東ヒマラヤの新しい保護活動に10億ドルの支援を呼びかけ
© KOUSTABH BISWAS/PEXELS
ヒマラヤ山脈東部に連なる世界一高い山々から流れ出る氷河は、広大なガンジス川とブラマプトラ川に流れ込み、世界最大のマングローブ林へと続く広大なデルタ地帯を形成しています。
陸と海が互いに結びついたこの生態系は、10億人もの人びとに食料を届け、地球温暖化の原因となる大量の二酸化炭素を吸収し、世界の生物多様性のおよそ12パーセントがこの地に生息しています。しかし、この重要な生態系は環境変化の危機に直面しています。他の地域と比べて急速に温暖化が進んでいるだけでなく、過去20年間で森林の10%以上が失われました。また、昨年だけでも150万人以上の人びとが異常気象によって故郷を追われる事態となっています。
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去る9月19日、国連総会において、コンサベーション・インターナショナル、バリパラ財団、そして東ヒマラヤの現地パートナーが共同で南アジア最大級の自然保護活動「グレート・ピープルズ・フォレスト(Great People's Forest)」を発表しました。このイニシアティブは、10億米ドルの資金を調達し、今後10年以内に10億本の植林と100万ヘクタールの森を保護・再生することを目指しています。
「この地域は、おそらく世界がまだその存在を知らない、もっとも重要な地域です」と、コンサベーション・インターナショナルのグローバル・リーダーシップ・フェローであるジェイソン・クナウフ(Jason Knauf)は話しています。「アマゾンやコンゴ盆地のような他の重要な生態系に比べると、世界的な注目度や投資規模はほんのわずかです。私たちはこのパートナーシップを通じて、すでに実施されている活動をさらに加速させ、この地域を世界的な保護活動の対象に位置づけていきたいと考えています」
「一からやり直すことが目的ではありません」とクナウフは続けます。環境再生型アグロフォレストリーの実践やコミュニティ主導の保全活動など、気候変動に対する効果的な解決策を実践している地元団体のネットワークはすでに確立されています。しかし、自然保護という共通の目標を掲げているにもかかわらず、地元団体はプロジェクト実行のための限られた資源をめぐって、時として競争してしまうことがあります。経済の80%を自然に依存しているこの地域だからこそ、力を合わせて自然保護を強化し共に取り組むことが不可欠だとクナウフは述べています。
「東ヒマラヤは、地球上で最も気候変動の影響を受けやすい場所のひとつであり、地元の人びとは喫緊の必要性からイノベーションを起こしてきました。何がうまくいくのかを、彼らは知っています。今こそ、規模を拡大して取り組むべきです」
たとえば、インド北東部のシコム島では、河川の増水によって土壌が侵食され、森林伐採によってゾウと農民の対立が激化しています。そこでバリパラ財団は、ゾウが農作物を踏み荒らさないようにするために、トゲと香りで象を寄せ付けないレモンの木や唐辛子の苗木を、村人たちが植えるのを支援しています。また、これらの植物は地元市場で商品ともなり、収入を40%増加させたという例もあります。
そこから南に480キロほどに位置するナガランドの山間部では、先住民コミュニティがニューヨーク市の2倍に相当する1,700平方キロメートルもの森林保全に取り組んでいます。また、ベンガル湾のスンダルバンスにあるマングローブ林では、サイクロンが定期的に家屋を破壊し、塩分濃度の上昇で農作物に被害をもたらす中、コミュニティが暴風よけとなるマングローブを再生しています。
「グレート・ピープルズ・フォレスト」の支援により、山間部の浸食防止から高波を防ぐマングローブの再生まで、地域全体でプロジェクトを拡大することが可能になります。
「こうした取り組みは、自然の保護だけでなく人びとの生活を守ることにもつながります」と、コンサベーション・インターナショナルのベサニー・ヘインズ(Bethany Haines )は話しています。
「プロジェクトの成功は人びとによって支えられています。ともに力を合わせれば、その可能性は計り知れません」
※本ブログ記事は2023年9月20日に投稿されたCI本部のブログ "New conservation effort seeks $1 billion for Eastern Himalayas" を和訳したものです。
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