気候変動がトラの生活を脅かす4つの理由

 


過去100年の間に、世界のトラの個体数は97%減少し、2017年時点で野生のトラは約3,900頭のみとなりました。これまで密猟や森林減少、そして土地開発などが急激なトラの個体数減少の原因となっていました。しかし現在では、気候変動がロシアの松林からインドネシアの熱帯雨林に生息する、残されたトラたちの新たな脅威となっています。

1.     海面上昇

インドとバングラデシュにある世界最大のマングローブ林に生息する、数百頭の絶滅危惧種であるベンガルトラの沿岸生息地が、海面上昇の影響によって縮小しているという研究結果があります。海水面が高くなると、ベンガルトラの生息地でもあるスンダルバンスと呼ばれる島々が侵食され、淡水に海水が流れ込んで、トラの飲用水源が汚染されてしまいます。トラは別の淡水源を見つけるためにさらに高地に移動しなければならず、そこへ暮らしているコミュニティと新たな対立を起こしています。

2.      森林減少

森林減少は、気候変動を加速させるとともに、スマトラトラのような絶滅寸前の動物を絶滅の危機に追い込みます。インドネシアの森林は、決して持続可能とは言えないパーム油のプランテーションに急速に取って代わられています。プランテーションのための森林破壊は、スマトラトラにとって大切な生息地を奪い、野生動物の違法取引に巻き込まれやすくさせる恐れがあります。インドネシアの森林を維持することは、トラを保護し、気候変動の影響に対処することにつながります。コンサベーション・インターナショナルは、インドネシアやブラジル、その他の主要なパーム油の生産国において、パーム油のサプライチェーンから森林減少をなくし、トラにとって重要な生息地を保護するための活動を行なっています。


©Conservation International/photo by Haroldo Castro

3.      気温の変化

気温の変化により、ロシアと中国のシベリアトラの生息地が変化しています。朝鮮半島の松林がモミやトウヒの木に変わり、松林で狩りをするお腹を空かせたトラの餌が少なくなっているのです。シベリアトラ(アムールトラ)の生息数は600頭を下回り、今後100年以内に世界最大のネコ科動物が絶滅する可能性があると言われています。

4.      自然災害

気候変動が加速するにつれて、シベリアなど、通常では火災が起こらなかった生態系で山火事が頻発するようになりました。山火事の時期が、より長く、暑く、そして乾燥することが当たり前になり、シベリアトラの生息地や食料調達を脅かしています。気候変動はまた、より激しい嵐や農作物に大被害をもたらす洪水を引き起こし、人々は生活のために家から遠く離れたトラの生息地まで移動することを余儀なくされます。スンダルバンスの島々では、トラが生息するマングローブまで移動してきた農民が、海産物やハチミツを採取する時などに、トラと衝突が起こす可能性が高まっています


気候変動がトラの生息地や食料源を脅かすと、この象徴的な動物が密猟や地域社会との対立にさらされやすくなります。多くの場合、トラの保護のために生息地である森林を守ることは、気候変動への対策にももなります。森林を維持することは、トラと地球のどちらも気候変動から守ることになるのです。


カバー写真: 
©Conservation International/photo by Haroldo Castro
記事翻訳:CIジャパンインターン 佐伯栞


この記事はコンサベーション・インターナショナル本部ブログ“4 ways climate change is making life harder for tigers" を日本向けに和訳・編集したものです。

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