カーボンクレジットを活用する企業が気候変動対策を主導する

 

©︎Allan Michaud

カーボンクレジットを活用している企業は、そうでない企業と比べて自社のカーボンフットプリントに対してより積極的に取り組んでいることが新たな報告書で明らかになりました。 環境金融の非営利団体であるエコシステム・マーケットプレイス(Ecosystem Marketplace)が2023年10月に発表したこの報告書は、カーボンクレジットを含め、企業が事業活動においてどのように気候変動と向き合っているかについて、詳しくまとめています。

企業や個人は、カーボンクレジットを購入することで他の場所での排出を相殺し、二酸化炭素の排出量を削減することができます。たとえば、大気中の炭素を取り除き、貯蔵する機能を持つ森林を守るために必要な資金を、カーボンクレジットから調達することが可能になります。しかし一方で、批判の声も多くあります。カーボンクレジットは企業にとって環境汚染の免罪符になりかねないというものです。

この報告は、そうした考えを覆す内容となりました。資産総額が110兆米ドルに上る7,400社以上の企業のボランタリーカーボン市場における取引と気候変動に関する情報開示を分析したところ、カーボン市場に投資している企業は、前年比で2倍近くの炭素を削減している可能性が高いだけでなく、サプライチェーンやバリューチェーンにおける気候変動への対応についても、競合他社を上回っていることが明らかになりました。

気候変動対策と自然保護を同時に実現する方法としてカーボンクレジットを以前から支持してきた自然保護活動家の多くは、この報告を受けて大きな希望を感じています。

「気候変動の問題は時間との戦いに直面しており、世界の科学的見解は明らかです。カーボンクレジットは、企業が世界的な排出量を削減するためのもっとも直接的な方法であり、今回の報告書は、私たちがすでに認識していたこと、すなわちカーボンクレジットを活用する企業は、気候変動対策を率先して行なっていることを再確認するものです。カーボンクレジットを批判している人たちや、足踏みして遅れをとっている人たちは、よく考えてみるべきです」

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報告書の主な調査結果:

  • カーボンクレジットを購入する企業の約60%が、購入していない企業と比べて、前年比で炭素排出量が減少している。
  • カーボンクレジットを購入する企業は、購入していない企業と比べて、3倍以上の確率で科学的根拠に基づく気候変動目標を掲げている。
  • カーボンクレジットを購入する企業は、スコープ3(消費者による企業の商品やサービスの利用にともなう排出であり、削減がもっとも困難な排出)を含む排出量を開示している傾向が高い。
  • 企業の排出量のうち、カーボンクレジットが占める割合はごくわずかであり、多くの批評家に指摘されるような、カーボンフットプリント全体を「買い取る」手段とはなっていない。企業が購入するカーボンクレジットは、フットプリント全体の2%強に過ぎない。

2023年9月に発表された報告書によれば、今のままの取り組みでは、世界の気候目標の達成は厳しく、大きく遅れをとっています。カーボンクレジットがなければ、化石燃料を段階的に削減できるまで、気候変動を「安全な」基準値以下に抑えるチャンスはない、と専門家たちは話します。 コンサベーション・インターナショナルの気候専門家ブロンソン・グリスコム(Bronson Griscom)は次のように話しています。

「私たちは、これからも飛行機を利用するでしょう。電気飛行機がないこともわかっています。では、どうするのがいいでしょうか?それはたとえば、飛行機が排出する以上の炭素を除去するための生態系の回復に必要な費用を、飛行機を利用する人たちに負担してもらうということです」

この報告では、より高価で高品質なカーボンクレジットの需要が市場で高まっていることも強調されており、企業が気候変動への影響を確実に、そして最大化するために、より積極的に投資していく姿勢を表しています。 

2022年、ボランタリーカーボン市場の価値は20億米ドルに達し、2030年には1,000億米ドルにまで成長すると予想されています。

投稿 : Bruno Vander Velde  ※原文はこちら
翻訳編集: CIジャパン

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