菌類は、気候対策の新たな味方か?

© BARRENGOA MATEO.


地中の世界では、複雑な菌類ネットワークが植物と協力し合いながら大量の炭素を吸収しており、その量は世界に存在する化石燃料による年間排出量の3分の1以上に相当することが、新しい研究で明らかになりました。

これまで菌類は、炭素のモデリングや保全活動計画策定の際に盲点となっていました。しかし今回の研究は、植物が大気から吸収した炭素を、“菌根菌”として知られるある種の菌類に送る量を定量化した、初めての研究です。

コンサベーション・インターナショナルの関連団体、コンサベーション・南アフリカの科学者で、この研究の主筆者であるハイディ・ホーキンス(Heidi Hawkins)氏は、「これらの菌類が、温暖化作用のある炭素を大気中から土壌に留めている機能の可能性は非常に大きい」と話します。

菌根菌は、森林から草原、農地に至るまで、地球上のあらゆる大陸の土壌下で広大な地下ネットワークを形成しています。これらの菌根菌は、生きているものも、死んだもののその後も、土壌有機物の一部を形成し、土壌の炭素保持能力に不可欠な役割を果たしています。

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これらの菌類と植物は、4億年以上前から相互に有益な関係を築いてきました。菌類は植物の根に定着し、宿主をはるかに超えて、植物の成長に不可欠な栄養素を供給します。一方、植物は光合成の際に大気から吸収した二酸化炭素から作られる糖分でその恩返しをしています。

このプロセスにより、世界の植物は菌根菌に毎年少なくとも4ギガトン近くの炭素を送っています。これは米国と中国を合わせた年間排出量にほぼ匹敵する量です。

ホーキンスは、『カレント・バイオロジー(Current Biology)』誌に掲載された今回の発見によって、人びとが地下で起こっていることにもっと意識を向け、自然保護活動に拍車をかけられる可能性があると語ります。

「自然保全を考えるとき、菌類は森林の再生などに比べれば当然注目度は低いです。しかし、これらの菌類は、気候変動を抑制するための重要な役割を担う可能性があります。」

これらの発見は、大変心強い内容であるものの、ホーキンスは、菌類が炭素を貯蔵する能力については、まだ不明な点が多いと指摘しています。土壌中の菌類は、生きているものも死んでいるものも炭素です。しかし、動植物と同じように菌類も呼吸をするため、炭素は二酸化炭素として大気中に放出されます。

これらの研究で明らかになったのは、土壌が炭素隔離にいかに不可欠であるかということです。そして、土壌損失や特定の植物病害に対する防御など、菌根菌が土壌の健全性を維持するのに果たす役割の重要性です。

土壌の保全・再生活動は、ますます緊急性を増しています。国連は、作物や森林などが育つ地球表土の9割が2050年までに劣化する可能性があると警告しました。

「土地の劣化は、気候変動や生物多様性の損失に取り組む世界の能力を麻痺させてしまいます。」とホーキンスは言います。「土壌中の菌類ネットワークを失うことは、それらが蓄える炭素も失われることであり、我々が生活を依存する生態系を支えている重要な栄養源も失われることを意味します。」

こうした重要な菌類ネットワークを保護するためには、自然保護と再生、そして不耕起栽培や持続可能な放牧のような土壌をできるだけ攪乱しない方法による持続可能な農地管理にある、とホーキンス氏は話します。


投稿 :Mary Kate McCoy  ※原文はこちら
翻訳編集: CIジャパン

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