2013年6月11日火曜日

Satoyamaイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)ワークショップ in ネパール

Satoyamaイニシアティブは、CIの理念と非常に共鳴する国際的なイニシアティブです。Satoyamaイニシアティブは、農林水産業の生産活動をしながら生物多様性を維持している社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SELPSを対象に、生物多様性の保全と持続可能な利用を促進することで、自然と調和する社会を実現しようとする、世界規模の挑戦です。名称を日本語で書くときにも「里山」と漢字にしないのは、意味するものが国内の里山環境に限定されず、もっと幅の広いコンセプトととなっているからです。環境省と国連大学の主導により立ち上がったこのイニシアティブには、CIも初期の段階から関わってきました。CIは、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約締約国会議(COP10)から始まった“Satoyamaイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)”の創設メンバーの一つです。

Satoyama」という単語は農村部を意味する日本語ですが、里山・里海のような景観は、東洋・西洋・先進国・途上国の別なく、地球上のいたるところにあります。IPSIは、世界全体で持続可能なランドスケープを構築することを目指す唯一の仕組みであるといえます。取り組みの影響をより高めるため、IPSIは、SELPSにおける経験の共有と問題解決に関するワークショップを地域ごとに開催していくことにしています。

地域ワークショップ参加者集合写真
514日~16日にかけて、ネパールのカトマンズにおいて、初めての地域ワークショップが、アジア地域を対象に開催され、15カ国から、59名が参加しました。ワークショップはネパールの森林・土壌保全省のTek Bahadur Thapa Gharti大臣がネパールの伝統的な方法(キャンドルに火をともし、植物に水をあげる)で開会を宣言しました。そして、いずれもIPSI運営委員のネパールの森林・土壌保全省Krishna Chandra Paudel長官と地球環境ファシリティ(GEF)の渡辺陽子さんが議長を務めました。

このワークショップは次の三つを目的としていました
1)アジア各国からの情報と経験を共有する
2)里山イニシアティブと関連する活動のコンセプトを広げる機会を見つけるためにギャップやニーズを明らかにする
3)地域から世界規模にわたり,活動計画とIPSIの戦略の発展に貢献する

小グループに分かれて有益な議論が交わされ、各地におけるSELPS持続可能性に対する脅威として,「食料生産拡大からの圧」、「SELPSと都市との収入格差」、そして「貧困」などが挙げられました。収入格差と貧困への解決策としては、生態系サービスへの支払い(PES)の導入が言及されました。また、今回挙げられた三つの脅威全てへの対策として、ランドスケープに直接影響を及ぼす一方、ランドスケープに対し包括的な土地利用計画や生物多様性対策を実施できるのは地元コミュニティーであり、そのためには地元コミュニティの権限・能力の強化が必要であること強調されました。それにあわせ、生物多様性地域戦略(NBSAP)だけでなく、地元での取り組みの指針になるローカル生物多様性戦略(LBSAP)の重要性も強調されました。

このワークショップの様子は、ネパールの全国ニュースで報道されています。
水資源の利用の観点から森、民家、棚田・畑が配置されたネパールのSatoyama

室内でのワークショップの後、ネパールの美しい里山の景観を視察するエクスカージョンが行われました。地域社会と一体となり、「良く手入れされた」ランドスケープを見ることができたのは大変喜ばしいことでした。自分のふるさと新潟にも、自分の子供のころはこのようなランドスケープがあったと懐かしく感じると同時に、すでになくなってしまっている寂しさと、そのような状況においても自然と調和した社会をいかに作っていくか、課題の大きさを改めて認識しました。世界全体が抱える問題です。

パートナーシップが成熟してきており、自然と調和する社会を実現するための議論を行うための有効なプラットフォームが徐々にできあがりつつあります。他の地域においても地域ワークショップは開催されます。次のIPSI国際会議は、福井県で今年9月に開催される予定です。

Written by Yoji Natori, Ecosystem Policy Manager