国連気候変動交渉COP27で重要だった3つのこと

 

Aerial view of Xingu National Park © Luana Luna

By メアリー・ケイト・マッコイ(CI エディトリアルライター)

エジプト、シャルムエルシェイクにて数週間にわたる交渉の末、 国連気候変動交渉COP27が閉幕しました。会議で最も期待されていた「途上国への気候変動に対する損害賠償」という問題について、先進国は補償のための基金を設立することに合意しました。しかし、どの国が資金を提供し、どの国が利益を受けるか、といった重要な項目は、今後の交渉に委ねられています。

また、各国はパリ協定の目標である、地球の平均気温上昇を1.5度未満に抑えることの緊急性を再確認しましたが、そのためには、化石燃料の使用を減らし、炭素を多く貯蔵している自然生態系を保全するために各国が野心的な行動を取ることが必要です。

コンサベーション・インターナショナルの国際政策担当バイスプレジデントのリナ・バレラ(Lina Barrea)は、「世界の森林、海洋、その他の生態系は、温暖化していく地球がおよぼす最悪の事態を防ぐためのカギです」と話します。COP27では、各国政府が気候変動との戦いにおいて、自然による「カーボンスポンジ」(スポンジのように、炭素を吸収および固定できる機能のこと)」が極めて重要であることが認識されました。

今年の国連気候変動会議で話し合われたアジェンダから、特に注目すべきものをご紹介します。


1.先住民主導の保全活動を支援する

アマゾンの先住民族は、4分の1以上のアマゾン地域をカバーする沿岸部に住んでおり、その流域を管理しています。彼らの管理のおかげで、世界最大の熱帯雨林の森林破壊は抑制され、温暖化の原因となる大量の炭素が豊かな熱帯林へ貯蔵され、他に類を見ないほど生物多様性が維持されていることがわかっています。  

COP27で、コンサベーション・インターナショナルと、アマゾン流域流域の先住民族コーディネーターグループであるCOICA(  Coordinator of Indigenous Organizations of the Amazon River Basin )が主導する保全プログラム「Our Future Forests-Amazonia Verde」 に対して、フランス政府が720万ドルの支援を約束しました。これにより、先住民族主導のアマゾン保全が後押しされたことになります。

コンサベーション・インターナショナル・ブラジル、バイスプレジデントのマウリシオ・ビアンコ(Mauricio Bianco)は、「アマゾンの保護と保全は世界的な優先事項であり、先住民の基本知識と協力がなくては、実現不可能です。」と話します。

このプログラムは、2025年までにアマゾンの12%(7,300万ヘクタール)を保護することを目標に、先住民やコミュニティの協力のもとで、第2段階の活動へ進んでいます。今では7カ国27組の先住民やコミュニティがプログラムへ参加し、持続可能な生計を立てるためのビジネスや社会事業を構築するためのツール作成、トレーニング、資金提供を受けています。

さらに、COP27において、コンサベーション・インターナショナルは、地球環境ファシリティ(GEF)とともに、750万ヘクタール以上の土地と海を対象に、先住民や地域コミュニティによる管理の支援を目的として、2500万ドルの「包括的保全イニシアチブ」 を立ち上げることを発表しました。


2.”ブルーカーボン "プロジェクトの新たな潮流を生み出す


マングローブは、気候のスーパースターです。マングローブの根が密生している場所は、1平方マイル(約2.6平方㎞) で、年間自動車9万台分もの二酸化炭素を貯蔵することができるのです。

マングローブや湿地など、沿岸生態系に蓄積された炭素である「ブルーカーボン」 のクレジットは、ボランタリーカーボン市場に登場したばかりですが、その需要は供給をはるかに上回っています。ブルーカーボンからの収益は、マングローブやその他の沿岸生態系の保全や修復のための資金として活用することができますが、そのようなプロジェクトの質と完全性を確保することが大切です。

