寝たキングコングをついに起こした!?
モントリオール到着以降、予想外に暖かい日が続いてましたが、昨日木曜からまた寒さが厳しくなってきました。昨日の最高気温は氷点下をちょっと超えるくらい。今朝は起きると雪。でも、COP会場である国際会議場の中は暖房が効いてる上に、相変わらず熱気ある交渉が続いていて、まったく寒さを感じることがありません。
■2013年以降の削減コミットメントに関する交渉
今回の京都議定書の締約国会議(COP/MOP)では、京都議定書第3条9項(Art.3.9)の規定に則れば、第2約束期間(2013年~)以降の付属書I国(すなわち先進国および経済移行国)による温室効果ガス(GHG)の削減目標(コミットメント)に関する交渉が開始されることになっています。昨夜19時には、通称「3.9条」「将来コミットメント」または「ポスト2012」といわれるこの議題の第1回コンタクトグループ(CG)が開かれ、今回のCOP&COP/MOPでの最もホットな交渉議題の実質的な協議が始まりました。会場は、オブザーバーはもとより政府代表団にも立ち見や床に座り込む人が続出するなど、異様な熱気に包まれました。このCGに向けては、G77&中国(途上国グループ)、EU、そして日本がそれぞれ交渉のたたきとなる文書(’basis for discussion’)を出し、それに基づいて各国の意見表明が続きました。
総論としては、将来コミットメントの必要性、それに向けて今行動を起こす重要性については、反対はないようですが、やはり各論に入ってくるそうはいかず、途上国対先進国の対立に集約されます。すなわち、2013年以降も付属書I国のみがGHG削減の義務(つまり数値目標)を負うのか(=G77の主張)、それとも途上国の削減義務を負うべきなのか(=先進国の主張)。
ご存知のとおり、気候変動の原因とされるGHGの排出は、これまではそのほとんどを先進国が出してきたわけですが、今後は途上国からの排出が飛躍的に増加すると予想されています。これまでの排出の責任を先進国がちゃんと果たし、かつ途上国が十分な経済成長を果たしてからでなければ途上国は義務を負えないという論理は、ある意味フェアである一方で、「環境十全性(環境保護の観点を重視するという意味で使われる)」の観点からは、一刻も早く「すべての排出源」からの削減が求められるわけで、対立が深まるのも無理はないわけです。
昨夜のCGでは、第1回ということもあり、一通り各国の意思表示があったところで、そろそろ終わりかな、お腹減ったなと思ってたところ、G77から「G77が提出した文書を正式な『たたき台』とすべき(=”the” basis)」との意見が出ました。すると日本とEUは、「G77の文書とともに両者の文書もたたきにすべき(=”a” basis)」と反論。1時間半にわたって”the”か”a”かで、大紛糾することになりました。問題は、G77が「正式なたたき(“CRP”とカテゴライズされる)」として提出すべきところを、間違って単なる「意見表明文書(“Misc”)」として出してしまったこと、そして日本とEUは、そもそも事務局に正式提出しなかった、という手続き的なミスが発端だった模様。表面的には手続き上の不毛な議論なんですが、最初に正式な「たたき」になるかどうかが、その後の議論の方向性を決めかねないので、両者一歩も引かない状況になったわけです。
結局、「議長預かり」ということで、両者が渋々了解し(特にG77)、土曜日午後の第2回CGまでに議長が3つ(あるいはその後提出されるものも含めて)を合わせた編集文書を作成し、各国に提示することとなり、ようやくお開きに。将来コミットメントの交渉が予想どおり前途多難であることを印象付けました。ある交渉担当者によれば、「誰もが起こしたくなかった“寝たキングコング”をついに起こしてしまった」とのこと。どうなることやら。。。ちなみにこのCGの議長役という大役は、現在在日本カナダ大使館公使で、カナダの前主席交渉担当者だったDavid Drake氏が、はるばる呼び戻されて勤めておられます。Davidとは東京で何度も食事をご一緒させてもらってよく知っているので、個人的には大船に乗った気がしています。
☆「丸い帽子では悩みようがない」?
