生物多様性条約COP11第1週目の報告(REDD+セーフガード)

インド・ハイデラバードで開催されている生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)に参加している生態系政策マネージャーのNです。
私の任務は、REDD+のセーフガードに対する助言に関する議論の働きかけることです。簡単にこれまでの議論を紹介します。

この議題の議論は火曜日のプレナリーで始まりました。
2010年に合意されたCBDの必須事項は、この2年の間に2回開催された気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国会議の決議と矛盾するような決議をCBDでするわけにはいかない、(CBDUNFCCCで議論されているメカニズムについて口出しすべきでない?)といった話や、REDD+とはいったい何を指すのか色々な解釈があるからこの略語は使うべきでない、といった主張が出てきて、いきなり紛糾。

少人数で議論を詰めるため、コンタクトグループが作られ、その夜に最初の会議が開かれました。このコンタクトグループは、プレナリーでの発言の意図をさらに明らかにする場になりましたが、平行線は変わらず、議長がみんなの言い分を聞いて、議論の基となる文書(ノンペーパー)を作ることで落ち着きました。
文書は木曜日の朝に提示されましたが、ブラジルが主張したように、元の文書からたくさんの項目が削除されたものでした。我々の視点からは、ほとんどの歯が抜かれた内容になっていたので、削除されたパラグラフを入れ戻す工作が必要なのは明らかでした。金曜午後、コンタクトグループが再度開かれ、文書を基に交渉できるかどうか議論されました。当然、「よし」とする意見と、「だめ」とする意見があり、3時間ほど議論した後、文書に、削除された項目のうち締約国が復活を求めるものを反映させて議長が再度文書を作成することでひと段落しました。この第2の文書について議論するため、土曜日に3回目のコンタクトグループが開かれることになりました。
土曜朝10時。スケジュールの表示ミスのため、1時間遅れでコンタクトグループが始まりました。最初の文書と第2の文書とSBSTTAから上がってきた元の決議案と、どちらを基に議論するかで当然もめるものと思っていたのですが、不思議なことに、自然と第2の文書から議論が始まりました。とりあえずの前進です。しかし、これは結果論ですが、最初から、元の決議案にプレナリーの議論を反映させた文書を作って議論をしていれば、水曜日からほぼ同じ文書を基に議論が進められたことになります。議論を遅らせ、期限が近付くなかで相手から妥協を引き出そうとするブラジルの交渉戦略に支配されたような気がします。
さて、ようやく内容の議論です。その中でも、UNFCCCの決議のどれをどのように言及するか、についてかなりの時間が費やされました。これが、「UNFCCCの議論をCBD議論に反映させる」ということなのでしょう。決議をいろいろ解釈して主張を展開する訳ですが、その解釈が国によって少し違うのです。そんな議論はUNFCCCでやってほしいと思いますが。今回の交渉では、UNFCCCの交渉官も参加しています。彼らは、UNFCCCの知識を利用して、時にCBDしか知らない交渉官を煙に巻くかのように論を展開します。究極なものをひとつ紹介しましょう。「もしUNFCCCが本当に生物多様性セーフガードや指標について助言がほしいと考えているなら、どうしてUNFCCCの決議の中にその旨、含まれていないのか?」byブラジル。額面通りなら説得力がありますが、気候変動交渉に参加しているNGOパートナーによれば、そうすることに強硬に反対したのがブラジルとのこと。自作自演?CBDからの助言そのものについての議論はほとんどされないまま、土曜の午前は終わりました。
CBDからの助言を、REDD+実施のためのさらなる条件づけ(足かせ)という考え(主に途上国側)と、UNFCCCで求められているセーフガードを実施する際に絶対必要になる事柄について、これまた必須である愛知ターゲット達成に向けた取り組みと整合を取りながら進めていくためのガイダンスを与えることは役に立つはずという考えがあります。その間の妥協点を見つけるかけ引きが月曜日も続くでしょう。

ちなみに、この議論では、「REDD+」という略語は使わないことになり、代わりに、UNFCCCの決議そのまま、Policy approaches and positive incentives on issues relating to reducing emissions from deforestation and forest degradation in developing countries; and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countriesということになりました。

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