「カンボジアのアリクイ、環境保全にスポットライトを照らす」ニュー・インターナショナリスト・ブログより(日本語訳)
ニュー・インターナショナリスト・ブログ(New
Internationalist Blogs)の二ディー・ダット(Nidhi Dutt)さんが、CIがカンボジア政府森林局と協力して生物多様性保全事業に取り組んでいる、中央カルダモン森林保護区でのレンジャー活動をレポートしました。
この英語の記事は大変わかりやすく素晴らしいので、ぜひ日本の皆様にも読んでいただこうと、NI Blogsの記事の日本語訳掲載とアル・ジャジーラの環境番組「アースライズ (Earthrise)」制作のビデオの再掲の許可をいただきましたので、CIジャパン・スタッフブログに掲載します。NI BlogsとEarthriseのご快諾に、心より感謝申し上げます。
CI Japan appreciates NI Blogs and Earthrise for generously approving our request for posting the Japanese translation of the article as well as reposting the video on our Cardamom Mountains project!
見かけはちょっといかつい、アリクイの仲間、センザンコウ。このおっとりした動物は、漢方薬などの目的で違法取引され、絶滅の危機に瀕しています。違法狩猟業者から野生動物を守るCIのレンジャー活動、その最前線の様子を、ぜひご覧ください。
見かけはちょっといかつい、アリクイの仲間、センザンコウ。このおっとりした動物は、漢方薬などの目的で違法取引され、絶滅の危機に瀕しています。違法狩猟業者から野生動物を守るCIのレンジャー活動、その最前線の様子を、ぜひご覧ください。
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カンボジアのアリクイ、環境保全にスポットライトを照らす
センザンコウは敵の襲撃を受けると固い球状に丸まる。©Earthrise
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センザンコウ(Pangolin)は、うろこに覆われていて、動作はゆっくりですが、ことのほか可愛らしいアリクイの仲間です。世界の絶滅危惧種としてスポットライトを浴びることは少ないものの、東南アジアに蔓延する野生動物の違法取引の犠牲になることがあり、時折そのような記事に登場します。最近の調査によれば、年間約10,000頭のセンザンコウが違法取引されています。
そんなセンザンコウは、敵の襲撃を受けると固い球状に丸まる面白い動物ですが、スマトラトラやオランウータンのような東南アジア地域で有名な絶滅危惧種ほど知られていません。
センザンコウの情報を追いかけているうち、私はアジアでかろうじて残された比較的手付かずの自然のひとつ、カンボジアのカルダモン山脈で実施されている、コンサベーション・インターナショナルの事業に辿り着きました。センザンコウは、その生息地域の保護やコミュニティの関与などを含めた環境保全の必要性を語るのに、最適の生き物です。この動物は飼育下ではうまく繁殖できないため、生き残るためには自然の中で生息するしかありません。
アル・ジャジーラの環境番組「アースライズ (Earthrise) 」にも登場したカルダモン山脈では、コミュニティによる主導や継続的な関与の重要性は、これ以上ないくらい明白でした。政府や国際環境NGOは、野生動物の違法取引に対する様々な対策を導入することはできても、そこで生活する地元コミュニティの動物保護への主体的な関与がなければ、長期的な問題の解決はありえないのです。
静かな森の中で、私はかすかな希望の光を見出しました。それは、農家やレンジャー、そして元センザンコウ違法狩猟業者までをも含む、すべての関係者が集結し、保全契約を取り決めたときのことです。村人は、センザンコウの保護と違法狩猟対策に協力する対価として、農業的知見の供与を得ることで、環境保全団体と具体的な年間契約を結びました。レンジャーらに、なぜ違法狩猟業者に助けを求めるのかと聞いたところ、その答えは素晴らしく単純明快でした。「彼らは自分の手のひらと同じくらい、森のことをよく知っているからさ。」
コミュニティ保全契約の導入は、環境保全の方程式のうち、あまり理解されていない「所有権」に焦点を当てています。もしあなたが何かを所有していたり、大切な資源を保護する責任を与えられたとしたら、それを破壊したり、他の誰かに台無しにさせるようなことを許容しようなどとは思わないでしょう。こうしたコミュニティ主導の話し合いは、現地の人々に対し、問題の根拠だけでなく、解決策も提供します。
保全契約だけで全てが解決するわけではありません。世界のこのような地域では、公式な政府承認を受けたレンジャーや環境保全団体の関係者グループは、まだまだ重要です。地元の人々は、軽装備の違法狩猟や伐採などに対し、最初の砦となりうるかも知れません。しかし、その土地を収奪し、ある環境保全関係者が言うところの“トラック満載の”木材を森からごっそり持っていってしまうような、大規模で組織的な行為は、より確固たるやり方で対処しなければ、阻止したり抑制させることはできません。つまり、(プロの)森林パトロールレンジャーも必要ということです。
カルダモン山脈で形成されつつあるこのモデルは、一連のセーフティーネットというのが、最も適切な表現かと思われます。地元コミュニティ、政府の認定を受けたレンジャーや環境保全団体らは、多角的アプローチを通じて、ひとつの問題を解決するために力を合わせて協働しています。永遠の課題は、こうした保全契約のようなきっかけで得た機運の高まりを維持し、それぞれの役割を果たし続けていくことと言えるでしょう。
カンボジア・カルダモン山脈で違法狩猟対策やコミュニティ保全契約の形成と、センザンコウを野性に戻す活動に取り組むレンジャーとともに過ごした、二ディー・ダットの旅の映像はこちらからご覧ください。
CIジャパン・スタッフブログのカルダモン山脈編もぜひご覧ください!