生物多様性と気候変動への回復力の向上は、哺乳類の復活にかかっている?


©Jonathan Irish

多くの大型哺乳類は 、いわゆる"生態系エンジニア "です。ゾウは広く歩き回り、劣化した森林を回復させる種をばら撒きます。お腹を空かせたカバは、餌を探すために水路に溝を作り、潟を広げ、魚の餌となる貴重な栄養分を堆積させます。また、バイソンの群れは、地面に窪みを作って水を溜め、新しい植物の種を蒔くことで、草原を健全に保つのに役立っています。 

現在、科学者たちは、動物たちが複雑な生命の網に寄与する、これまでにない方法を模索しています。それは、気候変動に対して耐性を持ち、温暖化を助長する炭素をより多く蓄えることができるような動物たちの生息地を作ることです。最近の研究によると、草食動物13種と肉食動物7種計20種の大型哺乳類を本来の生息地に戻すだけで、生物多様性を高め、気候を安定させることができると、ジャーナリストのジャネット・マリネリはYale360で報告しています。 


「過去20〜30年の研究の中で、バイソンのような大型哺乳類が” 生態系エンジニア”として、自然のプロセスを形成・維持し、大量の炭素を隔離する役目を持つという重要性が強調されてきました。しかし、そうした気候変動対策における大型哺乳類の重要性が明らかになってきた一方で、世界の大型草食動物や肉食動物は危惧されるレベルで減少を続けているのです。」 


地球は生物多様性の危機に直面しており、100万を超える種に絶滅のリスクが高まっています。大型肉食動物の3分の2近くは絶滅の危機に瀕しており、かつて地球の大地を支配していた大型哺乳類の群れが生息する地域は、ほとんど見られなくなってしまいました。 


数百万年の進化の過程で培われた野生動物とその生息地の絶妙なバランスが今、消滅の危機に瀕しています。物多様性の喪失によって弱体化した生態系は、気候変動に対してより脆弱です。さらに、気候変動はこれら生き物たちの生息地を劣化させ、種の存続の脅威をさらに高めます。 

 

この悪循環を断ち切り、地球の生命維持システムを取り返しのつかない状況へ陥らせないためには、人類が温室効果ガスの排出をなくすのと同時に、大気中の余分な炭素を取り除かなければなりません。 

イェール大学の生態学者オズワルド・シュミッツ氏によると、たとえ全ての温室効果ガスの排出を完全に止めて、エネルギーを自然エネルギーに切り替え、森林破壊をストップしたとしても、われわれは世界の気温上昇をティッピングポイントである1.5℃以下に抑えることはできないと指摘しています。「気候を安定させるためには、かなりの量のCO2を大気から取り出し、貯蔵する必要があるのです。」「動物たちがいれば、目標にもっと早く到達できるはずです。」 
 
シュミッツ氏とグローバル・リワイルディング・アライアンスのチームは、絶滅危惧種や絶滅危惧種の動物たちを再野生化し、生態系を回復、保護することで、世界中の炭素吸収量を1.5~3倍以上増やすことができると算出しています。 

 

コンサベーション・インターナショナルは、気候の崩壊を免れるために自然の果たす役割がいかに重要か、そして生態系の大規模な保護、再生、持続可能な管理を用いれば、今世紀末までに気温上昇を0. 3℃に抑えられると発表しました。さらに、世界の生態系保全を推進し、気温の上昇を目標値に抑えるために、農家から林業家、消費者に至るまで、「誰が」「どこで」「何を」するべきか決めるためのロードマップを作成し、公開しています。 


結局のところ、生物多様性の損失と気候変動はどちらも人間活動が原因で起こっているので、相互に関連しており、共に取り組まなければなりません。  

 

コンサベーション・インターナショナルのCEO、M.サンジャヤンは、「前例のない世界の生物多様性の危機は、地球上のすべての生命に影響を及ぼしている気候変動の片割れとして、ようやく理解・評価されつつあります」と話します。 


「もう一方の課題を解決することなしに、一方の課題を解決することはできないのです。」 


全文はこちら。 

 

※本ブログ記事は2022年8月10日 に投稿されたCI本部のブログ記事を和訳したものです。 
 

投稿 : ヴァネッサ・バウザ 

翻訳協力: 井上晃利 

編集: CIジャパン 

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