【UNFCCCボン会合便り4日目】:REDD+交渉、前進続ける

  現地時間6月6日(木)、交渉開始4日目に突入しました。今日は2つのトピックをご報告します。

1.SBI、アジェンダ採択をブロックされたまま4日目に突入!
実施に関する補助機関 (SBI 38)では、月曜日に開催された会合で、ロシア、ベラルーシ、ウクライナの3国がアジェンダの採択に反対したまま強硬な姿勢を貫き、4日目に突入しました。アジェンダが採択できないため、会議自体が開催できずにいます。3カ国は、主に会議での決定の仕方や法的扱いなど、手続き的な事に関する理由でアジェンダの採択を拒んでいます。脳裏に甦るのが、昨年ドーハで開催されたCOP18で、ロシアが机に自国のネームプレートを叩きつけながら発言を求めていたのにも関わらず、議長が強硬に決議を採択した様子です。ロシアは京都議定書において、経済成長が停滞していた頃に削減目標を設定したため、実質的に世界の温室効果ガス削減に結び付かない削減クレジット「ホットエア※1」を生みだす結果となりました。昨年のCOP18で、先進国が次々と「ホットエアは購入しない」との宣言を続け、ロシアの必死のアピールにも関わらず、決議に持ち込まれました。決定は、決定。くつがえすことはできません。ロシアは会議2日目に、既に気候変動交渉にマイナスの貢献をした国として「化石賞」をNGOから贈られています。月曜以降、水面下で様々な交渉が行われている模様で、何度も「X時からSBI開催予定」というアナウンスがTV画面に映し出されますが、結局開催されずに終わっています。このような妨害行為が、今後その他の交渉に拡がって行くことが、一番懸念されます。

2.REDD+交渉、怒涛の勢いで進む!
SBIとは対照的に、現時点で怒涛の勢い(?)で進んでいるのが、SBSTAREDD+の交渉です。REDD+は、昨年のCOP18で資金問題のあおりをうけ失敗した交渉課程を回復させようと、各国の交渉官の意気込みが違います。実は、REDD+には、SBSTAだけで7つの議題が山積みとなっていました。現在までに、「森林モニタリングと測定、報告、検証(MRV)」、「セーフガード」、「森林減少の要因(ドライバー)」、「参照レベル」「炭素以外の便益」の議題が協議され、本日午後2時には、既にセーフガードとドライバーのSBSTA決議ドラフトが配布されました。本日夜7時からは、「森林モニタリングとMRV」を再度協議し、昨年COP18でもめた「MRV」の「V」の部分に特化したドラフティンググループが予定されています。昨年、某国がこのアジェンダで「検証(v)」の部分に強硬に反対したため、採択を逃したのですが、既に妥協案があるとの噂も。最後まで気は抜けませんが、2015年合意に向け、多くの森林を有する途上国がREDD+を何としてもアジェンダに入れ込みたい、という意気込みが感じられます。


【6月6日開催:REDD+SBSTA交渉の様子】

 他方、REDD+の「結果に基づく支払い」等、資金問題に関しては、途上国が実施に向けて最も重要視するところであり、今後の交渉の展開に注目が集まります。
 途上国の森林減少は、気候変動問題のみならず、生物多様性の保全や森林とともに生きる人々の生活に直結する問題。森林が与える様々な恵みは地球の基盤の一つとなっています。先進国、途上国が一丸となり、世界の森林減少問題に取り組む。2015年合意に向けて、この機会を逃せば、私たちの子供達の世代はより厳しい生活を強いられるでしょう。REDD+交渉の成功が、UNFCCCの交渉の一つのモデルとなる事を、願っています。


※1
ホットエア・・・
京都議定書で定められた温室効果ガスの削減目標に対し、経済活動の低迷などにより、二酸化炭素CO2)の排出量が大幅に減少していて、相当の余裕をもって目標が達成されることが見込まれる国々(旧ソ連や東欧諸国)の達成余剰分のこと。この余剰分の排出枠が先進国に「排出権取引」を通じて売却され、先進国の実質的な排出削減を阻害することが懸念されている。




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