2012年12月3日月曜日

【UNFCCC COP18】:REDD+のSBSTA交渉、資金問題で難航

 気候変動プログラム・ディレクターのYです。交渉6日目、現地時間土曜日の18時半より、やっとREDD+SBSTAの「コンタクト・グループ」が開催されました。本来なら、各SBSTASBSTA議長に対して報告を行う「SBSTAプレナリー」が行われている時間を、とっくに過ぎています。ここにこぎつけるまで、REDD+の交渉官の方々は、水曜日より断続的に夜遅くまで交渉を続け、最後は土曜の明け方5時まで交渉、小休止して同日午前10時から交渉再開、午後6時になり、やっと我々NGOが入れるコンタクト・グループが開かれました。本来、コンタクト・グループとは、クローズドで行われた会議の結果を受けテキストを確認し、各国が簡単に意見を述べて終わり、SBSTAプレナリーに向けてSBSTAを閉めるのが通例です。

 会場に立ち込める、異様な空気。女性交渉官の方々は、シャワーも浴びず徹夜で交渉や根回しに奔走していたため、メイクが崩れ眼の下が真っ黒。Co-Chairが会議を開始するも、あまりの疲れに呂律がまわりません。Co-Chairが今後のプロセスについて説明しても、聞く方も疲れていて理解できないため、もう一度言って欲しいとのリクエスト。まだ決着はついていなかったのです。

【写真:調整を続けるG77+China(途上国)グループ】
 今回のSBSTAで議論されたのは「森林モニタリングシステムと計測、報告、検証(MRV)」でした。REDD+SBSTAの複数の議題の中で、技術論に終始し、ある程度前回のボン会合で土台ができあがっていたため、着地点が一番近いと思われていたものです。しかし、今回のSBSTAでは、途上国グループが、「予測可能な資金と技術協力がある前提で、森林モニタリングに取り組む」という、本来ならREDD+の資金的課題を扱うLCAで交渉すべき文章をSBSTAのテキストとして提案。SBSTAはあくまでも科学的側面から方法論を交渉すべき場所なので、先進国側は猛反発。みんな何とか着地点を見出そうと、必死です。コンタクト・グループの途中で、途上国グループより「途上国内で課題となっているパラの決議に向けた調整の合意を取り付けるから、この場で5分欲しい」との要請。会場の後部に続々と集まり、議論を続けます。こんなコンタクト・グループを見たのは、初めてです。

【写真:コンタクトグループでのバイ会談】
7分経過後、途上国側より、「着地点を見出せると思うので、これから問題となっているパラグラフ(資金との関連性)について交渉を続けたい」との申し出。とたんに、某先進国が「そちらを検討するなら、検証に関するパラグラフも残されるべき」と発言。この裏には、途上国側が検証プロセスを簡素化する提案をしていた事と関連しています。その時点で、先進国と途上国側の代表が、「これ以上皆の時間を無駄にしないために、ここでバイ会談をしたい」と合意、何と、コンタクト・グループで全員が見守る中、バイ会談を開始。5分程話した結果、双方とも譲らず、結局合意に至らないままSBSTA議長に結果を報告することとなりました。

SBSTAのプレナリーは日曜午前2時頃に実施されました。いくつかの国々が、COP18においてこの議題に関して決着をつけることが前回のCOP決定となっているのだから、決着するまで時間が欲しいと訴えたそうですが、SBSTA全体が遅れている事と、会議進行上のルールを覆すのは難しいとのことで、却下された模様です。

本日(現地時間3日月曜日)、UNFCCCサイトに、SBSTAの決議文書がアップされました。(↓)

今回は決議できなかったものの、参照レベルやセーフガードに関わるオブザーバー団体からのサブミッション日程を含む等、「進む」意志を見せつつ、全ての要素が混在した内容が添付文書に羅列されています。これから来年の5~6月頃に開催されるSBSTACOP19のスケジュールに、全員身を引き締めなければいけません。

今回の事態を受け、個人的に強調したい点をまとめます。
1. REDD+の実現に向け、努力をしている途上国が数多くあり、確実に前進している。一刻も早く技術的なガイダンスを提供する事が重要。
2. 特に、REDD+に取り組む姿勢を見せていながら、技術的なガイダンスを心待ちにしている最貧国への影響が懸念される。
3. 途上国の資金問題へのフラストレーションは分かるが、技術的な方法論を協議する場であるSBSTAに問題を持ち込むと、REDD+全体の進展と可能性に悪影響を与える可能性が高い。資金の課題は、LCAでとことん協議し、SBSTAは粛々と進めるべき
4. 過去5年間、いくつもの困難を乗り越え、REDD+の交渉はいつも何らかの結果を生み出してきた。森林減少による排出を削減するのみならず、生物多様性や人々の生活を守る新しいメカニズムへの全世界の期待が現れている。これまでのメカニズムで、グローバルレベルで森林減少・劣化問題に法的拘束力を持って対策できるものはなく、REDD+は最後の砦の一つ。この期待を決して裏切ってはならない。前進あるのみ!

現在、SBSTAでの決議を受け、一部の国がCOPに向け奔走して挽回しようとしているとの情報もあります。その位、今回のSBSTAで合意を逃した事は、REDD+の交渉では珍しく、交渉が終わった後も、先進国・途上国双方がフロアをリクエスト、心より「前進したかった」との悔いの声が聞かれました。意見の相違がありながらも、合意への強い思いが一緒なのが、REDD+の交渉の特徴です。