この日のCGでは、(席がいっぱいのため立ち見だった)タンザニア代表が意見表明の中で、同国のことわざを紹介しました。曰く『丸い帽子では悩みようがない』、すなわち「丸い形の帽子はすっぽり頭にはまるはずなので、どちらが前か後ろかと迷う必要はない」ということだそうです。3.9条は丸い帽子なんだから、こんなところで堂々巡りをしてどうする!という意見で、会場の共感を得ていました。
結局、ご飯を食べて宿に戻ったのは夜中。苦しい毎日が続きます。
【写真:仕事を終えて会議場の外へ出たら雪が。。。】
(By Yasu)
■2013年以降の削減コミットメントに関する交渉
今回の京都議定書の締約国会議(COP/MOP)では、京都議定書第3条9項(Art.3.9)の規定に則れば、第2約束期間(2013年~)以降の付属書I国(すなわち先進国および経済移行国)による温室効果ガス(GHG)の削減目標(コミットメント)に関する交渉が開始されることになっています。昨夜19時には、通称「3.9条」「将来コミットメント」または「ポスト2012」といわれるこの議題の第1回コンタクトグループ(CG)が開かれ、今回のCOP&COP/MOPでの最もホットな交渉議題の実質的な協議が始まりました。会場は、オブザーバーはもとより政府代表団にも立ち見や床に座り込む人が続出するなど、異様な熱気に包まれました。このCGに向けては、G77&中国(途上国グループ)、EU、そして日本がそれぞれ交渉のたたきとなる文書(’basis for discussion’)を出し、それに基づいて各国の意見表明が続きました。
総論としては、将来コミットメントの必要性、それに向けて今行動を起こす重要性については、反対はないようですが、やはり各論に入ってくるそうはいかず、途上国対先進国の対立に集約されます。すなわち、2013年以降も付属書I国のみがGHG削減の義務(つまり数値目標)を負うのか(=G77の主張)、それとも途上国の削減義務を負うべきなのか(=先進国の主張)。
ご存知のとおり、気候変動の原因とされるGHGの排出は、これまではそのほとんどを先進国が出してきたわけですが、今後は途上国からの排出が飛躍的に増加すると予想されています。これまでの排出の責任を先進国がちゃんと果たし、かつ途上国が十分な経済成長を果たしてからでなければ途上国は義務を負えないという論理は、ある意味フェアである一方で、「環境十全性(環境保護の観点を重視するという意味で使われる)」の観点からは、一刻も早く「すべての排出源」からの削減が求められるわけで、対立が深まるのも無理はないわけです。
昨夜のCGでは、第1回ということもあり、一通り各国の意思表示があったところで、そろそろ終わりかな、お腹減ったなと思ってたところ、G77から「G77が提出した文書を正式な『たたき台』とすべき(=”the” basis)」との意見が出ました。すると日本とEUは、「G77の文書とともに両者の文書もたたきにすべき(=”a” basis)」と反論。1時間半にわたって”the”か”a”かで、大紛糾することになりました。問題は、G77が「正式なたたき(“CRP”とカテゴライズされる)」として提出すべきところを、間違って単なる「意見表明文書(“Misc”)」として出してしまったこと、そして日本とEUは、そもそも事務局に正式提出しなかった、という手続き的なミスが発端だった模様。表面的には手続き上の不毛な議論なんですが、最初に正式な「たたき」になるかどうかが、その後の議論の方向性を決めかねないので、両者一歩も引かない状況になったわけです。
結局、「議長預かり」ということで、両者が渋々了解し(特にG77)、土曜日午後の第2回CGまでに議長が3つ(あるいはその後提出されるものも含めて)を合わせた編集文書を作成し、各国に提示することとなり、ようやくお開きに。将来コミットメントの交渉が予想どおり前途多難であることを印象付けました。ある交渉担当者によれば、「誰もが起こしたくなかった“寝たキングコング”をついに起こしてしまった」とのこと。どうなることやら。。。ちなみにこのCGの議長役という大役は、現在在日本カナダ大使館公使で、カナダの前主席交渉担当者だったDavid Drake氏が、はるばる呼び戻されて勤めておられます。Davidとは東京で何度も食事をご一緒させてもらってよく知っているので、個人的には大船に乗った気がしています。
☆「丸い帽子では悩みようがない」?
この日のCGでは、(席がいっぱいのため立ち見だった)タンザニア代表が意見表明の中で、同国のことわざを紹介しました。曰く『丸い帽子では悩みようがない』、すなわち「丸い形の帽子はすっぽり頭にはまるはずなので、どちらが前か後ろかと迷う必要はない」ということだそうです。3.9条は丸い帽子なんだから、こんなところで堂々巡りをしてどうする!という意見で、会場の共感を得ていました。
結局、ご飯を食べて宿に戻ったのは夜中。苦しい毎日が続きます。
【写真:仕事を終えて会議場の外へ出たら雪が。。。】
(By Yasu)
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