海藻は気候変動への新たな”武器”となるか?

ジャイアントケルプ © ISLAND EFFECTS


海藻藻場は、地球上で最も早く成長することのできる生態系の一つですが、藻場の多くは人工衛星の届かないところにあるため、科学による解明が進んでいませんでした。

海洋生態学者のカレン・フィルビー・デクスター(Karen Filbee-Dexter)氏は、「世界の海藻林のほとんどは、地図にも載らず、ましてや観察すらされていません」とGuardian紙に語っています。 

フィルビー・デクスター氏を含む、国際的な科学者グループが主導した最近の研究により、世界の水中森はこれまで考えられていたよりもはるかに多く、インド国土の2倍の面積に相当する720万平方キロメートルを占めていることが明らかになりました。

このことははとても重要で、大きな意味をもちます。

つまり、この度の研究でコンブやその他の海藻からなる藻場が、地球温暖化を進行させる二酸化炭素を海水や大気から吸収することで、気候危機を食い止める役割を果たしているということが理解できるからです。


カリフォルニア州モントレー沖のケルプ© KEITH A. ELLENBOGEN

少なくともある推計によれば、海藻藻場は、アマゾンの熱帯雨林と同程度の炭素を貯蔵している可能性があります。しかし、マングローブのように大量の炭素を蓄える生態系とは異なり、海藻には炭素を地中に固定する根系がないため、海藻の森が長期的に炭素を蓄積する能力については、科学的な議論が続いています。

フィルビー・デクスター氏は、今回の研究は、気候変動の緩和における海藻の役割を理解する上で「最大の海洋植生生態系の生産性(成長と炭素吸収)を計算することができたのは、大きな前進であった」とGuardian紙に語りました。

海藻藻場は、大量の炭素を吸収するだけでなく、海洋生態系において重要な役割を担っています。科学者たちは、メキシコからアラスカに移動するコククジラが、シャチから逃れるために海藻の巨大な ”カーテン” を利用していることを発見しました。さらに、海藻は、食料安全保障の観点でも貢献する可能性があります。海藻は成長が早いため、適切に収穫されれば、「非常に持続可能で、栄養価の高い食料源」になり得ると研究者は言います。

カリフォルニア沖のケルプの森 © KEITH A. ELLENBOGEN


しかし、多くの生物多様性を有する生態系と同様、海中林も海水温の上昇や汚染、外来種といった脅威にさらされています。気候変動は、危険なドミノ効果(生態系に一つの変化が起きると他の悪循環にも陥る連鎖反応)を生み出しています。例えば、北カリフォルニアの海岸では、ウニの爆発的な増加によりコンブが95%も減少しました。ウニの主な捕食者であるヒトデが、海水温の上昇に伴う病気により減少したことが原因です。 
 
フィルビー・デクスター氏は、「これら海中林について認識が広まることで、より多くの海藻藻場の保護と再生が広がることを期待しています 」と話します。

世界各地で水温が上昇し、酸性化する海に起こっている悪循環の流れを変える時間は残り少なくなっています。2022年12月に行われた国連の生物多様性会議(COP15)では、「2030年までに陸域、内陸水、沿岸、海洋の生態系の30%を保護下に置く」という歴史的な合意に達しました。 

コンサベーション・インターナショナルが共同代表を務める「ブルー・ネイチャー・アライアンス」は、この世界目標を達成するためのパートナーシップです。
 
「ブルー・ネイチャー・アライアンス」は、地域、政府、先住民、海洋専門家など、さまざまな連携により、フィジーや南極海、そして「世界一孤立した有人島」として知られるトリスタンダクーニャ島の480万平方キロメートル以上の範囲の保全に取り組んでいます。
 
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投稿 : Will McCarry ※原文はこちら
翻訳協力: 井上晃利 (CIジャパンインターン) 
編集: CIジャパン 

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