IUCNリーダーズフォーラムに参加してきました

 10月11日~13日、スイスジュネーブで開催されたIUCNリーダーズフォーラムにIUCNジャパンのメンバーとして参加してきました。その報告をさせていただきます。 

  

 リーダーズフォーラム会場。国連など国際機関が集まる一角にある。


リーダーズフォーラムの特徴 

今回のリーダーズフォーラムは、昨年COP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」達成に向けた資金調達や実施計画をメインテーマとして、話し合いが行われました。すっかり定着した「ネイチャーポジティブ」のワードですが、実現に向けてまだ具体的な部分はこれからという印象です。 

それぞれのセッションの合間に長めのコーヒーブレイクが挟まれており、世界中からの多様な参加者と話が出来る機会がありました。ここでは、お互い率直に話をすることができ、個人的にはこの時間が一番収穫が多かったです。 また、コーヒーブレイクでは、参加者間の交流が促進されるよう、スペースの作り方や椅子やテーブルの配置も配慮されており、そうした演出も勉強になりました。 

参加者同士の交流の機会を創出するコーヒーブレイクとロビーのスペース


チェンジメーカーピッチ 

今回のフォーラムで、特に大きなインパクトを与えていたのが、”チェンジメーカー”とされるユースのピッチでした。これは事前に3,500人の応募者から選び抜かれた9名のユース世代が自分の取り組みを紹介するもので(実際は12名選出されていたものの、ビザの都合で9名になったということでした)、実施している内容に加えて、堂々としたプレゼンに会場が沸いていました。 フォーラムのセッションでは全体的に抽象的な話になりがちなのに対し、チェンジメーカーのピッチはすでに彼らが世界を変えるために挑戦している取り組みだったので、話に大きな力があり、どのピッチも強く印象に残っています。 

どのチェンジメーカーも、ピッチのクオリティが非常に高い 


客観的に自分たちの取り組みを知る 

今回のフォーラムでの大きな収穫は、自分達の活動について客観的に知ることができたことです。今回、先住民族リーダーの一人が、国際的な資金の枠組みと先住民族の保全プログラムを繋ぐ際に、NGOが大きな役割を果たしていると話しており、特に名前を挙げてCIが紹介されていました。これまで、CIでは先住民族との協働を常に優先事項として掲げてきましたが、このような客観的な評価を知り、とても励みになりました。 

また、ドミニカ共和国からの参加者は、少数民族やローカルコミュニティにとって、まずは彼らの組織強化やキャパシティビルディングが必要であり、その際JICA(国際協力機構)の人材育成支援に大きな恩恵を受けていると話していました。日本の国際協力がこうして遠い国で芽を出していることも、海外支援の在り方について見つめ直す貴重な機会になりました。 

ドミニカ共和国からの参加者は、研修で覚えた日本語で色々な挨拶をしてくれた 


環境だけ見ていても課題は解決しない 

もう1つ、今回のフォーラムで気づかされたことは、環境だけ見ていても課題は解決しないということです。 

例えば、セッションの中で、メキシコ市のネイチャーポジティブの先進的な取り組みが紹介されていた一方で、後のコーヒーブレイクで話した別のメキシコからの参加者は、メキシコは今、犯罪や治安悪化の方が切迫した課題であり、国民及び国家の環境課題への意識は低いという話をしてくれました。 

また、アルバニアからの参加者は、国の汚職体制が改善されない限り、企業は政府との癒着で環境破壊も先住民コミュニティからの搾取も何でも可能、という現状を訴えていました。 

内戦や貧困など、命を左右する多くの課題を抱えている国々においては、環境分野への優先度は概して低く、よりSDGsを総合する幅広いアプローチと連動しながら環境課題を見て行く必要がある事を再認識しました。


会場から一歩外に出た国連前広場では、チベット族への弾圧に対する国際社会の支援を訴える運動が行われていた。環境問題は世界が抱える大きな課題の中の一つであり、それらは相互に結びついている。

今後に向けて 

今回のフォーラムは、セッションそのものに加えて、多様な参加者との交流、IUCNのメンバーとしての貢献、国際機関の集まるジュネーブでの日常など、体験的に多くの新しいことを得られる機会となりました。 

今回得られたことは、今後自分の業務に還元するほか、IUCN-Jやユース世代などより広いコミュニティとの関わりに活かしていきたいと考えています。 


コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 
松本 由利子 

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