南米ペルー・アルトマヨ森林保護区を訪問して:その3
Yasuです。ペルー出張報告の最終回です。
今回訪れたAlto Mayoは、非常に豊かかつユニークな熱帯の森林生態系ですが、太平洋側での人口増化と農地の逼迫、そして前にも書いたパシフィック・ハイウェイの影響で、ここ10数年の間に急速に入植が進み、それに伴って森林の農地への転換が進んでしまっています。森林が保護区下される前に入植した人たちもいるので、国立公園内に人が住んでいるような状況にもなってしまっています(実は途上国では、よく見られる現実です。)
言うまでもなく、入植者の多くは貧困からの脱却を目指してこの地に来てる人が多いわけですが、特に90年代は、コカインの原料となるコカ栽培に関わる人が多かったのも、この地の問題を複雑にしてきた要因のひとつのようです。現在は政府の指導と規制でコカ栽培は減っているようですが、この地域は、近年の気候変動の影響か、2000m以上の標高でもコーヒー栽培が可能となってきていて、今度は森林のコーヒー農園への転換が急速に進んでいるのです。また入植者増加の傾向が続くことを見越したいわゆる「地上げ(Land trafficking, land rush, land grabなど言われる)」も横行するなど森林破壊の種はつきません。
↓農地への転換によってすっかり破壊された熱帯林。後ろには、まだ原生林が残っているけれど、この地での人口増加率を考えれば、保全の取り組みは急務だ↓
そんな中で、私たちの同僚であるCI Peruチームが、ペルー政府、国立公園事務所、現地の農協やコミュニティと取り組んでいるのが、AltoMayo森林保護区プログラムです。プロジェクトでなく、プログラムと呼ぶのは、非常に包括的な内容になっているからです。
ざくっと内容を紹介すると、、、森林生態系の調査、保護区管理計画の策定支援、管理事務所の建設とパークレンジャーの育成と雇用、コミュニティを対象とした環境教育・啓発、コミュニティへの高効率の調理用ストーブの提供(薪炭目的の森林伐採圧力の緩和)、日陰栽培を柱としたサステナブルなコーヒー農法技術や有機肥料、マイクロクレジット(小規模融資)の提供、農作物の市場アクセスとマーケティング支援、ソーシャル・フォレストリー(社会林業)やアグロフォレストリーの手法による森林再生(再植林)など、非常に多岐に渡っています。
このプログラムの肝は、やはり地元コミュニティの参画で、彼らの生活や生計手段を森林生態系への圧力を緩和しつつ、彼らの収入を上げながら持続的なものとするところにあります。ストーブの効率化や日陰栽培コーヒー、再植林は、森林伐採圧力を緩和し、サステナブル・コーヒーへの転換やマーケティング支援は、産品の付加価値化や市場アクセスの改善による生計の向上と持続化に貢献するわけです。急峻な斜面や谷間の村々で根気強くこれらの事業に取り組むCIペルーのスタッフの努力には本当に脱帽です。(ちなみに、CIのコーヒーを通じた保全プログラムについての詳細については、こちらをご参照ください → http://www.conservation.or.jp/coffee/ )
↓プログラム参加農家に提供されるコーヒーの苗。森林保全型の農法に取り組んでもらうことが、苗を配る条件となる↓
↓農園は、結構急な斜面で、農作業は大変です↓
↓放棄された土地を、木を伐らずにコーヒー農園に転用。
↓現地でサステナブル・コーヒーの指導をするCIペルースタッフのBraulio。彼の献身は、conservation heroと呼ばれるに値します!↓
↓効率が改善されたストーブの提供を受けたプログラム参加家庭↓
↓Alto Mayo森林保護区の管理事務所にて、事務所長からブリーフィングを受ける。保護区自体は国立だが、事務所もCIのプログラムの支援で建てられ、またここのスタッフもCIのプログラムを通じて雇用されている。このように政府と密接に連携し役割分担しているのも、このプログラムの強みのひとつ↓
今回、プログラムに参加するいくつかのコーヒー農家を訪問させてもらったんですが、面白かったのは、数年前に日本から持ち込まれた有機肥料を微生物で発酵させた「Bokashi (ぼかし)」技術が活用されていること。因みに、ぼかし技術だけでなく、アンデスの地形により、どうしても小規模な農業にならざるを得ないこの地域では、やはり (欧米豪などと比べて) 小規模な農家が多い日本の農業(技術だけでなく、農政なども)への関心が非常に高いそうです。
↓これがプログラム参加農家に配られたbokashi。施肥の仕方や、ぼかしの増やし方など、まだまだ試行錯誤だそうだ↓
↓日本の里山田園風景とちょっと似てる?↓
お隣のコーヒー大国であるブラジルやコロンビアと比べるとまだまだ発展途上のペルーのコーヒーですが(友人でもあるコーヒーハンターとして有名なホセ川島さんhttp://www.coffeehunters.co.jp/top.html に現地からフェースブックのやり取りで教えてもらったところでは、ペルーのコーヒーをより品質が高くサステナブル(ホセ流に言えば「サステナボー」なものとするには、コーヒー生産者の意識改革がまだまだ、とのことです)、生物多様性および生態系サービスの保全、コミュニティの生計と生活の向上、ペルーの産業の強化、さらには日本とペルーのさらなる交流にも貢献するこのプログラム、CIジャパンからも是非支援していきたいと思います。<ペルー出張報告おわり>
↓村には、多くの子ども達が元気に遊んでます。でも人口増加は、今後の大きな課題でもあるんです↓
↓森の働きもの↓
↓このアルマジロ(!)の子どもは、数日前にこの女の子が森の中から捕まえてきたそうです。大きくなったら食べるそうです。。。↓
↓個人的には、旅先でのわんちゃん達との出会いも大きな楽しみです!↓