【UNFCCC便り】:SBI、行方はどこに?

 会合2週間目、現地時間の火曜日に、先週よりずっとアジェンダが採択されず止まっていた「条約の実施に関する補助機関(SBI)」が開かれました。先日のブログでも報告したとおり、SBIでは、昨年のCOP18でロシアが意見を言おうとしていたのにも関わらず強硬に議長が採択してしまった事を理由に、「法的手続き」に関する新アジェンダについてロシアがこだわり続け、アジェンダを採択できずにいます。結果から報告すると、3時間をかけて話したにも関わらず、SBIのアジェンダを採択することができませんでした。
 ロシア、ベラルーシ、ウクライナの3国は、完全に会議場で孤立した状況にも関わらず、ポジションを変えませんでした。様々な途上国で構成されている「G77チャイナグループ」、「アフリカグループ」、「最貧国グループ」や、全ての先進国、ラテンアメリカグループが議題の採択に賛同しています。
 交渉はSBI議長からのアジェンダ採択のための妥協案として、「Solution Box」と名付けたもの(1週間以上水面下で協議したもので、ロシアの意向をぎりぎりまで反映したもの。このような事態が起こることすら、前代未聞)を、昨週からのプロセスを細かく説明した後、始まりました。その後、ロシアがばっさりと妥協案を否定。それに対し、途上国含む様々な国々が議長を支持するとの意を表明。
特に印象的だったのは、シンガポールの交渉官の発言です。UNFCCCのプロセスや議題を変更するという事自体が認められるべきでない、という多国間交渉の原則についいて、法的解釈も含め、素晴らしい発言をし、会場中から拍手を受けていました。
【シンガポールによる発言に開場中が拍手】
最後に、議長がさらに反対する3国に対し理解を促しましたが、指示を得られず。そこで、15分間の休憩となりました。

【SBIを中断し、対応策を練る議長と事務局】

【休憩時間中、ロシアに詰め寄るアンブレラ・グループ(注:ロシアも参加するグループ】

 会議再開後、フロアをとったのはロシア。30分以上にわたり、自分たちがなぜこの「法的手続き」のアジェンダにこだわるのかを、自らの立場から演説し、議長の提案に対しては何としても合意できないとの意を表明。その後、多くの国が反対意見を表明しましたが、3カ国の合意を得られず、終わりました。
【SBIのアジェンダを拒み続けたロシア】
 本日水曜日時点で、SBIの予定はアジェンダに含まれていません。これ以上議論していても無理だという理解が伝わってきます。今後は水面下での様々な交渉で、COP19までに無駄にした8日間以上の交渉日程を挽回するための策を練らなければなりません。SBIが開催されないと、「損失や被害(Loss and Damge)」や適応など、気候変動の影響に対応していくための緊急議題を話すこともできません。大変遺憾なことです。
 昔「ロシアより愛をこめて・・・」という007シリーズがありました。今回、ロシアが主張している「UNFCCCへの愛」の解釈は、世界中の他の誰も理解することのできない愛でした。色々な「愛」が交錯する国連交渉。世界を救うための「愛」が、今後この展開を打開していく事を祈ります。
 

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