インターンレポート:「琴川共創ワークショップ」に参加して

 

秋田県男鹿市五里合琴川

20221018日、男鹿半島の付け根の北側に位置する、人口145人のこの集落で(e-stat, 2022)、秋田里山デザインとCIジャパンによる「琴川共創ワークショップ」が開催されました。このイベントはCIジャパンが今年から開始した「里山再生を通じた地域・人・自然共創プロジェクト」の一環で、経団連自然保護基金からの助成を受けて実施されました。プロジェクトでは、地域の暮らしをより良くしようとそれぞれ活動されている方々を結びつけることで、より大きなうねりを起こし、地域に暮らす人と自然が元気になることで地域そのものの力も高めていけるよう目指しています。そのためにはまずは地域に対する考えを話し合う場が必要、ということで、まずは8月に第1回目のワークショップを開催して、地域の魅力や課題を再発見するワークを実施しました。2回目となる今回は、皆が地域でやってみたいことを具体化するのを目的として、前回に引き続き様々なステークホルダーが田んぼの中の集会所に集まりました。参加者は長くこの地に暮らしている地元の人、この地を気に入って引っ越してきた移住者、地域おこし協力隊員、秋田県内の別の都市で暮らしている大学生、そして、私も全く琴川のことを知らないいわゆるヨソ者として参加しました。

イベントは、以下のスケジュールで予定されていました。

まずは、「理想の暮らしin琴川」をワークシートに書きだしました。ここでは、琴川で今日明日からできるやってみたいことを各々書きました。私は自身の食料や燃料をできる限り自分で獲得する生活をしてみたいと書きました。


理想の暮らしを書いた後は、図のような5段階で答える質問(レジリエンス・インディケーター)に答えました。私は琴川のことを全く知らないので、最初の質問のみ3(どちらともいえない・わからない)と回答しました。質問に対する回答は付箋に書き、模造紙に貼る形で参加者間で共有しました。回答は人それぞれ多様でした。年配世代は琴川のあらゆることを評価していない半面、若い世代の方からの「それは外を知らないからだ」というやりとりが印象的でした。また、若者は年配者や地元の方々に対する謙虚さも大事という話も印象的でした。



次に、琴川での自分たちの理想の暮らしがどのように琴川のためになっているのかを3グループに分かれてグループディスカッション方式で意見を交えました。例えば、集落にある喫茶店で朝、珈琲を飲みながらゆっくりすることが理想と語っていた人は、それがその店を支えることになるという他の参加者の意見を受け、非常に驚いていました。





お昼は参加者全員で秋田県の郷土料理であるだまこ鍋作りを行いました。だまこ鍋とは、秋田市、男鹿、南秋、能代山本地区までの沿岸北部で伝承されている伝統料理です(農林水産省,n.d.)。秋田の郷土料理、と言えばきりたんぽ鍋を思い浮かべる方が多いかと思われますが、その作り方は途中までは同じです。炊いたお米をすりつぶすところは同じですが、きりたんぽはそこから棒状にして串刺しにし、焼き目を入れるのに対し、だまこは丸めて塩水につけるだけ、という違いがあります。地元の方のお話しを伺うと、このようにきりたんぽは少々手間がかかる料理になるので、どちらかというとごちそうの気がある料理になるそうです。だまこ鍋づくりをしている参加者からは、「こうやってみんなで料理をするのは楽しいね~」という声がたくさん聞かれました。みんなでつくっただまこ鍋は格別の味でした。




午後は山方面、里方面、海方面の3班に分かれて地域散策を行う予定でしたが、生憎の悪天候でそれを実施が阻まれました。そこで、室内に戻り最後のワークを行いました。最後のワークでは、理想の琴川での暮らしを書き、それを全参加者に発表し、それに対して全参加者がコメントシートを送り付けるという「理想の共有」を行いました。最後には次はどのようなアクションを起こしていくのか、参加者間でとても生き生きとした議論が繰り広げられていました。




最後に、参加した感想を述べます。今回のワークショップへの参加を通して大きく3点のことを感じました。まず、人々とのコミュニケーションをとる機会そのものとその機会を提供する場の重要性です。基本的に、他人の心の内はその人が言葉を発さない限り分かりません。お互いが地域に対して何を思っているのか、まずそれを共有すること場を設けることが地域づくりには非常に大事なのだと思いました。また、その人の想いを聞くことによって他者からのコメントも聞くことができれば、また新たなアイデアが出てきたりする可能性も大いに感じられました。人とは言葉で話し、お互いのことを分かり合おうとすることができるかもしれません。しかし、自然は言葉を発しません。そのような、自然を分析することができる人との協働も今後は求められるのではないかと思いました。

2点目として、手間のかかる生活は確かに不便だが、それは人と人、人と自然をつなぐきっかけになり得るということです。自身で山や田畑を持って、生産していくのは現代の生活からはかなり時間と労力のかかる仕事です。自然資源は人間が思うほどコントロールは容易ではありません。また、農山漁村は都市部と比べて様々なものへのアクセスといった面などで物理的な利便性も劣るでしょう。そんなとき、必然と、人同士が自然と手を取り合い、協力せざるを得ない環境を生んでいるように私は見えました。それも、時に厄介にはなることもあるのでしょうが、都市部での生活ではなかなか味わえない人間味のある生活なのでしょう。

3点目として、自身の理想の追求がその地域のためになるかもという視点です。あくまで個人的な見解になってはしまいますが、人は他の人のためよりも自分のための行動の方が長続きがしますし、幸福度も高くなるのではないかと思っています。そのためには、1点目とも重なりますが、まずはそれぞれの思っていることを発信し、交えていくことが非常に重要なのだろうなと思いました。自分も幸せになり、周りも幸せになる、そんな理想のシステムが生まれれば、本当にいい世の中になるだろうなと思いました。


午後、外へ散策に一度は出かけた際、強風と雨にさらされながらも、北の空を見ると二重の虹がかかっていました。メインで見える虹を主虹、サブで見える薄い虹を副虹と言ったりします。副虹は空中の水滴に反射された光がさらにもう
1回多く反射されるとみられる現象のようです(兵庫県立大学 天文科学センター 西はりま天文台,2014)。ある人の想いが他の人の想いに反射し、また他の人の想いに反射して新たなものを作る、そんなワークショップの内容を表象するかのような空模様でした。

 
<参考文献>
e-stat(2022)「令和2年国勢調査 小地域集計 05:秋田県」最終閲覧日20221019日,https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200521&tstat=000001136464&cycle=0&tclass1=000001136472&tclass2=000001159878&cycle_facet=tclass1%3Acycle&tclass3val=0
 
兵庫県立大学 天文科学センター 西はりま天文台(2014)「ニュース: 天文台から副虹が見えました(2014/12/01)」最終閲覧日20221019日,http://www.nhao.jp/research/news/news141202.html#:~:text=%E5%89%AF%E8%99%B9%E3%81%AF%E3%80%81%E3%82%88%E3%81%8F%E8%A6%8B%E3%82%8B,%E8%A7%92%E5%BA%A6%E3%81%8C%E7%95%B0%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
農林水産省(n.d.)「だまこ鍋 秋田県」最終閲覧日20221019日,https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/29_4_akita.html

ライター:CIジャパンインターン 西川聖哲

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