様々な森林再生の手法
By コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 浦口 あや
森林再生は、森のCO2吸収能力、野生生物の生息地、水源かん養や土壌の安定化といった様々な機能を回復させる、気候変動緩和および生物多様性保全、そして気候変動適応の対策です。森林再生は、今、これまでになく注目を集めています。
「森林再生」と一言で言っても実は様々です。今回は、その手法についてご紹介したいと思います。
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森林を再生する方法として、等間隔に苗を植える方法が従来から実施されてきました(以下、従来型と呼びます)。木の密度や種類の目標を立て、それに向かって木を育てるという方法で、一番早く目的とする森林が出来上がることが期待されます。植える樹種の種子を集め、苗畑で種子から苗を育て、対象地の地面にしかるべき間隔で穴を掘り、苗を対象地に運んで移植するため、良い苗を植えることにより、その後の生存や成長が良くなります。でも、これはコストが高い方法です。産業植林やアグロフォレストリーのように、後々の収入を期待した投資がある場合は良いのですが、森林の再生が目的である場合には、規模を拡大することが難しくなります。
そこで注目されるようになっているのが、森が元々持つ、次世代を育てる力を活用する方法であるAssisted Natural Regeneration(仮訳:天然更新推進型)、そして従来型と天然更新推進型の中間的なApplied Nucleation(仮訳:核形成)です。
天然更新推進型は、対象地の周辺に種子の供給源となる森があり、自然に木が生えて育つ素地はあるものの、頻繁な火事や家畜放牧などでそれが阻害されている場合に有効です。防火帯や柵の設置等が、森林再生のための主な活動になります。補助的に雑草やツル(←小さい木の大敵)を除去したりします。基本的に自然の回復力に任せる手法なので、どのくらいの期間で、どんな木が育つか、管理や予測がしにくいものの、比較的低いコストで実施可能で、近年その重要性が高まっています。成長速度に関するグローバルな研究論文も出されています(*)。
一方の核形成は、天然更新推進型で木が育つには種子供給源が遠かったり、自然環境が厳しかったり、あるいは森林再生を早めたい場合に向いているとされています。従来型では一面に等間隔で苗を植えますが、核形成では、島状に木のパッチを作り、そこが核となって、周囲の土地で森が再生されるのを誘導します。島をどのような大きさにするのか、どのような間隔で配置するかは、その場所の環境、使える資金などを考慮してケースバイケースで決めることになります。
比較的新しい手法ですが、知見も蓄積されてきています。CIでも既にバリ島で実施している方法です。バリ島のプロジェクトの場合は、「核」単位でご寄付を受け付けていますので、支援者の皆さんと協力して、少しずつ森を拡大できるのも魅力かもしれません。
また、核と似た状況で使える手法として、集めた種子を直接対象地に播く、直接播種(はしゅ)という手法があります。皆さん、朝顔の種子を植えたことはありますか?。発芽しない種子、発芽したけど元気がなさそうな実生、発芽して元気に育っている実生がありましたよね。元気がない実生(種子から発芽したばかりの植物)は間引くよう言われ、かわいそうだなと思いながら間引いた経験がある方もいるかと思います。でも、そうすることで綺麗な朝顔の花がたくさん、大きく咲く確率が上がったわけです。木も同じです。
ちゃんと育ちそうな質の良い木の苗を植えれば、早く、より確実に育ちます。苗がある程度大きくなるまで水やりしたり、雑草を防いだり、強すぎる光を防いだりすることで、枯れるリスクも低くなります。しかし、お金がかかります。そこで、育ったり育たなかったりする種子があるという前提で、種子を直接地面に播くわけです。
この手法の面白いところとして、多種多様な種子を混ぜて播くこともできる点があります。荒廃した土地でも育つ灌木なども混ぜて播くことで、色々な種類の植物が助け合いながら育ちます。CIもブラジルで使っている手法です。
●プロジェクト紹介はこちら(4ページ「ブラジル・アマゾン 森林保全プロジェクト」を参照)
従来型、天然更新推進型、核形成、直接播種は、木の参入・成長をどう実現するか?という観点で考えた森林再生手法の分類でした。その他にも、育てた森をどう使うか?という観点では、果樹生産を含む農業との組み合わせであるアグロフォレストリーや、畜産との組み合わせであるシルボパスチャーといった分類もあります。このように、一言で「森林再生」と言っても実に様々です。その場所の自然環境や森林再生の目的、使える資金、地元関係者の考え、土地の所有形態、そしてそこに暮らす人々が、何をしたいかによってベストなデザインは変わってきます。グローバルなスケールでの森林再生が必要なのはもちろんその通りですが、個々の場所において適切な手法が用いられてこそ可能になります。
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