COP27において、コンサベーション・インターナショナルは、セールスフォースおよび海洋分野のリーダーによるグローバルな連合とともに、人、自然、気候に持続的な成果をもたらす、投資可能で質の高いブルーカーボン・プロジェクトを構築するための初の計画を発表しました。

コンサベーション・インターナショナルのブルーカーボン・プログラムを率いるジェニファー・ハワード(Jennifer Howard)は、「高品質ブルーカーボンの原則とガイダンス( The High-Quality Blue Carbon Principles and Guidance )」 は、クレジット購入者、投資家、プロジェクト開発者に対して、新しいブルーカーボン市場における説明責任と透明性の確保について、ガイダンスを与えることを目的としています」と話します。

「ブルーカーボン・クレジットの需要は高いため、市場の拡大に伴い、その品質を維持することが重要です。私たちの目的は、達成不可能なハードルを設定して排除することではなく、可能な限り最高の結果をもたらすためのガイドラインを提供することです」

コロンビアでは、コンサベーション・インターナショナルとパートナーが立ち上げたブルーカーボン・プロジェクトから創出された最初のクレジットが今年完売し、収益の92%がマングローブの保全とマングローブなど沿岸生態系に生活を頼る1万2000人の生計のために投じられました。

また、コンサベーション・インターナショナルは、ブルーカーボン・プロジェクトを拡大するために必要な能力と専門知識をさらに高めるため、シンガポールを拠点とする「ブルーカーボン研究所」を立ち上げました。この研究所は、東南アジアおよび太平洋地域の政府と協力し、気候変動緩和政策にブルーカーボンを組み入れ、科学的根拠に基づくブルーカーボン生態系の回復を支援する予定です。


3.気候変動に立ち向かうために、自然の力を引き出す


失われた自然の機能を取り戻すことは、気候を安定させるために必要な世界的行動の約30パーセントを占めると考えられます。しかし、現在、原生林、マングローブ、泥炭地の保護、回復、持続可能な管理、といった費用対効果の高い解決策へ投資されている金額は、世界全体の気候変動対策の資金のわずか3%未満しかありません。

このような状況の中、米国は気候変動に取り組むため自然の力に重点を置く戦略を打ち出しました。

COP27において、バイデン政権は、米国の気候政策において自然の役割を強化することを目的とした250億ドルの国家的枠組み「自然を基盤とした解決策ロードマップ(Nature-Based Solutions Roadmap)」 を発表しました。

「自然を基盤とした解決策」とは、気候変動に対処するために生態系を保護、持続可能な管理、回復する行動を示す広義の用語であり、同時に人々や環境に多くの追加的利益をもたらすものです。

コンサベーション・インターナショナルのグローバルポリシー&ガバメントアフェアーズ担当シニアバイスプレジデント、ジェームス・ロス(James Roth)は、「自然の力を活用した気候解決策は、野生動物を危険から守り、人間と人獣共通感染症の間の緩衝材を維持し、洪水や干ばつに対するレジリエンスを高め、食料と水の安全を強化し、地方の雇用を創出することにもつながります」と言います。

コンサベーション・インターナショナルが9月に発表した、自然を活用した気候変動対策である「エクスポネンシャル・ロードマップ」 は、地球温暖化への対策として、自然の力を最大化するための計画を発表しています。計画によると、壊滅的な気候変動を回避するためには、農業や林業を含む土地部門からの排出を2030年までにゼロにする必要があります。

では、私たちはどうすればいいのでしょうか?

答えは、重要な生態系を守り、適切に管理し、再生させる、ということに尽きます。

世界が温室効果ガスの排出を今すぐに止めたとしても、強力なカーボンスポンジである森林や泥炭地などの生態系の破壊を止め、取り戻すことができければ、人類は悲惨な気候シナリオへ突き進むことにとなってしまうでしょう。


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本記事は、CI本部スタッフブログ「https://www.conservation.org/blog/at-cop27-an-historic-agreement-and-many-questions」を日本向けに翻訳・編集したものです。



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