【UNFCCC COP18】温暖化会議における交渉術とは?

 期間を1日延長し開催され続けていたCOP18は、現地時間の12月8日(土)の夜、突然現れたカタール議長が、LCA、京都議定書、ダーバンプラットフォームの全ての文書を「ドーハ・クライメート・ゲートウェイ」と呼ばれるパッケージでの合意文書を声高らかに読み上げ、一瞬のすきも与えずに小槌を降ろし、採択してしまいました。会場からは、賛同とも非難ともとれる拍手喝采。ロシアに至っては「外交的に自国は通常こんな事はしないのだが、採択前に自分の国のプレートを立て、机に叩きつけていたのに、無視された」と怒りを表明。その後、ロシアに続き、このパッケージに関する様々な懸念事項を読み上げる国々。今回の会議は、密室での会議が急に表舞台に現れ、採択されるという、我々NGOにとっては何らかの形で貢献しようにも難しい展開で終幕を迎えました。そして、多くの国の間で交渉に対する溝が深まったままであることも、露呈しました。「ドーハ・クライメート・ゲートウェイ」に対するCIとしての見解は、近日中にアップします。
 しかし、今回ほど、国連での交渉術、というのを考えさせられた会議はありません。先日ブログで報告した、長浜大臣の演説日、日本は国際環境NGOが交渉に後ろ向きな国などに送る「化石賞」を受賞。(注:筆者はこのプロセスとは全く無関係です)。2020年時の削減目標や2013年以降の資金援助など、日本による実質的な貢献を示す内容が入っていなかったのが原因と書かれていました。
 一方、京都議定書のClosing Plenaryでのフィリピン政府のスピーチは、ある意味圧巻でした。日本が第2約束期間を離脱した京都議定書の作業部会は、決着つかずに閣僚級会合に送られることになったのですが、そのClosing Plenaryにて、フィリピンの交渉官がフロアを一度取ろうとしましたが、なぜか他の国がしゃべってから、と言って先進国グループに先にしゃべらせました。当然意見が対立している相手です。その後、フロアを取り直し、先日フィリピンを襲った台風の被害、気候変動により自国の人々が死に至り、数えきれないほどの人々が路頭に迷っているいる現状、そして将来世代に向かって今、この場で、恥じることのない決断をしなければいけない、と訴えながら、最後は感極まって涙声になってしまったのです。交渉官は男性。これはたくみに仕組まれた演出とも言えなくもありませんが、アピールは超一級でした。会場全体、拍手喝采。退場する時は、TVカメラが殺到。温暖化会議における「交渉術」は奥深く、真っ向から言っても相手にされない事も多いのですが、このように現実に起きている気候変動被害と連動させて緊急な行動を求める声は、何よりも強い。そして、その現実と迅速に向き合うことが、この条約の役目である事を、忘れてはなりません。

【フィリピン政府交渉官に群がる報道陣】

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