributions to people)」に重点を置くということです。自然と人間が共生している地域こそ守るべきだと考えています。
また、先住民族や地域コミュニティの視点をもっと取り入れることや、生物多様性条約のリソース全般に対して、資金を提供することも重要な観点です。
小宮:自然と人間が良い影響を与え合う関係性を最大限活かせるような枠組みになることを祈っています。最後に、環境団体の活動に興味を持っているような読者にメッセージをお願いします。
ウィリアム: まず一番伝えたいのは、「Think Locally, Act Globally.」です。私たちが国連の会議室で何時間も議論したとしても、それを実行するのは地域の方であり、そこが大きな挑戦です。誰もが地元で取り組むことはできますし、逆にその地域で取り組むことができるのは地元の住民だけなのです。
もう一つは、若い世代はより関心を持って行動を起こしていってほしいということです。この問題の影響を最も受けるのは、今の若い世代です。幸いにも、若い世代でこの領域に関心を抱いている人が多いのは、とても感心しますが、自分達がこれから長い人生を共にするであろう場所の存続に責任を持ち、引き続き行動していってほしいと願っています。
小宮:各々のセクションで行動を起こしていくことが必要ですね。ウィリアムさん、本日はありがとうございました!
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